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ギャラリーに中指 土下座謝罪と出場停止を巡る顛末/キム・ビオ インタビュー

2019/12/26 17:26


2019年秋、プロゴルフを取り巻く衝撃的な映像が世界で拡散された。9月の韓国男子ゴルフツアーで優勝したキム・ビオ(金飛鳥)が、ラウンド中にギャラリーに向けて中指を立てるジェスチャーを見せ、処分を受けた。禁止されているスマートフォンでの写真撮影のシャッター音が、スイング中に響いたことに怒りを抑えきれず、のちに韓国メディアの前で土下座して謝罪する騒動に。以降、彼の処分を巡って韓・米・そして日本ツアーも巻き込む事態に発展した。

■悪夢の16番ホール

耳に響く木枯らしの音。12月初旬、キムは日本にいた。茨城・セントラルゴルフクラブで行われた、来季の日本ツアー出場権を巡る最終予選会(QT)に出場。例年通り賞金女王・賞金王争いにゴルフ界が沸いたこの秋、彼は人知れず2度来日し、2020年の職場確保に懸命になっていた。結果は39位。レギュラーツアーの出場権こそ手にできなかったが、下部AbemaTVツアー参戦が可能だ。2008年には日韓の「アマチュア選手権」を制した実力者。それでも、つかんだ今の環境に「本当に感謝しています」と話す理由が、彼にはある。

「つらくなかったと言えばうそになります。でもそれはすべて、自分が起こした行動によるものです。言い訳はできません」。問題が起こったのは9月、「DGB金融グループ・ボルヴィック大邱慶北オープン」でのこと。最終日に優勝争いを演じていたキムは、終盤16番で1Wショットを打つなり、右手の中指をギャラリーに向けて突き立てた。スイング中、スマホによる写真撮影のシャッター音が響いたことに激高。テレビ中継で放送された映像は一瞬にして国内外に届き、周囲からはプロアスリートとしてあるまじき行為に批判が殺到。その後、韓国プロゴルフ協会(KPGA)を通じて謝罪会見を開き、カメラの前で涙ながらに土下座をした。

■「一生に一回」のチャンスとプロアスリートのキャリア

29歳。韓国、そして米国でも積んできたプロとしての輝かしいキャリアは一変した。KPGAは当初、3年間の出場停止処分を科した。その後、他選手や関係者の嘆願により1年に縮小(加えて、120時間の慈善活動)されたが、気持ちを立て直すのは容易ではなかった。

「僕はこれからゴルフを続けてもいいのか、と考えました。(処分が出る前に)事件があった次の大会に行って、謝罪しようと思ったんです。でもソウル駅で足が止まってしまいました。そんなはずはないのに、誰もが僕を見ているような感覚、恐怖心が湧いてきました。これではとても試合に向かうことはできないと思って自宅に引き返したんです」

当時、韓国のインターネット上は正義感に満ちたキムへの罵詈雑言で溢れた。普段の男子ゴルフの数百倍とも言える一般ユーザーからのコメントが書き込まれたという。

ただし、のちに多くの選手関係者の意見で処分軽減に至ったのは、キムに情状酌量の余地があったからでもある。事件発生時の状況を紐解くと、輪郭が見えてくる。「(大邱は)地域的にもギャラリーの方の盛り上がり方がすごいところなんです。そのおかげで、選手たちもプレーを進めるごとに気持ちが高まっていく。一方では1番ホールから終始、ファンにカメラ撮影をやめてもらうよう、キャディや選手自身、ボランティアの方もずっとお願いするような状況でした」

問題のシーンまでに、アドレスを解くことは1度や2度ではなかった。「プロゴルファーにとって、僕にとってはそれぞれのショットが、一生に一回のものです。ただ、ギャラリーの皆さんにとっても、ゴルフ観戦は一年に一回、一生に一回の機会だったかもしれない。撮影のチャンスはこれからもうないかもしれない、ということが今となっては理解できます。お互いの大事な部分で、ぶつかってしまったことを残念に思うし、申し訳なく思います」。試合中の写真撮影を巡るトラブルはなにも韓国だけでのことではない。日本の男女ツアーにおいても、人気が過熱し、来場者が増えるたびに一部のマナー違反が騒動の引き金になる。

■韓国ツアーの処分と 他ツアーの対応

前述の通りキムは2020年、母国ツアーに出場できない。一方、他国のツアーはそれぞれ独自の処分を下した。米国男子ツアーからは年明け1月中旬までの出場停止処分を科されたが、そもそもシードなどの安定的な出場権を彼は有していなかった。処分期間が明けてからは、下部に属するコーンフェリーツアー、PGAツアーチャイナ等の予選会にも参加できる。「手を差し伸べてくれたケビン・ナ選手との連絡を通じて、ツアーからの連絡を待ちました。KPGAの決定を待ってから、処分が決まりました」。また、アジアンツアーも年明けに行われる2020年シーズンの予選会受験を認め、キムは参加する考えを示した。

そして日本ツアーは11月、JGTOの懲戒・制裁委員会を経て「出場資格を有した大会における1試合の出場停止」という処分を下した。3次、最終予選会の受験を許可し、消化は2020年にレギュラーまたは下部AbemaTVツアーにおける出場1試合目が対象となる。諸外国のツアーと同様、韓国ツアーよりも“軽い”処分といえる。

処分決定の直前、キムは都内のオフィスを訪れ、JGTOの幹部との面談に臨んだ。日本ツアーの規定では海外で出場停止や永久追放処分を受けた選手については、それを前提にして同様の処分を科すというものがあった。ただし、“罰の大きさ”に関する記述はなく、独自の判断が可能。キムと相対したJGTO上田昌孝専務理事は「自分が起こした事件に対してどういう態度でいるかを考えて処分しなくてはいけなかった。KPGAから文書でレポートをいただいたが、本人に会わずにいるのはフェアではない。考えを聞いて、手続きを踏みました。彼は『悪いことをしたのは自分。もう2度としない』と宣言してくれた」という。

「包み隠さず、質問に誠意をもって答えました。そこでQT受験のチャンスを下さった。日本ツアーの選手たちも力を貸してくれたと聞きました。ゴルフがこれからできるかどうかという悩みを抱えていたなかでチャンスを頂けたこと、プレーすることを許してもらったことに本当に感謝の気持ちしかありません」

「あのとき…僕は爆発してしまった。本当に申し訳ない。ただ、プロゴルファーとして『感情をコントロールしなくてはならない』という面では教訓になりました。今回、日本でのラウンド中もその点で成長できていると思えるところがありました。これからは後輩たちにも正しい姿勢を見せなくてはいけません」

一瞬の感情を抑えきれなかったキムは、観る人あってのプロアスリートのひとりとして、越えてはならない一線をまたいでしまった。一方、場内での一部のマナー違反に対する改善の糸口は見つからず、他選手の身に同じような事態が及ぶ可能性がある状況は変わらない。キムはそれも内包して前を向く。

「もうすぐ一人目の子どもが…、女の子が生まれるんです」

新しい家族のためにも、同じ過ちを繰り返すわけにはいかないのだ。(編集部・桂川洋一)

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