憧れの田中秀道から一言 近藤共弘が取り戻したキレ
田中秀道 米国から日本、そして…
ジャパンゴルフツアー選手会「副会長」としての決意
ジャパンゴルフツアー選手会は今年、ツアー人気回復への足固めとして、選手会長をサポートする副会長を昨年までの3人から9人に増員。田中はその一人に任命され、自身の戦いに加えてツアー全体を思慮しながらのシーズンとなる。
「5年間アメリカに居ても、インターネットとか、後輩の富田(雅哉)や河井(博大)に話は聞いて日本ツアーの現状は把握していました。元気がないということは切ないな、と感じていましたね。魅力があって、個性の強い選手もたくさんいるのに。でも、これは選手全員がしっかりと受け止めなくてはならない問題。副会長の視点から見ると、選手たちに危機感が足りないような、そんな気がするんです」
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「36歳でもうベテランですしね。挨拶をしてくる若手も多いでしょう。今後は、僕の経験を伝えていく立場にならなくては、とも思っています。アメリカの事を聞かれれば話していきたいと思いますし、自分のゴルフに専念するだけではいけないとも思う。若手を後押しできる存在になれればいいと思いますね」
「ファンサービスを、“サービス”という次元にならないように、当たり前のようにやっていきたい。サインをすることも当然のことだし、ファンに “サービス”をしてあげるのではないということ。1000人しかいないギャラリーを急に8000人に増やすことは無理な話です。1000人を1001人にしなくては、8000人にはならないんです。ファンの方1人1人を大事にしないと。プロデビューをした時から、この気持ちは変わっていませんね」
ファンの期待に応えるための、自身の決意
ファンの期待にプレーで応えたいが、それができる状態にはないというもどかしさ。その中で国内ツアー復帰を迎えるにあたり、最近ある言葉が頭に浮かぶという。
「PGA参戦中に言われたジャンボさん(尾崎将司)の“期待をさせた分だけ責任を取れ”という言葉。ファンは僕の結果を見ているのではない、僕のプレーを見ているんだ、と。成績が悪くても、気の抜けたプレーだけはするんじゃないぞ、ということですね。今、その言葉が特にハッキリと頭に浮かんでくるんですよ」
「フェアウェイに立って、ピンを狙いバーディを奪う姿をファンの皆さんが待っているのだとすれば、今はそれとはかけ離れた状態にあるのかもしれません。まわりの皆さんが期待してくれていることは嬉しいことですが・・・。“男子ツアーを盛り上げて”という声もすごく多いですしね。でも、昨年の「ダンロップフェニック」でもそうだったように、林の中からでも一生懸命パーセーブを狙う、それも魅せるゴルフの1つだと思うんです。例え林からでも、一打を縮めるために懸命にプレーする。そんな“秀道的な”パフォーマンスを見せていきたい。それが僕の責任の取り方だと思うんです」
「林に打ち込んだら“どうした、田中”と思われるでしょうけど、そこから“よくパーであがったな”、とか“また見に来たよ”という人が1人、2人と増えてもらえば、それこそ良いんじゃないかな。カッコイイ姿は見せられないかもしれないけど、カッコ悪い自分をカッコつけていくために、一生懸命プレーします。それにつきますね」
そして、再び世界最高峰の舞台へ・・・
「泥まみれでも一生懸命やるという目標の先に、大、大、大目標としてアメリカに戻りたいという気持ちはあります。経験したことによって分かったことも沢山ありますし、3年後くらいにチャレンジできれば、と考えています。不可能に近いかもしれないけれど、向こうでやり残したことは沢山あるんでね。“5 年間挑戦していた”ではなくて、この5年間を次に活かさなくてはならない。それには、アメリカに戻るしかないんです。それで初めて、5年間の経験が活きると思うんです」
田中秀道が紡ぎ続けたPGAツアーのストーリーは、しばらくの間途切れることになる。舞台を日本に移し、PGAツアーと同じ、もしかしたらそれ以上の苦闘を強いられるかもしれない。しかし数年後、戦いの舞台を日本ツアーから再びPGAツアーへ移し、今度こそ田中が背負い続けるストーリーが完結することを期待したい。