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「ぶれずに自分のゴルフを」小平智の情報不足はハンデじゃない

◇米国男子◇フォートワース招待 最終日(27日)◇コロニアルCC(テキサス州)◇7209yd(パー70)

コロニアルCCの難所は3番から続く3ホール。ドライビングレンジの周りを囲むように作られていることから、Horrible Horseshoe、“恐怖の蹄鉄(ていてつ/馬のひづめを守る器具)”という愛称を持つ。

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■ 知らなかった「恐怖の蹄鉄」

オーガスタナショナルGCの“アーメンコーナー”をはじめ、PGAナショナルの“ベアトラップ”、クエイルホロークラブの“グリーンマイル”といった具合に、米国のコースには愛称を持つ連続ホールがあり、恐怖の蹄鉄もそのひとつ。左ドッグレッグの3番(パー4/483yd)を抜けた後、4番(パー3/247yd)と5番(パー4/481yd)が控える。3ホール合計の平均ストロークは対パーで昨年「+0.606」。今年も「+0.438」という難度だった。

ただし、大会に初出場した小平智がこのニックネームを知ったのは最終日のプレーを終えてからだった。結果は4ラウンド合計で2バーディ、2ボギー。「±0」と無難に切り抜けた。

2013年の「全英オープン」でPGAツアーに初挑戦してから、小平はキャリアで15試合目の「RBCヘリテージ」で優勝。今週がまだ18試合目だった。突然、主戦場になった米国ではまだ知らないことの方が多い。大会の歴史も、コースも。生活のための宿舎やレストランも勉強中。ただ、その情報不足が不利かというと、必ずしもそうではない。

■ 米選手と異なる小平の練習ラウンド

ゴルフはコースを知れば知るほど、恐怖心が生まれてプレーに悪影響を及ぼすことがある。PGAツアーの選手の多くは、試合前のラウンドでとにかくグリーン上とその周辺のチェックを繰り返す。ショートゲーム自体の練習というよりは、「ココは寄る」、「ココは寄らない」場所を把握し、試合でグリーンを狙うショットに役立てるための確認作業。キャディと一緒に試合のピンポジションを想定して、練習用に切られたカップからはあさっての方向をめがけてボールを転がす。

そういった意味で、現在の小平の練習ラウンドは異質でもある。毎日、試合前のピンに向かって懸命にスコアメークしながら状態を整える。日本で培ってきた練習ペースを崩さず、米国に来たからといってクラブをすぐにいじるわけでもない。人から聞く情報よりも、ティグラウンドに立った時のインスピレーションを大事にして、自分で攻め方を考える。

■ シードで得た「焦らない」権利

小平は「RBCヘリテージ」で勝つ前から、初出場した夢の「マスターズ」を戦う上でも「別物だと思えば別物だけど、僕は日本と変わらない感覚でやっていた」と、先入観を排除して臨んできた。目の前の敵を過大評価しない。ツアーメンバーに昇格しようが、妙に背筋が伸びるわけでも、浮つくわけでもない。もちろん今の立場もそうさせる。どれだけ好結果が出なくても、最低でも2020年夏までのシードがある。「知らない」を恐れず、焦ることなく実体験を積み重ねられる。優勝で手に入れたのは、それが許される権利だ。

「ここに来るときに決めたのが、ぶれずに自分のゴルフをすること。自分のゴルフを変えないことだった」と小平は言う。事実、その姿勢で小平は勝った。だから、いきなり歯車がかみ合った時、そのチャンスがまたすぐにやってくる可能性は否定できない。(テキサス州フォートワース/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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