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腰痛に苦しみ葛藤した石川遼の米ツアー5年間

2017/10/04 15:45

石川遼の米ツアー挑戦は5年で途絶えた (Jonathan Ferrey/Getty Images)

◇米国男子下部・入れ替え戦最終戦◇ウェブドットコムツアー選手権◇アトランティックビーチCC(フロリダ州)◇6849yd(パー71)

全4試合の入れ替え戦で出場権確保に必要な賞金ランク25位に届かず、石川遼の米ツアー挑戦は5年で途絶えることになった。「あくまで勝つために」と目標を掲げて挑んだ夢の舞台は、ケガに苦しみ、理想と現実に葛藤し続けた日々でもあった。

今年の真夏のことだ。熱帯地域・アラバマ州のオペライカは気温35度に達していた。照り付ける日差しがジリジリと肌を焼き、ロープ脇で見ているだけの記者は、虫の鳴き声が耳障りに聞こえるほど堪えた。コース上では「バーバゾル選手権」を翌日に控えた石川が、滴り落ちる汗を気にせず黙々とラウンドしていた。

「暑いの、嫌いじゃないんで」。石川は途中でカート道を歩きながら、そう記者に話すと、「寒いほうが苦手で」と続け、「怖さがあるから」とポツリつぶやいた。とりとめのない雑談でのやりとり。その一言は、周囲の猛暑を一瞬忘れさせるほどリアルで重かった。

米ツアーに挑戦した石川の5年間は、ケガとの戦いの日々だった。発症したのは、まだ国内ツアーを主戦場としていた2012年の7月。試合を翌日に控え、突然、慢性的な腰痛が悪化し、腰に激痛が走ったのだという。スポット参戦を経て、2013年の米ツアー出場権を獲得したのはそんな時期だった。

周囲からも、自分の中にも、どれだけ通用するのか?という期待が高まる中で、取り組んだテーマは、患部に負担のないスイング改造。状態は決して好転していなかったが、「開幕戦から出たいという気持ちがあった。トレーニングをしながら試合に出る」と、休養らしい休養も取らずに米国へと渡り、石川の米ツアー挑戦記は始まった。

ケガにより長期離脱を強いられるなど苦難の連続だった (Michael Cohen/Getty Images)

しかし最高峰の舞台は、長時間の練習も許されない体で、新スイングの完成を目指すツアールーキーが通用するほど甘くない。誰よりも本人がそれを分かっているからこそ、ゴルフの内容に手ごたえを感じるたび、いつしかアクセルを踏み込みすぎてしまう――。一進一退を繰り返し、腰が再び悲鳴をあげたのは昨年2月。ついに腰椎の故障で5カ月以上の長期離脱を余儀なくされる事態へと至った。

プロになって最長の戦線離脱を経て、スイングに修正を加えて挑んだ今シーズンは、ショット不振が顕著だった。シーズン途中から「プロのショットとは思えない」と自嘲するミスヒットを連発。「原点回帰」と語って1Wを握っては左右に散らした。ケガを言い訳にはしなかったが、「腰をケガして体の動き方が変わった部分はある。自分の調子も良くない中で、球筋を求めてスイングを変えてしまったのも原因」と、頭と体と心の整理には引き続き苦しんだ。ランキングや成績という逃れられない数値が目の前に示される日々で、石川は技術だけでなく、“本当の意味での原点”を見定めようともがいているように見えた。

米ツアーのシードを失ったこの日、石川遼は5年間の挑戦についてこう語った。「思うようにできなくて1年目から苦しかった。自分は過信でここまでやってきた。自分はできるんだって思ってきた。でもアメリカでは優勝できるって思えたことがなかった。本当は(自分の状態にあわせ)目標を下方修正できれば良かったのかもしれない」。振り返るとそこにあるのは、やはり葛藤し続けた日々だった。

これまでの主戦場を失い、今後の舞台はこれから決めることになる。石川は「自分に厳しい条件でやっていきたい。どこでやっても自分を磨き続けないといけない」と誓った。そして、次に米挑戦するときは万全な体調で、と問われると「間違いないです」と語気を強めた。「それは間違いないですね」。そう繰り返してうなずいた。

「体重もケガのときから4キロ増えて72キロになって筋肉で増やせた。(腰も)見違えるほどになった。だから『一区切り』と思われるけど、自分はやるべきことを続けていく」

ケガとの戦いはアスリートにつきもの。厳密に言うなら、いつだって「万全な体調」は、「その時点での万全な体調」でしかない。きっと、まだまだもがき続けるのだろう。「あくまで勝つために」。その覚悟は石川遼の中で今もぶれていない。(フロリダ州ジャクソンビル/林洋平)

林洋平(はやしようへい)
1991年、横浜市生まれ、A型。大学卒業後の2015年にGDO入社。チーム内では最年少。トーナメント取材に行くが、自身のプレーは勉強中。当面の目標はドライバーをスライスさせないこと。大のビール党で、出張先の名物で晩酌するのが、ささやかな楽しみ。

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