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世界戦略の真相は?米ツアーのトップが描く“30年後”

この人にぜひ聞いてみたい、という質問があった。相手は今年限りで勇退する意思を固めている米PGAツアーのコミッショナー、ティム・フィンチェム氏。世界のゴルフ界を近年牽引してきた一人に間違いなく数え上げられる人物だ。

同ツアーの東京支社設立記者発表の後、時間は限られていたが個別にインタビューする機会を得た。軽いウォームアップを兼ねた質問を数問。その後に切り出した。

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「30年後のゴルフ界は、どうなっていると思いますか?」。フィンチェム氏は「グッド・クエスチョン(良い質問だ)」と言って、柔和な笑みを浮かべた――。

フィンチェム氏は1994年6月、前任のディーン・ビーマン氏を引き継いでコミッショナーに就任。当時5640万ドル(約58.6億円)だった年間賞金総額を、直近の2015-16年シーズンには約6倍の3億2730万ドル(約340.3億円)まで引き上げた。

その間、プレジデンツカップの立ち上げや、フェデックスカップの導入、さらにラテンアメリカ、カナダ、中国に下部ツアーを発足させた。112年ぶりとなったゴルフ競技のオリンピック復帰にも尽力するなど、ゴルフ界にあってその功績は輝かしい。

ウォームアップの質問では、米国で他のプロスポーツ(NFL、NBA、MLB、NHLなど)と比較した米PGAツアーの位置づけについても聞いてみた。野球やバスケットボール、アメリカンフットボールほどファンが多いとはいえない中で、何を強みと考えているのだろうか? フィンチェム氏の答えのキーワードは“グローバル”だった。

「世界のどこでもプレーされるグローバルなスポーツであり、世界的に拡大していること。それに、選手たちのイメージが非常に良く、若者のロールモデルとされていること。これらのことは、マーケットにおいてとても有利に働いている」。グローバルであることが、国際オリンピック委員会(IOC)がゴルフをリオデジャネイロ五輪から復活させた大きな理由の1つだろう、とも付け加えた。

「ゴルフが拡大している」という認識を日本で感じることは少ない。だが、フィンチェムは「拡大している」と繰り返した。「特に南米やアジア、中央ヨーロッパなど。それに米国内でも若者の間で関心がとても高くなってきている。だから、もし(それらの地域で)高いレベルの競技を開催できれば、さらに成長は続くだろう」と、積極的な海外展開を進める米PGAツアーの戦略を裏付ける言葉を口にした。

では30年後。その流れはいったいどこに達しているのか?

「30年後にゴルフは、サッカー(FIFA)やテニス(ITF)のように、世界的な組織がより中心的役割を担っているだろう。その結果、今のように米国に一極集中するのではなく、世界中でよりバランスが取れた形で大会が開催されているはずだ。それによって、全世界でゴルフを成長させようという前向きなエネルギーが生まれ、徐々に全体に良い影響を与えているはずだ」

いわゆる世界ツアー構想。30年というスパンを考えると、米PGAツアーを発展させてきたフィンチェムの描く構想には現実味も感じられる。国内で完結するプロツアーのある日本では、米PGAツアーの東京支社設立というニュースに警戒感も見え隠れするが、2つの話は繋がっている。大切なのはゴルフ界全体に目を向けたときに、失うものと得るもののどちらが大きいか?ということだろう。

「30年後には自分は99歳になっている。多分、ゴルフは週に1回くらいしかプレーしていないだろうね(笑)」。白寿を迎えたフィンチェム翁の目に映っているのは、果たして想像通りの世界だろうか?(編集部/今岡涼太)

今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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