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3回戦敗退のガルシア、“奇妙な”コンシード

アリゾナ州のダブマウンテンGCで開催中の「WGCアクセンチュアマッチプレー選手権」。3回戦が行われた大会3日目、セルヒオ・ガルシア(スペイン)とリッキー・ファウラーのマッチで奇妙な一幕があった。

その場を目にした人々がみな、ポカンと口を開けたシーンは7番パー4だった。2ダウンと劣勢で同ホールを迎えたファウラーは第1打を左サイドに曲げ、セカンドでフェアウェイにレイアップ。しかし3打目も奥のピンに寄せきれず、5メートル強のパーパットを残していた。

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しかし、グリーン上で膝を曲げてラインを読んでいた時、ガルシアが突然「引き分けにしないか?」と、コンシード(いわゆるOK)を申し入れたのである。

ガルシア自身が控えていたのは2メートル弱のパーパット。一瞬、戸惑う表情を見せたファウラーだったが、このミドルパットを打つことなくパーセーブできるのだから、受け入れないわけがない。ガルシアのパーも認め、次のホールへと向かった。

一般的に考えると、この状況でファウラーがボギーを叩く可能性は高く、ガルシアは3アップにリードを拡げる願ってもないチャンスだった(記録によると、ファウラーは今年に入って前週までの試合で1度も15フィート以上のパットが入っていなかった)はずだ。それゆえファウラーも「彼が僕に何を言おうとしたのか、すぐには分からなかった。彼は有利な状況だったからね。僕の方が倍の距離を残していたんだから」と驚くほかなかった。

ラウンド後のガルシアによれば、この“プレー”は前のホールの出来事によって生まれたという。

「僕は6番でドロップに時間がかかってしまったことに罪の意識があった」。直前のホールのパー3、ガルシアがグリーン右ラフから第2打を放とうとした際、ボールの周辺をハチが飛び回っていたため、競技委員を呼び、ニアレストポイントにドロップをしていた。

「もし自分が彼の立場だったら、バーディパットを打つ前に待たされて、すごく不愉快に感じたと思う(実際にファウラーは3メートル弱を外した)。だから何かしなくちゃと思っていた。自分が納得するための何かをね。7番の引き分けは、そのチャンスだった」

続くホールに向かう際、ガルシアはファウラーに「さっきは時間をかけちゃったから」と告げていたという。そして8番(パー5)では即座にバーディを取り返し3アップとした。

ところがその後、形勢は一気に傾いた。ファウラーが9番で4メートルのバーディパットを沈めたのをきっかけに、猛チャージを開始。1ダウンで迎えた16番でも4メートル強を決めてオールスクエアに戻し、最終18番をバーディとして土壇場の逆転で準々決勝進出を決めた。

結果的には逆転負けとなったこと。そして何かと“お騒がせ”のガルシアの行動だっただけに、現地のメディアも意図を読み切れないミステリーとして、最初はこの話題を取り扱った。取材に答えたガルシアの弁は「僕らは紳士的であるべきだと思う。ゴルフをする上でそれは重要なことだ」だった。

ガルシアとファウラーの人気者2人は、米ツアーでたびたび予選ラウンドを同組でプレーした経験があり、ファウラーは「いつも僕たちは一緒に楽しくプレーしていたから」と背景を説明した。「罪の意識があって、それを胸の中から取り去ることができたら、間違いなく気分は良くなると思う。彼がどうしてそうしたか、僕には分かる」。後々のプレーを良い精神状態で戦うための決断だったと、相手を慮った。

米ツアーでは年に1度のマッチプレー。だからこそ生まれた、珍しいシーンには違いなかった。(アリゾナ州マラナ/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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