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記者は見た! タイガー×松山の初同組ドキュメント

松山英樹は今日、アンダーパーで回るか、オーバーパーか」。初日のラウンドが始まる前、会場のモニターに流れていたゴルフチャンネルでは小さくもそんな話題が挙がっていた。全米オープン10位タイ、全英オープン6位タイ。快進撃を続ける21歳の存在は、日を追うごとに米ツアーにも浸透を重ねている。練習を終えればサイン攻め。きっとネットオークションにでも出品するつもりだろう。自前で用意したプリント写真の束を手にした屈強な見かけの男たちさえ、松山がペンを走らせるチャンスを狙っている。

そんな中で迎えたタイガー・ウッズとの初の同組ラウンド。日系企業がメインスポンサーの「WGCブリヂストンインビテーショナル」で、日本人選手がトッププレーヤーとラウンドするのは珍しくないが、世界ナンバーワンのウッズとのペアリングはやはり異例(ちなみに大会ディレクターによれば、ルールオフィシャルによる決定とのこと)。だがそれも、ここまでの確固たる結果が後押しとなったことは疑いようがない。

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初日、2人はまだ涼しげな午前8時前、ほぼ同じ時刻に練習場に現れた。

ファーストコンタクトはそれから間もなくのこと。先にパッティンググリーンで準備を開始したタイガーに、松山は背後から歩み寄り、笑顔であいさつ。握手を交わした。見事なまでに調和のとれた黒いウェアで全身を固めた王者に対し、ルーキーは純白のキャップ、シャツに黒いパンツ。まるで学生アマチュア(学生プロだけど)のような姿とのコントラストが際立った。

直後の練習ではショットが思うようにいかず不満顔の松山に対し、タイガーはなんだかリラックスムード。ドライバーはフェード狙いで5スイングのみ。ショットの確認よりも、キャディのジョー・ラカバとの雑談の時間の方が多そうな感じだ。今週、会場に初めて姿を見せたのは前日水曜日の午後。王者らしい余裕の振る舞いが目立った。

午前9時20分、プレー開始のゴング。最初に魅せたのはタイガーだった。フェアウェイウッドでスタートホール(10番)のティショットを終え、第2打をピンそば1メートルにピタリ。いきなりのバーディに、大ギャラリーが、もう沸いた。

だがそれ以降、このペアを引っ張っているのは、多くの目には松山のように映ったはずだ。「ショットが不調」と嘆きながらも、12番、15番のパー3で少ないチャンスを確実にバーディに結びつける。一方のタイガー。16番(パー5)をボギーとするなど、前半はイーブン。やや遅めのグリーンを嘆くように、バーディを逃した2番(パー5)では小さな声で“Fワード”が飛び出した。この時点まで、松山が1打リードしていた。

昨晩米国入りした阿部靖彦監督は「普段となんにも変わらなかった」と教え子の様子を明かす。「2アンダーで回ってこい、って約束したんだ。そしたら『今の調子じゃ無理です』って」。相手は王者とはいえ、過剰に意識した様子はうかがえない。ラウンド中に時折小さくあくびをする姿も、そんなハートの強さの証なのだろうか…。

しかしその後、タイガーのショット、パットが次第に“キレはじめる”。3番でバーディを奪い、ともに2アンダーで並ぶと拍手喝采。そして2人が接近したのはその直後だった。

続く4番、松山がティショットを打って歩き出すなり、タイガーそのドライバーを手に取り、目をやった。「フラットなティショットを打っていたので、ドライバーのロフトが何度かなと思って。スピン量の少ない打球だった。(ヘッドには)9.5度って書いてあったけど、それより少ないロフトだったように見えた」とタイガー。「びっくりした」のは松山だ。

そして終盤にかけて王者は猛攻を続けた。「最後は今の自分の調子、そのままでした」と後退し、2オーバー41位タイと出遅れた松山に対し、タイガーは過去7勝を誇るコースを悠然と闊歩。8番ではフェアウェイから見事なフェードボールで、手前から右奥に長いグリーンを攻めこみ、ピン左2メートルにつけてバーディを奪取。(悔しいけれど)ホールアウト間際は、タイガーがギャラリーのハートを完全に奪い返していた。

ちなみに2人はこの8番ホールでも言葉を交わしている。「何歳だっけ?」、「21です」。そして松山もすぐさま聞き返してみた。返答は「37歳。オールド(年寄りだ)」。2つの顔が同時にほころんでいた。

4アンダーの3位タイで終えたホールアウト後、タイガーは松山の潜在能力を評価しながら言った。「彼は英語が得意ではないようだが、僕も同じで、日本語がまったくダメだからね。会話は少なかったけれど、一緒にプレーできて良かった」。王者のさりげないフォローが、なんともカッコよかった。

約4時間のラウンドが、なんだかあっという間に終わってしまった感じがするのは、きっと2サムでのプレーだったからだけではないはず。少なくともあと1日は、2人のプレーを同時に見られることが、今は何よりもありがたい。(オハイオ州アクロン/桂川洋一)

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