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2024年 サンダーソンファームズ選手権
期間:10/03〜10/06 場所:ジャックソンCC(ミシシッピ州)

PGAツアー1年生・久常涼 「ボクは亀なんでコツコツと」/単独インタビュー後編

PGAツアー本格参戦初年度で来季のシード権をほぼ手中に収めた久常涼。欧州ツアー(DPワールドツアー)を経てたどり着いた新天地は22歳の青年の目にどう映っているのか。インタビュー後編は初めての米国生活、そして先を行く日本人PGAツアー選手からの助言を明かした。(取材・構成/服部謙二郎)

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初の米国生活 “食プラン”が見つかった

PGAツアー1年生の久常は、毎週モンスターコースと対峙(たいじ)し、“化け物”のように飛ばす選手と戦ってきた。環境に順応するだけでも大変な作業に思えるが、さらに初めての米国生活ともあって慣れないことも多かったに違いない。

全国のツアー会場を渡り鳥のように転々とする日々。約8カ月の異国での転戦を終えた久常に生活面での苦労を聞くと、「最終戦を終えた頃に、ようやくどう過ごせばいいか分かった気がします」と大きく息を吐いた。

「正直、ガムシャラに突っ走ってきたので、生活している実感、余裕はなかった。成績が落ち着いてきた6月に(シカゴで)野球観戦に行ったぐらい。アメリカで初めてリフレッシュらしいことをした」。本格参戦から半年ほど経ってから、ようやく周囲の様子を落ち着いて見られるようになった。

広大な米国大陸は東西で最大3時間の時差があり、移動だけで丸一日かかることがザラ。飛行機の遅延や欠航は日常茶飯事、レンタカーを借りたり、荷物を送ったり、日本では何気ない作業も簡単にはいかない。

生活面で一番気にしていたのは“食”だ。「一年を終えてようやくプランができた。各試合のごはん屋さん、ここに行けば間違いないというのを見つけました」と、やはり胃袋が満足しないと安心して戦えない。シーズンのはじめは転戦に帯同する恋人の古川莉月愛(りるあ)さんに食事を作ってもらっていた。「それもやめました。試合が終わって帰ってきてから料理を作ってもらって…だと大変なんで、『もう外食でよくない?』って」

外食は韓国料理、日本料理などアジア料理が中心。最近ハマっているのがチポレ(Chipotle)というメキシカンファストフード店だ。「週4ぐらい行きます。(レギュラーシーズン)最終戦のウィンダム選手権では6回行きました。米、肉、野菜、自分で好きなものをトッピングした混ぜご飯のような食べ物で、全部入れてもらうのが好き」

毎日同じご飯につき合う古川さんも「もう気にならなくなりました。おかげさまで(笑)」とこちらもたくましい。初優勝したあかつきには、松山先輩のチックフィレのように、チポレの名前を出すといいだろう。ひょっとしたらスポンサーになってくれるかもしれないから。

大きかったPGAツアーの諸先輩の存在

PGAツアーに順応する上で「感謝しても、し過ぎることがないぐらい。めちゃめちゃ助けてもらいました」と言うのが、松山英樹のこと。同じ大会に出場する際には必ず、練習ラウンド同伴を申し込んでいた。

会話の内容こそ「企業秘密っす」と明かさないが、会場でやり取りを見ていると、松山が久常に攻略ポイントを惜しみなく教える姿が目立った。「ツアーの全体の流れや、試合を戦う上でのいろんなこともアドバイスしていただきました。シーズン序盤に色々教えていただいたのは、すごく大きかった」

松山にとってはライバルをひとり多く作るようなものだが、そこは彼の器の大きさだろうか。松山は8月、プレーオフシリーズ初戦の「フェデックスセントジュード選手権」で優勝。「あの人なら普通にやれちゃいますよ。普段の準備を見ていると、毎週勝っても不思議じゃない。来年も松山さんと一緒の試合に出られる時は、練習ラウンドをお願いするつもりです」。10歳若い“弟分”らしくちゃっかりしている。

テキサスでは今田竜二とリモートレッスン

生活に慣れるのも大変だが、米国の種類豊富な芝に慣れるのも外国人選手の鬼門といわれる。屈指のショートゲーマーである松山ですら「芝に慣れるのに2年かかった」と言うほど、対応は難しい。久常も「自分のバリエーションが少なすぎました」と戸惑った。「シーズン途中、ホントにどうやって打ったらいいか、わけが分からなくなって…」

久常は5月末、テキサス州の試合会場から、わらにもすがる思いで今田竜二に“テレビ電話”をかけたという。「テキサス周辺の、グチャグチャなった芝に全く対応ができなかった。地面も硬いし、どう打てばいいんだろうって。答えが分からずそのまま練習していたら、さらに下手になって。『むやみに練習すると悪い方向にいく』のを初めて理解した」

今田は突然の連絡にもかかわらず、丁寧に教えてくれた。「助けていただいて感謝しかないです。やり方が合わなければ、やっぱり変えなきゃいけない。それが分かったことが大きかった」と久常。「一年経っても『この芝だったらこう打つ』という正解はまだ分かっていないですが、こればっかりは数をこなさないといけない」

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「ボクは亀なんで」コツコツと

久常は今週、欧州ツアーから再び米国に戻り「サンダーソンファームズ選手権」からPGAツアーに復帰する。「(秋季シリーズで)勝てたらうれしいですね。勝てなくても、残りの試合で来年勝つための準備になるような戦いをしたい」と狙いは明確だ。

「来年は必ずPGAツアーで優勝して、世界ランキング50位以内に入るだけでなく、最後のプレーオフシリーズにも行きたい」。今年あと一歩のところまで迫ったプレーオフシリーズ。その入り口が垣間見えたからこそ、是が非でもそこに入り込みたい。「もちろん来年もまたマスターズに出たい。メジャーはツアーで良い結果が出れば、出場できるものだと勝手に捉えている。まずはツアーで勝つことが優先。優勝すればそこも見えてくる」

しっかりとした目標を見据えている久常だが、口ぶりに焦る様子がないから不思議だ。「焦っても仕方ないんでね。足りないもの全てを同時進行でコツコツとブラッシュアップしようと思っています。“一気飛び”は考えていません。今までが100%だとしたら、来年は105%くらいに」と、ほんの少しだけギアを上げるつもり。無理にアクセルは踏まない。着実に階段を上ってきた男の言葉は妙に説得力がある。

インタビューの後、「ボクは亀なんで大丈夫っすよ。のんびり屋なりに地道にやっていきます」と言い残してトレーニングに向かっていった久常。「もう少し体を強くしないと外国人に勝てない」と、その必要性を感じたようだ。

亀は最終的にウサギを追い抜く昔話がある。果たして彼は頭にどういう結末を描いているのだろうか…。

協力/瑞陵ゴルフ倶楽部

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