国内男子ツアーの賞金ランキング
2019年 WGC HSBCチャンピオンズ
期間:10/31〜11/03 場所:シェシャンインターナショナルGC(中国)
WGCはいつまで日本ツアーの賞金ランク対象外なのか
2019/11/03 08:04
◇世界選手権シリーズ◇WGC HSBCチャンピオンズ 3日目(2日)◇シェシャンインターナショナルGC(中国)◇7264yd(パー72)
エービーシーか、それともエイチエスビーシーか…。毎年秋になると、日本ツアーのトッププロは頭を悩ませるシーズンが続いている。国内男子「マイナビABCチャンピオンシップ」と、同じ週に開催される世界選手権シリーズ「WGC HSBCチャンピオンズ」。2つの試合は近年、両天秤にかけられている。
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2年連続の賞金王を狙う今平周吾は、賞金ランク上位2人の資格(10月21日時点)を放棄し、昨年に続いて「ABC」を選んだ。理由のうちのひとつが、「HSBC」の獲得賞金が、日本の賞金レースに加算されないことにある。
実際に上海に足を運びながら、今平に同調するように言ったのが、初出場した堀川未来夢だった。「今になって、今平が日本ツアーを優先する意味がちょっと分かった気がする。加算されないし…いざ、こっちでプレーしていても、日本ツアーが気になっている自分がいる」。待機選手だったため兵庫での「ABC」は“条件付き”でエントリー。「HSBC」の出場資格は前週のことで、ビザを取って開幕2日前の午後になんとか中国入りし、事前ラウンドなしのぶっつけ本番で臨んだ。
世界6大ツアーのフェデレーション(インターナショナル・フェデレーション・オブ・PGAツアーズ)で形成される年間4試合のWGCだが、2010年に日本ツアーの賞金加算大会から除外された。国内大会のスポンサーへの配慮とともに、予選落ちのない4日間大会で設定された賞金額が違いすぎる(優勝賞金はABCが3000万円、HSBCは170万ドルで約1億8394万円)、1試合でレースのバランスを崩しかねないという懸念からだ。
もっともらしい意見だが、今季からは特に再考が求められるように思う。日米ツアー共催の「ZOZOチャンピオンシップ」が始まり、獲得賞金の半額が国内のランキングに反映させることが決まったからだ。4大メジャーは100%を加算、ZOZOは50%、WGCは0%…。これではどうも筋の通った理屈がないように感じてしまう。
賞金王のタイトルは魅力的だ。5年間の長期シードは将来の海外進出において大きな意味を持つ。翌年の「全英オープン」などにも出られる。だから、今平の戦略や堀川の思いもそれぞれ尊重されるべきだ。ただし、賞金王のタイトルまでどういう過程を経てたどり着いたか、という点にもゴルフファンは敏感に判断する。彼らが“世界”に対して消極的というレッテルを貼られかねないし、喜び勇んでWGCを優先し、中国に来たチャン・キムや石川遼、浅地洋佑らは逆に日本ツアーを軽視しているように見られるかもしれない。
結局、日本ツアーの目指すべき方向性が不明瞭だ。「賞金レース」に“何をにじませるか”、このタイトルでファンに何を訴えるか、というものをはっきりさせていない。
それは時代によって変化するもので、現在であれば、その選手に将来世界で飛躍する姿を投影できるかという点が期待されている、と個人的に思う。ゴルフ以外のプロスポーツを眺めても、国内だけでの活躍ではファンをもう納得させられないからだ。こと男子アスリートで言えば、野球のメジャーリーグ球団や欧州サッカーのビッグクラブで活躍する日本出身選手が世間の話題を引っ張るようになって久しい。
日本ゴルフツアー機構(JGTO)が掲げる基本理念には「世界が認める技量を備えたツアープレーヤーが、そのプレーと人間性によって、世界の人々を魅了し、スポーツによる国際交流の担い手になります」、「世界を魅了するツアープレーヤーの活躍で、日本人の存在価値を広く世界にアピールし、次世代を担う子供たちに世界への道を拓きます」というものがある。
世界とリンクする機会を、ツアーが制限することはそもそも、理念に反するようでならない。自らの手で勝ち取ったグローバルイベントの出場機会で、“経験”だけを彼らのギフトにするのはいささか時代遅れのように見える。(中国・上海/桂川洋一)
桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール
1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw