ZOZOの余韻、松山英樹と“まぼろしの一打”
2019年 ZOZOチャンピオンシップ
期間:10/24〜10/28 場所:習志野カントリークラブ(千葉)
大興奮だった「ZOZOチャンピオンシップ」~ギャラリー徒然の変化
◇日米ツアー共催◇ZOZOチャンピオンシップ 最終日(28日)◇アコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブ◇7041yd(パー70)
逃げるタイガー・ウッズに日本のエース・松山英樹が追いすがる優勝争いで盛り上がった日本初開催のPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」。決着が持ち越された28日(月)にも2563人の観客が訪れ、荒天の影響で無観客だった2日間を含め、22日(火)からの一週間で計5万4840人が習志野CCへと足を運んだ。大会を終え、現地で取材中に聞こえてきた声をノートから拾い集めてみた。
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「ボールが空から落ちてきたんだ」とロープ外に飛んできたボールをめぐる経緯を、なぜか嬉しそうに教えてくれたのは、27日(日)に8番ホールの第2打地点コース脇に留まって観戦していた男性だった。ボールの持ち主は「南アフリカのディラン・フリッテリ」だったと教えてくれた。今年7月の「ジョンディアクラシック」でツアー初優勝を挙げた29歳で、今大会での順位は22位。日本での知名度は、正直言ってまだまだこれからという選手だろう。
そのフリッテリが、2打目地点に到着してラフに深く沈んでいたボールを見るなり、「誰か、僕のボール踏んだんじゃないの?」とジェスチャーを交えてジョークを飛ばしたことを、男性はとても気に入った様子だった。「(2打目を放った後で)こんなにターフが取れるのか…ってまじまじと見ちゃったよ。 (ターフが取れた跡の)写真を撮っていた女の子もいたんだよ」と、興奮した様子でそのシーンを再現してくれた。
優勝決定が持ち越された28日(月)には、「4時半に着きました」と明かす愛知県のご夫婦に話を聞くことができた。入場ゲートが開くのは6時半だが、優勝決定の瞬間を一番乗りで会場入りして見届けようと二人で心待ちにしていたのだという。今年はすでに国内男子「中日クラウンズ」(5月/名古屋GC和合C)や、渋野日向子が逆転優勝を飾った国内女子「デサントレディース東海クラシック」(9月/新南愛知CC美浜C)を観戦したご夫婦だが、ツアー観戦で県外まで足を延ばすのは初めてだった。
「普段は声なんて出さないけど、自分も出しちゃった。選手も気さくにこっちを向いてニコッてしてくれた」。そう話し、ロリー・マキロイやセルヒオ・ガルシアの名前を叫んだことを明かしてくれた旦那さまは、言葉ほどは恥ずかしそうな表情に見えなかった。普段見る国内ツアーでもグリーン上にボールが乗れば拍手は起きるが、どのタイミングにどう叫べばいいのかは分からないのかもしれない。今大会のギャラリーには日本在住とみられる外国人客も多く、英語で選手を鼓舞する声もよく聞こえた。プレーする選手のリアクションも国内ツアーの選手よりは分かりやすかったかもしれない。ご夫婦は「本当にここは日本なのかな?PGAツアーの雰囲気って現地でもこうなのかな?」と楽しそうに声をそろえた。
戦いを見届け、帰路につくギャラリーの手には皆、“82”という数字が書かれた赤い缶バッジが握られていた。サム・スニードのツアー最多勝利記録に並んだウッズの82勝を記念し、PGAツアーがあらかじめ用意していた記念品で、その瞬間を見届けたギャラリーに配布されたものだった。歴史の証人となった実感を噛み締めてか、「選手へのリスペクトを感じるね」と話すギャラリーは少なくなかった。もちろん、「ウッズが勝たなかったら、このバッジはどうしたんだろう?」と話す人もいた。いつから用意されたものなのか? 今回の取材で特定することはできなかった。
実は、この一週間の取材でどんな言葉よりも印象的だったのは、「すごい」と一言だけで止めるギャラリーの感想が圧倒的に多かったことだ。「何が?」ではなく、とにかくすごかったのだろうと、言葉のままに受け止めている。そして、この「すごい」インパクトが日本のゴルフシーンにどのように影響を及ぼすのか、とてもワクワクしている。(千葉県印西市/石井操)
石井操(いしいみさお) プロフィール
1994年東京都生まれで、三姉妹の末っ子。2018年に大学を卒業し、GDOに入社した。大学でゴルフを本格的に始め、人さまに迷惑をかけないレベル。ただ、ボールではなくティを打つなどセンスは皆無。お酒は好きだが、飲み始めると食が進まないという不器用さがある。