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いつも通りに…宮里藍の現役最終戦を取材して

2017/09/19 11:45


◇海外女子メジャー◇エビアン選手権◇エビアンリゾートGC(フランス)◇6470yd(パー71)

こんなにも愛と希望に満ちあふれた引退をかつて知らない。レマン湖畔の澄んだ空気に包まれたフランス・エビアンで、宮里藍が14年間のツアー生活にピリオドを打った。

遠く、湖の対岸にスイス・ローザンヌの街が見渡せる15番(パー5)の3打目は、60ydほどの距離をウェッジで低く転がし、傾斜を使ってピン上2mにぴたりとつけた。“ああ、もうこういうプレーは見られなくなるのか…”と寂しさが込み上げる中、これを沈めて小さく右手でガッツポーズ。現役最後のバーディも、これまでいくつも見たシーンと同じだった。

すぐに不安にとらわれた。週の前半からずっとそうだった。月曜日の練習ラウンドも、火曜日の公式会見も。練習場やパッティンググリーン、駐車場の車の前でも。宮里の普段とまるで変わらない態度と笑顔に触れるたび、何か大切なものを見落としていそうで不安になった。

最終日の18番グリーンでは、なんとゲーリー・プレーヤーが花束を持って出迎えた。これほど誰からも愛されたプロゴルファーは世界を探してもなかなかいない。思い浮かぶのは、アーノルド・パーマーくらいだ。

顔見知りの外国人女性記者は「ときどきしか会えなくても、彼女はいつも笑顔で迎えてくれる。どの記者も特別扱いしたりしない」と目を細めた。誰もが胸の中に自分だけの“藍ちゃん”を持っているようだった。

ロープ外には、宮里3兄妹にとって初めてとなるCM撮影を担当した宇恵さんと広川さん、ブリヂストンの中原さん、オークリーの露木さんら関係者も多かった。宮里が当時のゴルフ界におけるサングラスへの偏見を変えた。帽子のスポンサーロゴが隠れないようにひっくり返して載せる方法を発見したのも宮里だと、露木さんが教えてくれた。

宮里が史上最年少優勝を果たし、いまだ4日間の観客数ツアー最多を誇る2005年の「日本女子オープン」。最終日を6打リードで迎えた宮里が勝って当然だと思って、取材していた。5打差で逃げ切ってウィニングパットを沈めたのだが、突如大粒の涙を見せた。「本当に長い4日間だった」と肩を震わせて弱さを見せた。それまで超人のように感じていた宮里が、急にひとりの女の子になった。

「すごくやりきった気持ちもあるし、いまは本当にさわやか」と、現役最後の記者会見は晴れやかだった。年内は家族のサポートと休養が中心。いま一番何をしたい?と問われると、「Stay Home!(家にいること)」と笑った。「ツアープロとしては引退だけど、プロを辞めるつもりはない。ちょこちょこ練習もしたい」という。次に公の場に出てくるのは、12月7日のブリヂストン・ドリームフェスタ(千葉県成田市)になりそうだ。

記者として接した13年間を振り返ると、思い出すのは朝の挨拶や、質問者を見つめ返す瞳といった些細なシーン。学んだのは、常にベストを尽くしてチャレンジし続けること。浮き沈みのある中でも明るく前向きであること。ときに立ち止まって自分自身をほめること――。

エビアンのコース内に植えられた栗の木々。週初めには緑色のイガをつけていたが、日曜日には落ちた皮が少し茶色くなっていた。(フランス・エビアン/今岡涼太)

今岡涼太(いまおかりょうた) プロフィール

1973年生まれ、射手座、O型。スポーツポータルサイトを運営していたIT会社勤務時代の05年からゴルフ取材を開始。06年6月にGDOへ転職。以来、国内男女、海外ツアーなどを広く取材。アマチュア視点を忘れないよう自身のプレーはほどほどに。目標は最年長エイジシュート。。ツイッター: @rimaoka

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