中止で賞金は75% 上田桃子はランク6位に浮上
2017年 NOBUTA GROUP マスターズGCレディース
期間:10/19〜10/22 場所:マスターズGC(兵庫)
「気力」「度胸」 上田桃子を支える王貞治氏の言葉
◇国内女子◇NOBUTA GROUP マスターズGCレディース 最終日(22日)◇マスターズGC (兵庫)◇6507yd(パー72)
まだ薄暗闇に包まれたクラブハウスに「中止」を告げるアナウンスが響いた。荷物を搬出する選手らが慌ただしくロッカールームに出入りする中、通算11アンダーで優勝を手にした上田桃子がキャディやスタッフらと抱擁を交わし、喜んだ。
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「どんな形でも優勝したいと思っていたのでうれしいです。やっぱりスポーツは最後まで何が起きるかわからないし、そういう経験をしているので、試合があるだろうなと思って準備はしていた」。前夜はパターをホテルに持ち帰り、イメージトレーニング。この日は午前6時前にはクラブハウスに到着し、スタート前のルーティンをこなした。
5月の「中京テレビ・ブリヂストンレディス」以来となるツアー12勝目。優勝会見では、3日連続で同組だった畑岡奈紗に感謝した。「今週はペアリングが良かった。奈紗ちゃんはグリーンオーバーしても、アグレッシブに攻めるというか。自分もいい集中力が出せた」。恐れを知らずにゴルフを貫く18歳に、米ツアーの高い壁に阻まれた自らの過去を重ねた。
頭には4月の屈辱があった。地元熊本で行われた「KKT杯バンテリンレディス」では首位から出たものの、西山ゆかりにプレーオフで敗れた。「ラウンド中も熊本のことを考えていました。同じことをしたくない、と。2回したらバカだなと」。3日目を終えて最終日の中止を見込んだ他の選手や関係者から「おめでとう」「良かったな」の言葉をかけられたが、集中力を保ち続けた。
「気力」。クラブハウスの2階ショーケースに飾られた福岡ソフトバンクホークス会長・王貞治氏のサイン色紙の言葉だ。「最後は『これだよな』と。腹をくくりました」。見かけるたびに心の中でうなずき、コースに飛び出した。
昨年12月に急逝した荒川博氏(享年86歳)に師事していた縁で、昨秋には「度胸」と書かれたサイン色紙を王氏から直接もらった。「年齢を重ねれば重ねるほど、なくなっていくものだと思うので」。自身の部屋の一番目立つところに飾り、心に刻んでいる。(兵庫県三木市/玉木充)
玉木充(たまきみつる) プロフィール
1980年大阪生まれ。スポーツ紙で野球、サッカー、大相撲、ボクシングなどを取材し、2017年GDO入社。主に国内女子ツアーを担当。得意クラブはパター。コースで動物を見つけるのが楽しみ。