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石川遼の10勝目は、“奇跡無き勝利”

「もがいているとか、悩んでいると思われるのが僕、大嫌いなんです。絶対に人にそう見られたくない。苦労しているのを見られるのがイヤ。“カッコつけている”から。僕は不器用。器用で運動神経の良い人って、いきなり何でもできたりする。でも、僕はそうじゃない。最初は全然できないことの方が多い。裏で、影で頑張ってきたタイプなので」。

国内男子ツアー「三井住友VISA太平洋マスターズ」で2年ぶりの勝利を挙げた石川遼は、苦笑いと、照れ笑いを浮かべながら、そう話した。「だから、(2年間の苦悩は)書いても欲しくない(笑)。『全然、つらくなかった』って、書いといてください。『ちょろかった』って」。優勝会見の間も、涙まで流しておいて、そんなことを言う。しかし夏場からの15連戦中には腰痛を悪化させ、ウエアの下にサポーターを巻いてプレーする試合もあった。この1勝を「今までキャディの加藤(大幸)さんとやってきた中でも、一番大きなことを乗り越えて得た優勝」と表現した。2年間は、やっぱりつらかった。

加藤さんはラウンド後、「優勝した感じがない。なんでなんだろう・・・」と、つぶやき、そのワケを探し始めた。

石川は海外ツアーに参戦してから、新しいスタイルを模索し始めた。ピンを真っ直ぐに狙うだけでなく、状況に応じた精度の高い攻め方、守り方が必要とされ、追求を始めた。理由は、もちろんマスターズ、米ツアー優勝のため。「向こうで勝つためにはそれが必要。アメリカの選手って、(それぞれの番手の)飛距離が大体同じ。だから、パー3にしても、クラブとクラブの間の距離にわざとピンを切ってくる。それがまた、毎日違ったりする」。

加藤さん曰く、石川自身がそれを痛感させられたのは過去2度出場した「プレジデンツカップ」。まずは初出場の2009年、史上最年少で世界選抜の一員となった時。タイガー・ウッズスティーブ・ストリッカーといった米国最強コンビに完敗した。「タイガーのドローとフェード、あれを打てなきゃ絶対、アメリカで勝てない」。さらに11年大会。今年のマスターズ覇者バッバ・ワトソンとの一戦。「あれだけボールを曲げて、グリーンを大きく使えば・・・」。パワーで劣る自分が世界で勝つためには、これまでのゴルフでは通用しない。飛距離を伸ばすことは諦めない。だが平行してショットの種類を増やす必要があった。

この2年間で「引き出しが多くなった。だから僕も仕事が多くなった」と石川の相棒は言う。「低いフェード、高いフェード、中くらいのフェード、強いフェード。フェードだけでも4種類」。10勝目は、ここ御殿場で勝った2年前の勝利とは「全然違う」とキッパリ。「だってあの時はストレートしか打ってなかったもの」。

加藤さん自身、今季は6月の「全米オープン」を含む遠征で帯同キャディを“外された”。だが「あの5週間があって良かったかもしれない。あれから、お互いに言い合うようになった。今まではお互いに否定することがなかった。でも今は、ラウンド中にケンカになるんじゃないかと思うこともある。でも、それがないと、治らなかった」。日本ツアーの名物コンビの1組となった2人の仲にも、紆余曲折があった。

最終18番で2オンに成功した池越えの第2打。石川が「考えただけでもゾッとする。もう打ちたくない」と話したショット。その直前の2人のやり取りはこうだった。「ピンまでは残り228ヤード。5番ウッド(のフルショット)は240ヤード。左からのアゲンストの風。ちょっと寒い分、2ヤード差し引いてピッタリ」「左のグリーンエッジを向いて、普通にフェードを打つんじゃなくて、なるべくストレートのイメージで、左からの風に乗せる感じのフェードで」。勝利を呼び寄せる一打は、これまで無かった緻密な作戦会議が生んだ。

「今までの優勝ってチップインとか、色々あったでしょう。ああいう“奇跡”があって9勝してきた。でも10勝目は、あいつが自分のショットで獲った」。加藤さんに、勝った実感が湧かなかったワケ。それこそが石川の成長の証だった。(静岡県御殿場市/桂川洋一)

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桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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