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“賞金王”目指しアジア転戦中 22歳は13ドル差を追う

◇国内男子◇ブリヂストンオープン 2日目(11日)◇袖ヶ浦カンツリークラブ 袖ヶ浦コース (千葉)◇7119yd(パー71)

将来のステップアップを目指す面々が集うアジアンツアーの下部ツアー(ADT)では今年、3人の日本人優勝者が誕生した。4月「PGM UMW ADT選手権」で比嘉一貴が通算2勝目をマーク。直近の9月「Combipharプレーヤーズ選手権」では大岩龍一が初優勝を遂げた。そして彼らをしのぎ、シーズン2勝を挙げているのが関藤直熙(せきとう・なおき)。目下、賞金ランキング2位でトップをわずか13ドル(1403円)差で追っている。

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シーズン終了時のADTの賞金ランク上位7人には翌年のアジアンツアー出場権が付与されるが、なかでも賞金王はリランキング対象外の“フルシード”が付与されるため、2位で終わるのとは大きな違いがある。22歳の関藤は現在、レギュラーツアー(アジアンツアー)の賞金ランクでもシード確保を狙うほか、日本ツアーの予選会にも参加中だ。

6歳でゴルフを始め、地元広島で腕を磨いた。世界アマチュアランク1位に君臨する金谷拓実(東北福祉大3年)は、広島国際学院高時代のひとつ下の後輩にあたるどころか「僕が小学校2年生のときから一緒に回っていた」という仲だ。

今年「マスターズ」に出場するなどエリート街道を邁進する金谷に対し、関藤はまったく異なる道を歩んでいる。高校時代に1Wショットのイップスにかかったこともあり、卒業後はオーストラリア・ブリスベン郊外、ジェイソン・デイらを輩出したゴルフアカデミーに入門。2年3カ月の修行を経て、昨年日本でプロテストに合格した一方で、アジア下部を主戦場にした。

賞金王争いを繰り広げているとはいえ、関藤の今季獲得賞金額は現在500万円に満たない。日本のレギュラーツアーでランクトップの石川遼(約8301万円)とは16倍以上の開きがある。「それでも、今年は黒字です」というのは、転戦費用を至極当然に抑えるから。格安航空会社を贔屓(ひいき)にし、「(マレーシアの)クアラルンプールから福岡が、ゴルフバッグの輸送費を入れて1万5000円でした」という航空券を見つけては胸を躍らせる。

昨年1月、初めて出場したADTの大会の舞台はバングラデシュだった。「貧富の差がすごくて…」と受けたカルチャーショックがいまも頭に残る。信号に光が灯らない街。片側3車線の道路に5台、6台と車が並ぶ。渋滞で停止するたびに歩み寄る物乞いに、窓ガラスをたたかれる。「腕がない人、目がない人…。僕は直視できませんでした」。ホテルの外で日常的に行われるビルの爆破実験をテロと勘違いし、顔面蒼白になったこともあった。

だから貴重な日本のレギュラーツアーの出場機会には感謝の念ばかりが募る。主催者推薦で参加した今週の「ブリヂストンオープン」も嬉々として臨んだ。「こんなところでゴルフができるのは最高です。日本でずっとやっていたら、こうは思わなかった」。残りのシーズンはタイ、マレーシア、再び日本、インドネシア、台湾に足を伸ばす。海外留学と転戦でマスターした英会話も強い武器。トップツアーに至る道は険しいが、そこで得た経験はエリートたちが知らないものもある。

「頑張ります。日本でシードを獲れてもまたアジアに行きたい。両方、頑張りたいんです」。振り返る間もない多忙な毎日で、ハングリー精神はひとりでに養われている。(千葉市緑区/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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