連盟とゴルフ場が協力して、女性ゴルファーを増やしていく

◇アジアパシフィック女子アマチュア選手権 （10～13日）◇アブダビGC（UAE）◇6431yd（パー72）

夕刻のドライビングレンジに見慣れない光景が広がっていた。イスラム教の伝統的な黒い衣装やTシャツ姿の子供たち、なかにはノースリーブにホットパンツ姿も混じっている。みんな女性で、慣れないゴルフクラブと必死に格闘しているようだった。

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「アジア女子アマ」の3日目が終わった金曜日。会場のアブダビGCのドライビングレンジで行われていたのは、エミレーツゴルフ連盟（EGF／※UAEのゴルフ統括団体)と同クラブが主催する「女性向けの体験イベント」。クラブ所属のプロたちが、初めてゴルフクラブを握る女性たちにスイングの“いろは”を教えているところだった。

聞けば、このイベントはEGFが行っている女性ゴルファー増加に向けたプログラムの一環で、EGFは国内の各ゴルフクラブと連携して、女性向けの無料レッスンを提供しているのだという。UAEの女性は誰でも、国内のゴルフ場に行って所属プロのレッスンを無料で受けることができ、その費用はすべてEGFが負担する仕組みになっている。

UAEナショナルチームのコーチ、エイプリル・バーニーさんによると、現在UAEで定期的にプレーをしている女性ゴルファーは40、50人ほどという。バーニーさんを含めて何人かの関係者に話を聞いたが、UAEで女性がゴルフをする障壁はないという。ただ、ゴルフの存在そのものがほとんど知られていないという。日本では女性ゴルファーが100万人はいるだろうと伝えると、目を丸くして驚いていた。

大会2日目、上田澪空は地元UAEのアル・スワイディと同組で回った

今大会、UAEを代表してプレーした女子選手は4人いた。そのうち2人はUAE国籍を持ち、残りは同国に住むインド国籍の2人。地元出身のトップアマであり、初日の第1組で最初のティショットを放ったハムダ・アル・スワイディは、2日間のラウンドを通算37オーバーで終えると「Done！」と清々しく笑っていた。

UAEの女性たちは、もっとゴルフに興味を持ってくれるだろうか？という問いかけに、アル・スワイディは「ゴルフは素晴らしいゲーム。彼女たちの刺激になることを願っている。自分たちの国にこんなに美しいゴルフ場があるんだから、やらない理由なんてないじゃない？」と胸を張って応えていた。

母親らしき人を指導するUAEのジュニアゴルファー

金曜日の夕方、イベントを最後まで観ていると、片付けをしていたスタッフの女性（のちにサウジアラビア出身と判明）が、1本のレンタルクラブを引っ張り出して「私はこのクラブで良いのかしら？」と聞いてきた。「あなたはゴルフをやっているの？じゃあ、ちょっと教えて」と、そのまま参加者のいなくなった打席まで連れられていき、球を拾ってゴルフクラブを振り始めた。1回、2回とフェースは球の30㎝ほど手前をたたいて当たらない。ようやく3回目でヒットすると、球は30ydほど飛んでいった。「初めて打ったわ！」と両手を挙げて喜ぶ女性。新たな女性ゴルファー誕生の瞬間に立ち会えて、じつに光栄な気分だった。（アラブ首長国連邦・アブダビ／今岡涼太）