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小林至博士のゴルフ余聞

過熱する“ライブベッティング”とPGAツアーの相性/小林至博士のゴルフ余聞

PGAツアーの2023年初戦「セントリートーナメントofチャンピオンズ」で、ジョーダン・スピースの“神対応”がツアーのツイッターで動画配信された。グリーン脇で、パットが入るかどうかで賭けをしていた2人のギャラリーに「賭けは構わない。自分も同じことをするだろうからね。ただ聞こえたんだよ」と笑顔で諭し、グータッチをしてその場を後にしたのだ。

スポーツを対象にした賭け、スポーツベッティングの浸透と進化が加速している。代表的なのは勝敗や優勝チームを予想する賭けで、先のFIFAワールドカップでは日本でもオッズが連日報道されており、イメージが湧くだろう。ただ、日本では勝敗を対象として金銭を賭けることは違法だ。

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一方、日本以外のG7加盟国では全て合法化されている。とりわけ2018年にスポーツ最先進国の米国で合法化されて以降、燎原(りょうげん)の火のごとく、愛好者が増えている。

愛好者の増加は商機の増加であり、顧客獲得のため、血眼になってサービスの充実が競い合われている。とりわけ主戦場であるオンライン上では日々新たな価値が創造されて、安全性、娯楽性ともに飛躍的に高まっており、米国での賭け金は月間1兆円を突破するに至った。

最も盛んに賭けが行われている競技は世界的にはサッカーで、米国ではアメフト。要は人気スポーツの順位の通りなのだが、スポーツベッティングにぴったりということで、ベッティング業界が熱い視線を注いでいるのがゴルフである。というのも、全てのプレーに仕切りが入るゴルフは、プレーの一つひとつ全てが賭けの対象となり得るからだ。

コンペでおなじみのドラコンやニアピンはもちろんのこと、冒頭のスピースの例のようにパットが入るかどうか、そのホールのスコアも対象になるし、同組のトータルスコアなどの複合技もある。

今ベッティングに携わる企業が躍起になっているのが、試合中に刻一刻と変わる状況を対象に賭けるライブベッティングの充実である。次に何が起きるかを予測しながら観戦する楽しみを提供できれば、ファンの興味は増幅し、市場はさらに拡大するだろうというわけだ。

とはいえ、まだ株式市場のように秒単位での注文ができる段階にはない。たとえば、反則によるPKが生じた際に「入るか、入らないか」を開帳できるまでには至っていない。そもそも、目まぐるしく展開が変わる競技を食い入るように見ながら、ベッティングまで手が回るかどうかは微妙なところだという説もある。

一方、ゴルフは程よい間(ま)がある。友人同士ワイワイやりながらの観戦で、「次のホール、松山英樹がバーディを獲れるよう願いを込めて賭けるか」なんていう楽しみ方が可能である。愛好者に富裕層が多いのもプラス。ということで、ブックメーカー大手の「PointsBet社」がPGAツアーとタッグを組んでライブベッティングを大々的に展開する2023年である。(小林至・桜美林大学教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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