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小林至博士のゴルフ余聞

イベント現場で実感 急速に存在感増すインドアゴルフ/小林至博士のゴルフ余聞

2024/07/28 16:13

プロツアーの中継でお馴染みの詳細なショットデータがより身近になりそうだと、「SPORTEC 2024」(7月16~18日/東京ビッグサイト東展示棟)で改めて感じた。SPORTECとは、日本最大のスポーツ・健康まちづくり総合展。スポーツ人口を増やし、スポーツ競技力向上と健康社会を実現することをビジョンに掲げ、2009年の初開催から今年で16年目。出展社は最新のマシンやテクノロジー、斬新なサービスを披露する。スポーツ産業のトレンドと未来を実感できる場所で、来場者は毎年4万人を超える。

そのSPORTECで、一昨年あたりから急速に存在感が増しているのがゴルフだ。以前は、会場内を歩いているうちにシミュレーターなどが置かれたコーナーに遭遇する感じだったが、今年は広大な東展示棟に入場すると「ゴルフ・パフォーマンス・コンベンション」の巨大な看板が目に飛び込んできた。

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取り分け目立っていたのが「ステップゴルフ」。日本最大の店舗数を誇るインドアゴルフスクールである。この5年で店舗数は倍増、100を超えている。本コラムでも以前に取り上げたが、インドアゴルフ練習場は弾道測定器の精度の向上と初期投資を抑えられることから、市場は急拡大中だ。ほかにも多数のインドアゴルフが出展しており、それぞれが独自の切り口やサービスを掲げていた。

パットシミュレーター「TOURPUTT」も面白かった。傾斜をつけた直径5mの円形グリーンで、ブレーキングラインごとの成功率や打ち出し方向、ボールスピードなどが数値化され、グリーン上に投影される軌跡とガイドラインで可視化される。インドアを中心とするゴルフ練習場向けに営業中とのことだが、約500万円という導入コストを踏まえると富裕層も顧客として有望だろう。実際、自宅にシミュレーターを備えている富裕層は私の知る限りでも結構いる。

テクノロジーの進化は機器の小型化、廉価化、汎用化を伴うのが常だが、自宅で励みたい人のための練習器具もひしめきあっており、デジタル化による「見える化」が進んでいることを改めて確認した。

私が試した中で特に興味深かったのは、天井の低い部屋でもセンサーとAIで正しいスイングを確認できるスイング練習器「InBirdieスイング」と、デジタルレーザーを使い、畳一畳分のスペースで20mまでの距離と方向をフィードバックしてくれる「PUTTISTII」である。

米ゴルフダイジェスト社の記事によれば、この40年でUSGAハンディキャップが25以上の割合は17%から8.5%に半減したものの、ハンデ10から20の、いわゆるアベレージゴルファーの割合は48%から49%とほとんど変わっていない。

同誌は、用具やボールが劇的に進化したことで初心者でも楽しめるようになったが、シングルあるいはそれ以上を目指す本格派にとってゴルフは昔も今も難しいスポーツであると結論付けている。AIは人間の生活や社会構造に未曾有の変化をもたらすと予測されている。ゴルフはいかに。(小林至・桜美林大学教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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