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小林至博士のゴルフ余聞

ゴルファーには魅力的 米国で経験した「サマータイム」の恩恵/小林至博士のゴルフ余聞

2023/08/29 15:25

秋の日はつるべ落とし。猛暑は続くが、確実に日は短くなっている。夏の終焉を告げる8月31日の東京の日没は午後6時11分だそうで、日が一番長い夏至に比べて約50分短い。酷暑はつらいが、夏の終わりは寂しい気持ちにもなる。井上陽水の「夏の終りのハーモニー」や、ドン・ヘンリーの「Boys of Summer」など、夏の終わりの切なさを歌に託した楽曲も多い。

これから、冬至に向かって日が短くなるのは自然の摂理で、どうしようもないが、行楽日和の秋に日照時間を最大限に活用し、もっとゴルフを楽しむ方法はないものか。ある。アメリカや欧州で採用されているサマータイムである。

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アメリカでは、アリゾナやハワイを除くほとんどの州で、3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までのほぼ8カ月間、時計の針を1時間進めた夏時間、正式には「Day Light Saving Time(略称DST)」になる。ちなみに「サマータイム」という言葉は和製英語ではないが、アメリカでは使われない表現である。

DSTの目的は日照時間を有効活用し、エネルギーを節約することと、活動できる時間が1時間長くなることによる経済効果の2つである。ゴルファーにとっては、いわずもがな、非常に魅力的な制度である。

私は1994年から2000年までの7年間、ニューヨークとオーランド(フロリダ州)に住んだが、DSTの恩恵を存分に受けた。ニューヨークを例にとると、夏至の頃は午後8時30分過ぎてもまだ明るい。2ラウンドどころか、2.5ラウンドも可能で、実際、何度もそうした。アメリカはほとんどのコースがカート乗り入れ可能で、ラウンドを重ねても思いのほか疲れない。

DSTの最終日(今年は11月4日)でも、ニューヨークの日没は午後5時50分で、東京よりも1時間以上遅い。むろん、DSTが終わると日が一気に短くなるが、寒い時期の朝にプラス1時間余裕ができる効用のせいか、さほど気にならなかった(朝が苦手なだけか)。

日本でも過去何度か(ネットで検索すると5回ほど)、DSTの採用が議論されてきた。直近だと東京オリンピック・パラリンピックを控えていた2018年がそう。そのたびに心躍らせ、友人・知人にその効用を説いて回ったが、「いいね」と同意するのは日本在住の欧米人と欧米に在住経験のある日本人くらいで、反応は鈍かった。

私の記憶では、世論調査で賛成派がおおむね上回ってきたが、大多数を占めるまでには至っていない。こういうとき、わが国は動かない方を選ぶ。反対派の主張は、マジメな日本人は日が長くなることで労働時間が増え、睡眠不足に陥ることや、情報技術機器や地震計のプログラム変更にかかる手間暇・費用などのデメリットが、省エネや消費拡大によるメリットを上回ると言う。

終戦直後にGHQの指示でDSTを導入した際に、国民生活が混乱しただけでなく、労働時間が長くなって疲弊し、むしろ効率を落としたことがトラウマになっていることも、反対の理由として指摘されていた。

1994年に米国に移住した夏、午後8時を過ぎても明るい、あの高揚感は私の記憶に焼き付いている。一度、試してみても良いのではないかと、DST導入議論の再燃を楽しみにしている。
(小林至・桜美林大学教授)

小林至(こばやし・いたる)
1968年生まれ。江戸川大学教授を経て、2020年4月から桜美林大学(健康福祉学群)教授。92年、千葉ロッテにドラフト8位で入団。史上3人目の東大卒プロ野球選手となる。93年退団。翌年からアメリカに在住し、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)取得。2002年から江戸川大学助教授となり、05年から14年まで福岡ソフトバンク球団取締役を兼任。「パシフィックリーグマーケティング」の立ち上げなどに尽力。近著に『スポーツの経済学』(PHP)など著書多数。

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