「思いっきり振っていける」松山英樹はスピース&ステンソンとの注目組
2019年 AT&Tバイロン・ネルソン選手権
期間:05/09〜05/12 場所:トリニティフォレストGC(テキサス州)
「憧れはヒデキ」3年の下部ツアー生活 イ・キョンフンに開ける世界
◇米国男子◇AT&Tバイロン・ネルソン 事前(7日)◇トリニティフォレストGC(テキサス州)◇7371yd(パー71)
今季米ツアーに参戦した27歳のイ・キョンフン(韓国)。日本ツアーを主戦場にした2015年までの4シーズンで2勝を挙げた。翌16年に米下部ウェブドットコムツアーに参戦すると、3年目に昇格し「子どものころからの夢を叶えた」。
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父の影響で12歳で始めたゴルフの憧れは、もちろんタイガー・ウッズ。「いつか同じ舞台でやりたい」とウッズと同組の優勝争いを想像しながら、練習に励んだ。
日本ツアーの居心地は良かった。「食べ物は美味しいし、長い移動もあまりない。良い人ばかりだ」。いまも大好きな国のひとつだという。予選会を突破すれば米ツアーに直接参戦できた、かつてのルートはもうなくなっていた。「ただ僕はいつかチャレンジしなきゃとずっと思っていた。やりたいことをするには、選ぶ必要がある」。
這い上がると決めた下部ツアーは楽しくも厳しい場所だった。1年目の16年は18試合の出場で10度予選落ち。日本ツアー時代に1シーズンで最高7000万円以上を稼いだ賞金は、同年650万円ほどに減った。「これはマズいと思ったよ…」。それでも、心の中で退路は断ってきたつもりでいる。「簡単に諦めることはできないし、日本と違うコースに慣れていくしかないと思った」
環境にも鍛えられた。米ツアーは今大会のテキサス州ダラスのように、大きな街で盛大に開かれるスポーツイベントだ。一方、下部ツアーは小さな田舎町で開催されることも多く、「米ツアーなら大きな空港の近くで試合をよくやる。でもウェブドットはそこから乗り換えて、小さな空港からコースに入るんだ」と説明。会場近くにホテルやレストランなどは少なく、「寝るのも食べるのも本当に厳しい環境。日本の食べ物を思い出した」と述懐する。
前年の下部ツアー賞金ランキング5位の資格で昇格した今季は、夢を見ているようだという。前週「ウェルズファーゴ選手権」で今大会の練習ラウンドを同じ27歳の松山英樹に志願した。「ヒデキは僕らの憧れなんだよ。限られた試合で米ツアーの出場権を手にして、大きなトーナメントでたくさん勝っている。いま韓国の選手が米ツアーには多いけど、みんな彼みたいな活躍をしたいって思っているよ」。ちなみに松山が16年「日本オープン」を制したときの2位がイだ。「そうなんだけど、レベルは違うよ」と気恥ずかしい表情を見せる。
松山がこの日前半9ホールでプレーを終え、一人で回ろうとした後半インの終盤に、世界ランキング3位のブルックス・ケプカが合流してきた。「やっぱり、ここにはスーパースターばっかりだ(笑)。後半はアプローチとパターをやっただけだけど、ヒデキのあとにケプカと一緒なんて」
イは今季、3月の「ザ・ホンダクラシック」での7位を含めトップ10が2度。いまの目標は初優勝、そしてロッカールームで写真を撮ったことしかないウッズと同組でプレーすることだという。「いつか叶うかな。本当にそう思いますか?(笑)」。果てしなかった夢が、確実に手の届くところまできた。(テキサス州ダラス/林洋平)