感情と、自らのゲームをコントロールするタイガー・ウッズ
ウッズ、ソレンスタム組がデュバル、ウェブ組に辛勝
ゴルフは「昔からあるばかばかしいゲーム」なんだと、デビッド・デュバルは喝破していた。ロイヤル・リザムで今年の全英オープンを制し、初のメジャータイトルを手に入れた少し前のことだ。今年で3回目となるIMGとABCのイベント、ザ・バトル・アット・ザ・ビッグホーンが、7月30日月曜日の夜、カリフォルニア州パーム・デザートで行われたが、まさにそんなゲームだった。タイガー・ウッズとアニカ・ソレンスタム組が、デュバルとカリー・ウェブ組と対戦。ウッズとソレンスタムのペアが19ホールめで勝利を決めた。2人は120万ドルを分け合い、デュバルとウェブは25万ドルずつ受け取った。
これはゴルフ界のスターにとって、とくにLPGAのスターにとって、プライムタイムを沸かせるまたとない機会だった。
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しかし、マッチの大部分は、まさしく昔からあるばかばかしいゲームだった。プレイの進行は遅く、呆れるほどミスだらけ。ウッズ、ソレンスタムともに不恰好な左利きショットを余儀なくされ、ソレンスタムのボールはブッシュに入って中断。バックナインでは、二人とも最初の2ホールでダブルボギーを叩いた。カップを通り過ぎて12メートル以上も転がってしまったパットも一度きりではなかった。ウソじゃない。このイベントは、テレビ放送のために行われたエキシビション・マッチで、ハイテクを駆使したヘッドスピード・ボールスピード測定器が用意され、プレイヤーにはマイクが仕込まれていた。しかし、測定器は華氏100度(摂氏38度)の砂漠の暑さで壊れ、プレイヤーはこれと言って話すこともなかったのだ。
それでも、多少の興奮する瞬間があった。ウッズとソレンスタムが熱いスタートを切り、3番ホールではウェブとデュバルがバーディを決め笑顔でハイファイブ(俗称:ハイタッチ)。一番盛り上がったのは、ソレンスタムの18番でのパットだ。不運にも、東海岸では夜も更け行く時間に、さらにもう1ホール続くことになった。
ウッズは例のごとく「アニ、ナイスショット」と声をかけ、ソレンスタムとウッズパッティングについて言葉を交わしていたが、デュバルとウェブはとくに話すこともない様子だった。デュバルは時折ギャラリーと打ち解けた雰囲気を作っていたが、ウェブとデュバルにマイクをつけても、ほとんど無意味だった。
勝負は接戦で、プレイヤーも頑張っているように見えた。ウッズが7番でドライバーショットをはずし、悪態をつくシーンもあった。しかし相手チームのせいで全ては台無し、オルタネート方式もスムースに進むはずのペースを乱す要因となった。今年すでに行われたメジャー6試合のうち5つを、そこにいる4人で勝っていることになるのに、そのことに触れようもなく、どんどんまぬけな展開となっていった。
みな、誇り高きアスリートだが、プレイは誇らしいものではなかった。それなりのユーモアと受け取れるシーンもあった。15番ティーに立ったデュバルがドライバーか3番ウッドか迷って観客に言った。「ビトウィーン・クラブだよ。2番ウッドがいる」と言いながらドライバーを取り出して笑わせたが、デュバルのショットが砂漠に消えると、拍手も消えた。 試合がつまらなかったことは非常に残念だ。LPGAのプレイヤーが大勢の前で優れたパフォーマンスを披露する良い機会だったからだ。1999年、タイガー・ウッズがシャーウッドでデュバルを抑えて勝利したとき、ABCの視聴率は6.9%をマークした。翌年のビッグホーンで、ガルシアがタイガーに勝ったときは7.6%にものぼった。参考までに示せば、今年最初のLPGAのメジャーであるナビスコ・チャンピオンシップの視聴率は1.1%だったのだ。だから、女性陣にとってはLPGAを見たことのない数百万人にアピールできる、願ってもないチャンスだったのだ。
「アニカもカリーもそのことについて私と話をしませんでした。しかし、尋ねられれば今回のイベントへの参加を強く促したことでしょう」LPGA コミッショナーのタイ・ボウトウは言う。「プライムタイムのテレビなんですから。飛躍するチャンスだと思わなくてどうするんです」
LPGAにとって、しばらくこんなチャンスは訪れないかもしれない。2002年のザ・バトル・アット・ザ・ビッグホーンⅣは、ウッズがジャック・ニクラスと組み、アーニー・エルスとゲーリー・プレイヤーという南アフリカのペアと対戦することが決まっている。ウェブとソレンスタムは貴重なエキシビションだったことをわかっていた。
「私のキャリアのハイライトです。タイガー、デユバルと一緒にプレイできるのは」ソレンスタムはそう言っていた。ウェブも言う。「そんなフォーサムでプレイできること自体がすごいことです」
このイベント前のウッズのスケジュールは、彼にとってはそれほどの大事ではないことを示しているかもしれない。全英オープンから今回のイベントまでの間、ウッズはほとんどクラブを握らず、前日はオハイオで自身の主催する子供たちのためのクリニックを開いていて、そこから空路、カリフォルニア入りしたのだった。しかし、ウッズだけではない。ソレンスタムもウェブも、今回のビッグホーンIIIが終わるや翌朝には飛行機に乗り込んで、全英女子オープンの開催されるサニングデールへ向かった。
今年4つめのメジャーのためにすでに仲間たちは練習ラウンドをこなしている日だ。
「全英オープンは、まだこれから何度もあるけれど、ビッグホーンはそうあるものではないですからね」とウェブ。その通り。全英は何度も巡ってくる。あっちもそうなら、こっちもチャンスはまだたくさんあるはずだ。デュバルの直観はまことに正しい。昔からあるばかげたゲームなのですよ、結局。Jeff Barr(GW)