やり投げ、ブリッジ…山本由伸投手の個性派トレーニングはゴルファーにも効果てきめん?
日本時間27日にMLBロサンゼルス・ドジャース開幕戦のマウンドに立った山本由伸投手は、ユニークなトレーニング法を導入していることで知られる。重りで負荷をかける従来のウエートトレーニングとは一線を画す、やり投げやブリッジといった独自の理論に基づくエクササイズの数々。これらは、ゴルファーのパフォーマンスにも大いに好影響をもたらす可能性を秘めているという。同球団スタッフとして山本投手をサポートする矢田修トレーナーに話を聞いた。(聞き手・構成/亀山泰宏)
山本投手が実践するトレーニングは、矢田氏が30年以上の実績と研究によって開発した「BCトータルバランスシステム」に基づく。「BC」は「Biomechanics(生体力学)」と「Cell(細胞)」の頭文字とされているが、それは一面的な理解に過ぎない。
「原因があって結果が、本質があって現象がありますよね。ゴルフも含め、いまスポーツ科学の分野でどんどん研究が進んでいるのは、現象の相関性です。客観性を求めて『現象と現象をどういう風に…』ということばかり進んでいくと、目に見えるものしか判断できないじゃないですか」。対してBCトータルバランスシステムは現象の本質、スポーツで起きるミスの原因、深層をフィジカルの観点から明らかにしようとする。
仰向けに寝た状態で数カ所に専用のセンサーを当てるだけで身体のゆがみを数値化し、アバターが表示されてゴルフスイングをはじめとする動きのクセ(力みが起こっているポイントなど)が可視化される。そしてソフトな施術と、400種類を超える独自エクササイズを通じて能力を最大限に引き出していく。
「高名なコーチに習って、やり方“だけ”教わっても自分のものにはなりません。言われた通りにやって、(一見すると)実際にできているにも関わらず、結果はなぜ違うのか。その原因、本質がどこにあるのかといったら、身体の中、目に見えない部分です。目に見えるところは間違っていなくても、目に見えないものがつながっていなかったら、結果としてバラバラなんです。それ(本質)は高速度カメラで撮った映像にも出てこないのです」
特に「正しく立つ」ということを重視している矢田氏の理論は、ゴルフとの親和性が高い。「振り方、打ち方の前に自分はそこに安定して立てているかどうか。ただ真っすぐ立つということだけでも、姿勢、呼吸、集中の調整能力…これだけやらないと立てません。(スイング理論など)答えを求める前に、自分の問題に気づくこと。その問題を自分のなかで見つけることの一つのヒントになります」。例えば身体のゆがみを数値化して右股関節に力みがあるとが分かれば、アドレスにおいて意識するポイントも具体的になる。
ゴルファーのトレーニングといえば、飛距離に直結する筋力アップをイメージすることが多い。矢田氏の理論は、その前段階にあるものという考え方もできる。
「ここの筋肉を一生懸命つけましょう、とかプラスのことをやる前に、マイナスをなくした方が早いと捉えていただけたら。身体がニュートラルな状態になった、自分の最適化が終わった、だからいまの自分の状態で一番いいショットができますよ、と。うまくなる以前に、会心のプレーが増えると思います」
ブリッジなど、山本投手の代表的なエクササイズもゴルファーに効果的だと太鼓判を押す。「山本くんがやっているBCエクササイズというのは、体性神経、力ずくでは、筋肉ではできないものばかり。『なぜできないのか?』を突き詰めて、工夫して、いろんなものを総動員することによって、体性神経ではなく自律神経で身体を動かすという優位さの逆転が起きます。山本くんが受けられるはずのない(至近距離の)ピッチャー返しをサッと受けられるのは、エクササイズを通じて自律神経の調整能力がどんどん上がっている背景があるからです」。自律神経には、超集中状態いわゆる“ゾーン”とも深く関わる副交感神経が含まれるため、野球に限らず最高のパフォーマンスを引き出すことが期待できる。
昨季ワールドシリーズのMVP、言ってみれば“世界一の投手”を支える矢田氏は、膨大な時間を費やした研究成果をアマチュアゴルファーのような一般向けにもどんどん広めていきたいと考えている。自らのメソッドと最先端のAI技術を組み合わせて専門知識の理解を助ける「KINETIC LAB-Link」は、その夢を形にしていくものだ。「多くのゴルファーに活用していただいて、これから生き生きと生きていくためのツールとしてゴルフを利用できるように」と今後の展開に目を輝かせた。