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ナイキ クラブ開発秘話 第1話「VRシリーズ」タイガーの要望に応える

ナイキがゴルフに参入して2010年で10年目を迎えるが、2つのブランドを軸にクラブ開発もますます本格派してきた。そこで今回は、アメリカ、テキサス州にあるフォートワースでクラブ開発を行っている川口洋氏にインタビューし、開発の経緯を聞いてみた。3回にわたり、「VRシリーズ」、「SQシリーズ」、「METHODパター」の開発秘話をお届けする。

第1話は「VRシリーズ」。昨年「VRシリーズ」で3種類のアイアンを発表したわけだが、プロラインの充実を図ろうと今年はドライバーを発表。今までナイキは「SQシリーズ」1つのブランドで、プロ、アマチュア両方のニーズに応えようとしていたが、どっちつかずになる可能性があり、開発側としても2つのブランドに分けてくれてありがたいと川口氏は話す。

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「VRドライバー」の開発ポイントは、打点がヒール下側にズレる傾向があることから、そこの反発を強くするということに重点を置いた。タイガー・ウッズからも要望があり、彼が得意とするショット「スティンガーショット」はフェース下側でボールを捕らえるのだが、その時にボールをコントロールしたいのはもちろんのこと、飛距離を落としたくないという、開発者泣かせのリクエストがあったという。

これに応えるべく、ソール部分の溝「コンプレッションチャネル」をつけることにより、フェース下側の反発を高めた。インパクト時にソール部分の溝がたわみ、効率よくボールにエネルギーが伝わる仕組み。ヘッドを硬くすれば反発は高くなると思われがちだが、エネルギーをロスさせない適切な軟らかさが必要だという。

打球音でも実証されていて、従来のドライバーでは下側で打つと「ボコッ」「ガツッ」といった鈍い音がするのだが、VRドライバーの場合「カキーン」と心地よい音が鳴る。つまり下側でもヘッドがちゃんと振動しているという証拠だ。実際、タイガーもテストを行っていて、ソール部分の溝があるとないとでは「20ヤード→6ヤード」と、飛距離ロスを軽減させている。

そしてもうひとつの特長は、フェースの向きを変えられる「ストレートフィット」が、「8通り→32通り」にバージョンアップされたことだ。ツアープロは主に構えたときの印象や、フェースを開いてロフトを立たせるために使うのだが、いままでは1度回すと変わり過ぎてしまい対応するのが困難だったが、今回32通りにすることでプロが求める「ちょっと」の微調整に対応できるようになった。

今後、2010年から施行される「グルーブ規制」により、ボールのポテンシャルで止めようと、スピンがよく効くボールが主流になるのではないかと川口氏は予想している。しかしドライバーでは過剰のスピンが飛距離ロスの原因になることから、ドライバー設計ではなるべくスピンを減らすための工夫が必要だと、新製品の開発に闘志を燃やしている。

次回は、”ナイキ開発秘話 第2話 ヘッドスピードを上げろ「SQシリーズ」”を紹介する。



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