2022/02/15進藤大典ヤーデージブック

個性派レフティ支えて15年 マスターズ2勝の“黒子役”がシェフラーとタッグ

やっと、と言ってもいいでしょう。スコッティ・シェフラーが「WM フェニックスオープン」でツアー初優勝を飾りました。 ジョーダン・スピースの後輩に当たる名門テキサス大出身で、身長190㎝の大型プレーヤー。高校で「全米ジュニア」制覇、大学で「全米オープン」ローアマと“王道”を歩み、プロ転向後もすさまじいスピードで出世街道をひた走ってきました。 下部コーンフェリーツアー最優秀選手として昇格を果たした2019-20年シーズン。コリン・モリカワが初出場初優勝を遂げた「全米プロ」でダスティン・ジョンソンと最終日最終組を回ったのがシェフラーでした。6試合でトップ5入りするなど、ポイントランキング5位に食い込...
2022/01/18進藤大典ヤーデージブック

PGA初タッグで予選落ちから9年 松山英樹が積み上げてきたモノ

仕事でホノルルに来ていたため、昨年10月「ZOZOチャンピオンシップ」に続いて現地で松山英樹選手の優勝を見届けることができました。喜び、興奮とともに少しの驚きもありました。 というのも、「ソニーオープンinハワイ」は過去8回出場してトップ10入りがなく、最高は2020年の12位。本人がインタビューで話していたように苦手意識もあるコースでの勝利だったのですから。選手として、またひとつ上の段階に上がった気がします。 実際にコースで見た松山選手からは、これでもかと“オーラ”が出まくっていました。“この会場にいる誰にも負けないよ”と背中で語っているかのよう。代名詞ともいえるアイアンの精度はもちろん、高...
2022/02/08進藤大典ヤーデージブック

203試合目の歓喜 トム・ホジーが貫いた堅実マネジメント

「AT&Tペブルビーチプロアマ」で初優勝を飾ったトム・ホジーがPGAツアーに初めて出場したのは2011年「RBCカナディアンオープン」でした。直前、3部ツアーにあたるPGAツアーカナダ「プレーヤーズカップ」を制してつかんだ切符でしたが、あえなく予選落ち。2部ツアーを経て2014-15年シーズンから最高峰の舞台へ本格参戦を果たしたものの、3季連続でシード確保に失敗。PGAツアー203試合目での初タイトルは、長い下積みが報われた瞬間でした。 通算200試合目までの最高成績は1度きりの2位(2019年「ア・ミリタリー・トリビュート at ザ・グリーンブライアー」)。それが2週前の「ザ・アメリカンエキ...
2022/01/25進藤大典ヤーデージブック

異なるコーチで2シーズン連続V スワッフォードの歩み

ハドソン・スワッフォードが「コラレスプンタカナリゾート&クラブ選手権」で3年ぶりの優勝を飾ったのが2020年9月末のこと。「メジャー・メディカル・エクステンション」(公傷制度)の適用を受け、残り2試合とリミットが迫る中での大きな1勝でした。 そして、初Vの舞台でもある「ザ・アメリカンエキスプレス」での大会2勝目で2シーズン連続優勝。肋骨、足の裏と度重なるけがから復活して以降は充実した歩みに映りますが、実際はかなり苦しんでいたようです。 29試合に出場した昨季は予選落ちが17試合。昨年のこの大会から5試合連続で予選落ちを喫すると、ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ「コラレス-」で6位。し...
2022/02/01進藤大典ヤーデージブック

最終日最終組でもう一度 ジェイソン・デイの復活が見たい

「ファーマーズインシュランスオープン」はルーク・リストが初優勝を飾りました。ルーキーだった2013年にドライビングディスタンスで1位(306.3yd)に輝くなど、早くから注目された長距離砲。37歳となった今季も全体7位(316.7yd)につける飛距離を武器にツアー屈指のロングコースで知られるトリーパインズを攻略しました。 最終組から8組前と比較的プレッシャーもかからない位置で伸び伸びと「66」をマーク。昨季の新人王ウィル・ザラトリスをプレーオフで破るドラマは、遅咲きのキャリアを彩る感動的なシーンとなりました。 17年にこの大会でツアー初タイトルを掲げ、昨年6月に当地で開催された「全米オープン」...
2020/08/05進藤大典ヤーデージブック

5年前はパー5 今大会は最長500yd超え折り返しのパー4に

TPCハーディングパーク 9番パー4(515yd) 今回の「全米プロゴルフ選手権」がメジャー初開催となるTPCハーディングパークは、2015年に「WGCキャデラックマッチプレー」の舞台となったコースです。09年には「プレジデンツカップ」も行われており、松山英樹選手とともにWGCに挑んだ際は、その「プレジデンツカップ」のホールロケーションなどを参考データとして持ち込みました。 しかし、実際には2つの大会で異なるピン位置を採用したホールもあり、肝を冷やしたことを覚えています。世界ランキング1位のジャスティン・トーマスは先週、このコースについて事前情報を持ち合わせていないとコメントしていましたが、プ...
2020/08/04進藤大典ヤーデージブック

仕事は膨大、勝つ喜びは無限大 世界一決定戦メジャーの舞台裏

いよいよ「全米プロゴルフ選手権」が始まります。来月には「全米オープン」、11月には「マスターズ」が開催されますが、この2試合は2020-21年シーズンの試合にカテゴライズされていますから、今季唯一のメジャーということになります。 会場はカリフォルニア州のTPCハーディングパーク。早速ピックアップホールの解説…に移りたいところですが、せっかくの今シーズン1試合限りのメジャートーナメント。まずは僕自身が松山英樹選手のキャディとして目の当たりにしてきた、世界一を決める舞台の裏側を振り返ってみたいと思います。 特にことしは各ツアーが何カ月ものシーズン中断を強いられ、世界中のトッププロが、ここに照準を合...
2020/08/06進藤大典ヤーデージブック

栄光への最終関門 優勝争いならリスク覚悟の大勝負も

TPCハーディングパーク 18番パー4(480yd) 今季唯一のメジャー「全米プロゴルフ選手権」が、いよいよ6日(木)に開幕します。前半の難所となる9番に続いて見ていくのは、フィニッシングホールの18番。2015年に「WGCキャデラックマッチプレー」が開催されたときは14番だったミドルホールが、夢舞台のフィナーレを飾ります。 左ドッグレッグの左サイドはグリーンまで湖が広がっています。ティショットは、正面のフェアウェイバンカーに向かってレイアップするのが基本的なプラン。とはいえ、左のペナルティエリアを避けて右に逃げれば逃げるほど、2打目に残る距離は長くなります。勝負どころではリスクを承知の上で...
2020/08/19進藤大典ヤーデージブック

女子メジャー初開催 “全英一短い”難関ポステージスタンプ

ロイヤルトゥルーンGC 8番パー3(114yd) 2001年に「全英女子オープン」(現AIG女子オープン)がメジャーに昇格して以降、昨年までに13回が過去男子の「全英オープン」を開催したコースで行われてきました。ターンベリー、ロイヤルリザム&セントアンズ、ロイヤルバークデール、セントアンドリュース オールドコース、カーヌスティ、ロイヤルリバプール…ことしはロイヤルトゥルーンがそのリストに加わります。 松山英樹選手のキャディとして挑んだロイヤルトゥルーン開催の2016年は壮絶な大会でした。目まぐるしく変わる天候は、「1日の中に四季がある」と言われるスコットランドならでは。時に海風が突風のように吹...
2020/08/20進藤大典ヤーデージブック

16億円争奪サバイバルがスタート デシャンボーならバンカーは関係なし?

TPCボストン 18番パー5(530yd) PGAツアーのシーズンを締めくくるプレーオフが始まります。1500万ドル(約16億円)という夢の超ビッグボーナスをかけたシリーズは昨季から全3試合に変更され、1年ごとにニューヨークエリアと入れ替えることになった初戦「ザ・ノーザントラスト」の舞台も今季はTPCボストンの番。4試合制だったときは第2戦を開催していました。 ボストンから南へ60㎞ほどの場所にあり、この時期は空気もカラッとしていて過ごしやすい気候です。ショットメーカー向きのコースは、フェアウェイキープ、そして何よりアイアンの精度がキーとなります。グリーン自体は小さくないですが、硬い上にアンジ...
2020/08/13進藤大典ヤーデージブック

暑い! 長い! パー3 ティショットは5Wも

セッジフィールドCC 12番パー3(235yd) PGAツアーのレギュラーシーズンも、いよいよ最終戦です。舞台はとにかく暑いノースカロライナ州グリーンズボロ。カリフォルニア州での「全米プロゴルフ選手権」は連日気温15度前後の中でのプレーでしたから、3時間の時差も重なり、連戦の選手はタフさが求められます。飛距離が伸びてショットの番手も、ひと番手は変わるため、対応力が試されます。 2013年に松山英樹選手が主催者推薦で出場してノンメンバーからシード獲得を決めた、僕にとっても印象深い試合です。例年プレーオフ直前の試合ということでスキップするトップ選手も少なくない中、世界トップクラスの仲間入りを果たし...
2021/03/30進藤大典ヤーデージブック

色あせない2013年「全米オープン」 ビリー・ホーシェルは“超ポジティブ”

松山英樹選手のプロ入り後初の海外遠征となった、2013年「全米オープン」予選ラウンドのことです。舞台はメリオンGC。ビリー・ホーシェル、ジョーダン・スピースとの若手注目株3人のペアリングでした。 ホーシェルはその年の「チューリッヒクラシック」で初優勝を飾ったばかり。フロリダ大でもトップアマチュアとして鳴らした素晴らしい選手とは聞いていましたが、実際のプレーは想像以上。アイアンショットの衝撃は、いまも脳裏に焼き付いています。 ターゲットに向かって、めくれ上がるようなスピンの利いたショットを繰り出すボールストライカー。アスファルトのような硬いグリーンにだってボールを止めてしまうのではないかと思うほ...
2021/12/07進藤大典ヤーデージブック

【進藤コラム番外編】ジュニア大会を初開催 ステーブルフォード方式で学ぶ、攻める気持ちとゴルフの楽しさ

「ジュニアトーナメントを開催する」――。いま思えば荒唐無稽ではありましたが、それが今年の僕の目標でした。日本、米国でキャディとしてプロツアーに参加した経験をもとに、いずれ世界へとつながる理念を掲げる大会を開きたい。日本の男女のゴルファーが素晴らしい活躍を見せてくれた2021年は、個人的にはそんなプランを具体化させるのに奔走した一年でもあったのです。 そして、去る11月27日。多くの方々の協力のおかけで、中高生男女を対象にした大会「ステーブルフォード ジュニアチャレンジ トーナメント2021」を実施することができました。会場の千葉県・成田ヒルズカントリークラブは当日天候にも恵まれ、大会を終えられ...
2021/05/25進藤大典ヤーデージブック

23年前にもらったサイン ミケルソンはファンを愛し、ファンに愛される

大会前、どれだけの人がこの結末を予想できたでしょうか。50歳がメジャーで勝つという史上初の大偉業。フィル・ミケルソンは誰にもできなかったことをやってのけたのです。 興奮のるつぼと化した18番グリーンで見せた静かなガッツポーズ。2004年「マスターズ」制覇の瞬間に見せた大ジャンプを筆頭に、本来は感情表現の豊かな選手です。それだけ必死に高ぶる自分を抑えて戦っていたのだと思います。 2日目でトップタイに並び、3日目には単独のトーナメントリーダーに。しかし、振り返ればメジャーで驚異的な勝負強さを見せてきたブルックス・ケプカが忍び寄り、「マスターズ」を勝ったばかりの松山英樹選手をはじめ、若く脂の乗った猛...
2021/05/18進藤大典ヤーデージブック

松山英樹も「別格」とうなったアマ時代 イ・キョンフンの夢を追う覚悟

「AT&Tバイロン・ネルソン」でPGAツアー初優勝を飾ったイ・キョンフン(韓国)。米国でシードを手にしたのは2019年でしたから、僕の中では日本ツアーで戦っていたときのことが記憶を占めています。 人懐っこい笑顔であいさつをしてくれる姿が印象的。歌うことが大好きで、プロゴルファーになるか歌手になるか悩んだほどだったとか。日本語も堪能なお父さんが付きっきりで転戦をサポートし、一人息子を大事にしている様子も伝わってきました。 ツアー仲間に聞いても「怒っているのを見たことがない」と口をそろえる好青年。ソフトな雰囲気をまとう一方、選手としては二十歳そこそこだった当時から“本格派”のにおいがこれでもかと漂...
2020/07/16進藤大典ヤーデージブック

最終日は池ポチャだった 2014年初Vの記憶

ミュアフィールドビレッジGC 16番パー3(201yd) PGAツアーが2週連続同じコースでトーナメントを開催するのは、1957年以来のことだそうです。新型コロナウイルスの感染拡大でまったく先の読めない状況下、ツアーも選手たちのためにあらゆる手段を講じています。 そんな異例のミュアフィールドビレッジGC2連戦の2試合目は「ザ・メモリアルトーナメント」。ジャック・ニクラスがホストを務める格式高い一戦です。 基本的に選手とキャディ、コーチ以外の練習場入場を禁じるなど、オーガスタナショナルに通じるコンセプトが随所に感じられます。キャディが白い上着を身にまとい、緑と白のコントラストが大会を彩るのも、...
2020/09/04進藤大典ヤーデージブック

出るだけですごい最終戦 マキロイが10億円つかんだ16番

イーストレイクGC 16番パー4 (454yd) プレーオフシリーズ最終戦「ツアー選手権」は30人のみが立つことを許される舞台です。出場者には翌年のメジャー、ことしに限っては本来ツアー優勝者のみで争われる1月「セントリートーナメントofチャンピオンズ」の切符なども与えられます。 まさに出ることが、これ以上ないステータス。前週「BMW選手権」最終日の最終18番、滑り込みで初出場を決めるパットを入れたマッケンジー・ヒューズ(カナダ)が「ゴルフ人生最大のプレッシャーを乗り越えた」と優勝したかのように喜んでいたのは、決して大げさではないのです。そして、そのエリートフィールドに米ツアー参戦から出続けてい...
2020/06/18進藤大典ヤーデージブック

大西洋を望む狭小グリーン 小平智が初V決めた17番

ハーバータウンGL 17番パー3(174yd) PGAツアーが再開しました。これまで当たり前のように毎週開催していたトーナメントが3カ月なかった分、ありがたみを実感します。陽性者が出たという情報もないようで、まずはひと安心。予断は許しませんが、世界中のスポーツ界が少しずつでも動き出してくれていったらと願っています。 再開2戦目の今週は、いよいよ松山英樹選手も出場します。「RBCヘリテージ」はルーキーだった2014年以来の参戦です。このハーバータウンGLは、ひと言で表現してしまえば“日本っぽい”コース。木々でセパレートされたホールのフェアウェイは狭く、グリーンも極めて小さい。林間コースで、風の...
2021/04/27進藤大典ヤーデージブック

米国選抜打倒のキーマン “ダブルス巧者”そろう豪州&南ア

PGAツアー唯一のダブルス戦「チューリッヒクラシック・オブ・ニューオーリンズ」をマーク・レイシュマンとキャメロン・スミスのオーストラリアコンビが制しました。 松山英樹選手のキャディとして何度か経験したダブルス戦。世界選抜と米国選抜の対抗戦「プレジデンツカップ」、石川遼選手との同学年ペアで挑んだ2016年「ワールドカップ」、17年には谷原秀人選手とのチームでこの試合にも出場しました。その17年大会でヨナス・ブリクスト(スウェーデン)とともにツアー初優勝を飾ったのがスミスでした。 ダブルス戦でもっとも大事なのは、ボギーを打たないこと。そこに“打順”の要素も絡んでくるのが、このフォーマットならでは...
2020/11/12進藤大典ヤーデージブック

コブさえなければ…オーガスタ8番で試される“ショートする勇気”

オーガスタナショナルGC 8番パー5 (570yd) ゴルフの祭典と称される「マスターズ」が12日(木)に開幕します。コロナ禍にあって、11月開催もパトロン不在も大会史上初めてという異例の4日間。見慣れない秋のオーガスタとともに注目されるのが、9月の今季メジャー初戦「全米オープン」を自慢の飛距離で制圧したブライソン・デシャンボー選手のプレーでしょう。規格外のパワーが新たな攻略法を生み出すのか――。3つのホールをピックアップします。(解説・進藤大典) オーガスタにあるパー5は4つ。前回紹介した2番をはじめ、いずれもスコアを伸ばしていきたいホールです。1942年から昨年大会までの通算データでも、ホ...