2022/08/02進藤大典ヤーデージブック

273年も続いた“女人禁制” 夢舞台の厳しさを垣間見たミュアフィールド17番

海の向こうからうれしいニュースが届きました。「スコットランド女子オープン」で古江彩佳選手が優勝。最終日「62」をマークする圧巻の内容でした。海外に本格参戦して1年目で勝てたことには大きな意味があります。 松山英樹選手がそうであったように、多くの選手や関係者に一目置かれ、居場所を作りやすくなる。例えば予選ラウンドのペアリングも上位選手と組む機会が増えると思いますし、どんどん“環境”も良くなっていくはず。米国で先輩となる畑岡奈紗選手や笹生優花選手、同じくルーキーの渋野日向子選手はもちろん、日本人選手全体に大きな刺激をもたらしてくれる1勝といえます。 このコーナーも特別編として、古江選手をはじめ12...
2022/07/19進藤大典ヤーデージブック

ただ一人の全メジャートップ10入り “成熟”マキロイこそウッズの後継者

キャメロン・スミス(オーストラリア)が今季メジャー最終戦「全英オープン」を制しました。今季ブレークした選手と言えば、ツアー初優勝から世界ランキング1位到達、そして「マスターズ」制覇と破竹の勢いをみせるスコッティ・シェフラーが真っ先に思い浮かぶところですが、こちらも負けていません。 1月のハワイではツアー新記録となる通算34アンダーで優勝。“第5のメジャー”と称される「ザ・プレーヤーズ選手権」制覇に続き、聖地セントアンドリュースでコースレコードのトータル20アンダーとして初のメジャータイトルをつかみました。同一年のプレーヤーズと全英の2冠はジャック・ニクラス(1978年)以来となる史上2人目。ま...
2022/06/08進藤大典ヤーデージブック

飛距離にビックリ 全米女子で光ったアマ馬場咲希のポテンシャル

毎週PGAツアーのホットな話題をピックアップする本コーナー。今回は特別編として「全米女子オープン」について触れさせてください。 舞台となったのは、名匠ドナルド・ロス設計のノースカロライナ州パインニードルズ・ロッジ&GC。2014年に史上初の男女同会場での連続開催となったパインハーストNo.2とよく似たコースです。パインハーストといえば、少しでも外せばどこまでも転がっていってしまいそうな傾斜に守られた砲台グリーンが特徴。ひとつのミスがボギーどころか致命傷になりかねない、非常にタフなコースです。 パインニードルズもポイントはやはり共通していました。一見フェアウェイはワイドでラフもありませんが、フェ...
2022/06/14進藤大典ヤーデージブック

【進藤大典キャディ解説】“本物”だったマキロイ 新リーグのカギは?

今週はメジャー第3戦「全米オープン」が開催。本来ならゴルファー世界一を決めるトーナメント一色に染まりそうなものですが、ことしはそういうワケにもいかない事情があります。前週初戦が行われたばかりの「リブゴルフ・インビテーショナルシリーズ」を巡ってPGAツアーと新リーグ側の対立が深まっているのですから。 話題先行の感があった新リーグ。映像で見る限り、スタンドや看板といった会場の雰囲気は“お金がかかっているな”という印象。ギャラリーも数多く入って盛り上がっていました。そして、なんといっても巨額の賞金。個人戦と団体戦で優勝したシャール・シュワルツェル(南アフリカ)は475万ドル(約6億4560万円)もの...
2022/06/21進藤大典ヤーデージブック

レジェンドキャディの涙 全米オープンは“2人”の初優勝だった【進藤大典キャディ解説】

マシュー・フィッツパトリック(イングランド)が「全米オープン」でメジャー初優勝を遂げました。PGAツアー106試合目での初タイトル。今季のスタッツを見渡すと、“満を持して”といった印象も受けます。全米オープン前の時点で出場14試合のうちトップ10入りが7度。スコア貢献度を示す「ストロークゲインド」でもただ一人、ティショット、アイアン(グリーンを狙うショット)、アプローチ、パッティングと4つのカテゴリー全てで部門別25位以内にランクイン。隠れた絶好調男だったのです。 アマチュア時代の輝かしい実績の数々のひとつが2013年「全米アマ」優勝。くしくも会場は今回の全米オープンと同じザ・カントリークラブ...
2022/09/28進藤大典ヤーデージブック

気配りもすごい“完璧超人” アダム・スコットは将来の世界選抜キャプテン候補

「プレジデンツカップ」が米国選抜の9大会連続勝利で幕を閉じました。相手のホームで奮闘する世界選抜のチーム最年少20歳のキム・ジュヒョン(韓国)を見て、松山英樹選手が初出場した2013年大会を思い出しました。 当時も例年「ザ・メモリアルトーナメント」が行われるオハイオ州ミュアフィールドビレッジGCが舞台でしたから、毎ホールでUSAコールが響いているような感覚。ずっと耳にこびりついて夜に眠るのが大変だったくらいで、これが“アウェーの洗礼”なのかと思ったものです(笑)そして、タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンといった超がつくスーパースターを擁する相手と対戦する緊張感も、それまで経験したことがないレ...
2022/05/17進藤大典ヤーデージブック

【進藤大典キャディ解説】松山英樹、スピース…全米プロはハイレベルな一戦に

メジャー第2戦「全米プロゴルフ選手権」が目前に迫ってきました。サザンヒルズCCは過去7回メジャーをホストし、2030年の全米プロの舞台にも決まっているオクラホマ州のプライベートコース。19年に改修を挟んでいますが、これまでのメジャーで最も優勝スコアが出た年でも94年にニック・プライス(ジンバブエ)が制した全米プロの通算11アンダー。タイガー・ウッズが制した前回07年大会もトータル8アンダーとタフなコースなのは間違いありません。 フィールドを見渡せば、世界ランキング上位の実力者が順当に調子を上げている印象で、ハイレベルな戦いが期待できそう。世界ランクの上位11人で今季優勝がないのは、コリン・モリ...
2022/04/13進藤大典ヤーデージブック

タイガー・ウッズはジャック・ニクラスのメジャー18勝を超えられるか

ゴルフの祭典はスコッティ・シェフラーのメジャー初優勝で幕を閉じました。世界ランキング1位の選手による「マスターズ」制覇はイアン・ウーズナム(ウェールズ、1991年)、フレッド・カプルス(92年)、タイガー・ウッズ(2001、02年)、ダスティン・ジョンソン(20年)に続く6回目(5人目)。ナンバーワンプレーヤーであっても、世界中から名手が集うオーガスタで勝ち切るのが容易ではないことを示しています。 初タイトルとなった2月「WMフェニックスオープン」から6戦4勝。やはり勢いのあるキャメロン・スミス(オーストラリア)との最終日最終組で際立ったのは総合力の高さでしたね。 4日間のフェアウェイキープ率...
2022/04/19進藤大典ヤーデージブック

スピースが「全米プロ」へ視界良好 生涯グランドスラムに近いのは

ジョーダン・スピースが「RBCヘリテージ」で通算13勝目を挙げました。2018年に小平智選手が優勝を飾ったサウスカロライナ州ハーバータウンGLは距離こそ短め(7121yd、パー71)ですが、フェアウェイは狭く、グリーンもコンパクト。せり出した木の枝による“空中のハザード”もあり、ショットメーカー向きのコースです。 2月「AT&Tペブルビーチプロアマ」で優勝争いの末に2位となった以外はいまひとつだったスピース。前週は「マスターズ」でまさかの予選落ち。15年に優勝し、過去8回の出場でトップ3フィニッシュ5回と抜群の相性を誇るはずのオーガスタで初めて決勝ラウンドへ進むことができませんでした。 栄光の...
2022/05/25進藤大典ヤーデージブック

トーマスの7打差大逆転は“人生最高のボギー”から始まった【進藤大典キャディ解説】

ジャスティン・トーマスが2017年大会以来となる「全米プロゴルフ選手権」2勝目を飾りました。オクラホマ州サザンヒルズCCでは過去7回メジャーが開催され、7回とも54ホール終了時点で首位に立った選手が優勝。それを打ち破る7打差からの大逆転劇。1978年のジョン・マハフィーに並ぶ大会レコードでもありました。 トーマスが優勝した17年大会、僕は松山英樹選手のキャディとして最終日同組でプレーを見ていました。それまでも幾度となく競り合う機会があった“ライバル”。タイガー・ウッズやロリー・マキロイ(北アイルランド)は一挙手一投足からにじみ出る圧倒的な自信が、こちらにプレッシャーを与えてくるような雰囲気すら...
2022/05/10進藤大典ヤーデージブック

マックス・ホマに宿る確かな自信【進藤大典キャディ解説】

マックス・ホマが「ウェルズファーゴ選手権」を逆転で制しました。2021-22年シーズン開幕戦「フォーティネット選手権」に続く今季2勝目。シーズン複数回優勝は松山英樹選手、スコッティ・シェフラー(4勝)、キャメロン・スミス、サム・バーンズ(達成順)に続く5人目となりました。 通算8アンダーと優勝スコアが2桁アンダーに届かなかったのは、3月「アーノルド・パーマー招待」(通算5アンダー)に続く今季2度目。大会3勝のロリー・マキロイ(北アイルランド)らも苦しめた悪天候のタフなコンディションを乗り切ってみせました。 例年ノースカロライナ州クエイルホロークラブ(22年は9月「プレジデンツカップ」の開催コー...
2022/05/03進藤大典ヤーデージブック

“本命”が今季初優勝 ジョン・ラームのすごさとは/進藤大典キャディ解説

ジョン・ラーム(スペイン)が「メキシコオープン」で今季初優勝を飾りました。6シーズン連続の勝利でツアー通算7勝目。DPワールドツアー(欧州ツアー)6勝、ツアー外の2018年「ヒーローワールドチャレンジ」を含めても、初日から首位を守る完全優勝は意外なことにキャリア初でした。 PGAツアーの公式サイトでは、試合ごとに優勝候補予想「パワーランキング」が公開されています。この大会で1番手に推されていたのがラーム。昨年9月に始まった2021-22年シーズン28試合目(対抗戦、ツアー外競技は除く)にして、V候補筆頭の“初勝利”でもありました。世界中から才能が集まる最高峰の舞台。全盛期のタイガー・ウッズは別...
2022/04/26進藤大典ヤーデージブック

年間王者と金メダリストがダブルス戦Vから本領発揮へ

ツアー唯一のダブルス戦「チューリッヒクラシックofニューオーリンズ」をパトリック・カントレーとザンダー・シャウフェレのペアが制しました。大会レコードの通算29アンダー(259ストローク)で初日から首位を譲らない完全優勝でした。 カリフォルニア州で生まれ育ち、カントレーが30歳、シャウフェレが28歳と年齢も近い2人。2019年「プレジデンツカップ」、昨年「ライダーカップ」と対抗戦でペアマッチが行われたときは必ずコンビを組んでいました。実力、チームワークとも申し分なし。この大会でのタッグは前年(11位)に続く2度目でしたが、“テッパン”の組み合わせだったといえるでしょう。 初日と3日目がフォアボー...
2022/04/05進藤大典ヤーデージブック

オーガスタはタイガー・ウッズが最高に映える場所

J.J.スポーンが前週「バレロテキサスオープン」で初優勝を飾り、7日(木)に開幕する「マスターズ」の最後の1枠を手中に収めました。これでフィールドが出そろった…と言いたいところですが、ことしに限っては状況が特殊です。昨年2月の自動車事故で大けがを負ったタイガー・ウッズが復帰する可能性があるのですから。 練習日とはいえ、オーガスタでボールを打つウッズの映像を見てテンションが上がったのは僕だけではないでしょう。いろいろなトーナメントで戦う様子はもちろん、アドレナリン全開で優勝する瞬間だって何度も目撃してきました。その中でもオーガスタでのウッズは別格。彼がコースにいるだけでパトロンの熱量が一気に上が...
2022/03/22進藤大典ヤーデージブック

世界11位でも物足りない? ダスティン・ジョンソンは不調なのか

サム・バーンズが「バルスパー選手権」で大会連覇を成し遂げ、自己最高に並ぶ世界ランキング10位に浮上しました。初優勝から1年も経たないうちに3勝目を挙げた25歳によってはじき出される形となったのがダスティン・ジョンソン。PGAツアー300試合出場という節目の一戦を39位で終えていた元世界ナンバーワンが、2015年3月以来7年ぶりにランクトップ10を外れることになったのです。 世界ランク1位に君臨した期間(135週)はタイガー・ウッズ(683週)、グレッグ・ノーマン(オーストラリア、331週)に次ぐ3番目。出場300試合のうちトップ10入り113試合というのも、世界最高峰のツアーにあって驚異的な記...
2022/03/29進藤大典ヤーデージブック

いま最も勢いがある男 シェフラーのロールモデルはスピース先輩

いま世界で最も勢いのある選手と言って良いでしょう。スコッティ・シェフラーが一気に世界ランキング1位まで上り詰めました。6週前の「WMフェニックスオープン」でようやく初優勝の壁を破ってからは、まさに破竹の勢い。3週前の「アーノルド・パーマー招待」で2勝目、そして「WGCデルテクノロジーズ・マッチプレー」で3勝目。本コーナーでも、この短期間で立て続けにシェフラーを取り上げることになるとは思ってもみませんでした(笑) 金谷拓実選手が世界ランクで自身より上位の選手に競り勝っていったように、番狂わせも起きやすいマッチプレー方式。世界ランク5位で大会に臨んだシェフラーも2日目にトミー・フリートウッド(イ...
2022/03/16進藤大典ヤーデージブック

強気の裏に緻密な計算? キャメロン・スミスが18番で1Wを握ったワケは

キャメロン・スミス(オーストラリア)が乗りに乗っています。2022年の初戦だった1月「セントリートーナメントofチャンピオンズ」で1950年以降のPGAツアーで最多アンダーパー記録となる通算34アンダーで優勝。そして、第5のメジャー「ザ・プレーヤーズ選手権」の頂点に立ちました。 もともと正確なアイアンショットとショートゲームに定評のあった選手。今季トップ10フィニッシュ4回は、スコッティ・シェフラーの5回に次ぐ2番目で松山英樹選手らと並ぶ数字です。自分のゴルフに対する自信も、どんどん深まってきているはず。強気でアグレッシブなプレーに磨きがかかってきた感があります。 それが顕著に出ていたのが優勝...
2022/03/01進藤大典ヤーデージブック

4000キロ超の連戦 西海岸→東海岸が大変なワケ

これも“PGAツアーあるある”と言ってもいいのかもしれません。前週「ジェネシス招待」で西海岸シリーズがひと区切りを迎え、翌週「ザ・ホンダクラシック」からフロリダスイングがスタート。選手によってスケジュールもさまざまとはいえ、連戦なら4000㎞を超える距離を移動しての戦いとなります。 試合はダニエル・バーガーが最終日、5打差を守れずに逆転負け。18ホールのうち15ホールで池が絡むPGAナショナルのチャンピオンコースはフロリダ特有の強風も相まって、どんなにリードがあっても気が抜けない難関です。最終盤には猛烈な雨も降ってタイトルの行方が混沌とする中、セップ・ストラカがオーストリア勢として初優勝をつか...
2022/02/22進藤大典ヤーデージブック

37年も破られぬ記録 難関リビエラはウッズ未勝利の地

ホアキン・ニーマン(チリ)が「ジェネシス招待」でツアー2勝目を飾りました。この大会で初日から首位を守る完全優勝は、1969年のチャーリー・シフォード以来となる快挙。弱冠20歳でチリ勢初のPGAツアー優勝を成し遂げてから約2年5カ月。新たな勲章が加わりました。 目を疑ったのは予選ラウンド終了時のスコアです。立て続けに「63」をたたき出して通算16アンダー。にわかには信じられませんでした。この大会の最多アンダーパー(72ホール)は、1985年にラニー・ワドキンスがマークした20アンダー。1980年以降のツアートーナメントで最も長く残っている記録なのですから。 いまどきのゴルフ場としては珍しく池がひ...
2022/03/08進藤大典ヤーデージブック

マキロイも疲労困憊 ベイヒルのハードセッティングを紐解く

ことしの「アーノルド・パーマー招待」は、あの「全米オープン」が引き合いに出されるほどの超ハードセッティングとなりました。ただでさえ深いラフが厄介なベイヒル。グリーンは日を追うごとにどんどん硬く、速くなって選手たちを翻弄。最終日のフィールド平均スコアは2年続けて「75」を超える数値まで跳ね上がりました。 優勝したスコッティ・シェフラーも、やはりサンデーバックナインはピンチの連続。追い込まれているはずの状況でも、キャディのテッド・スコットさんと2人で醸し出す雰囲気が抜群に良く、タフな戦いを楽しんでいるかのような明るい表情が印象的でした。テキサス育ちで「硬い」「速い」に加えて強い風も吹く“三重苦”は...