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進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

団体戦とショットガン LIVゴルフを考える

サウジアラビアの資金を背景にした新リーグ「LIV招待」が、ついに北米で開催されました。“ホームグラウンド”に乗り込んできた相手に対し、PGAツアーも黙ってはいません。第2戦の開幕直前というタイミングで狙い撃ちするかのように、欧州ツアー(DPワールドツアー)との戦略的な提携を大幅に強化することを発表しました。

新リーグは今年の8試合から来年14試合に増えるとのことですが、定着は世界ランキングのポイントを獲得できる道筋をつけられるかどうかにかかっているでしょう。フィル・ミケルソンダスティン・ジョンソン、新たに加わったブルックス・ケプカブライソン・デシャンボー…ゴルフ界のスーパースターたちが、巨額の報酬と引き換えにメジャーのひのき舞台から遠ざかっていくことになるとすれば、寂しすぎます。

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欧州ではすでにツアーと新リーグ参加選手の“法廷闘争”が始まりました。この先の展開は見守ることしかできませんから、ここまで2試合を見て、自分なりに感じたことを書きたいと思います。

第2戦の会場だったオレゴン州は男子の主要トーナメントを開催している地域ではなく、近隣でもワシントン州のチェンバーズベイGCがホストした2015年「全米オープン」が最後。トップレベルの試合に飢えているという点ではもっと盛り上がってもおかしくなかったはず。PGAツアーにはまだまだ及ばない印象です。もちろん新リーグ自体、幅広く認知されていくのはこれからだと思いますし、今後何年も同じ場所で試合を行うことで地元との結びつきが強まって一大イベントに成長していく可能性は秘めています。

独特なフォーマットは今後ブラッシュアップされていくのではないか、というのが個人的な見解です。“売り”のひとつである団体戦は各選手のスコアの足し算。ライダーカップやプレジデンツカップのようにどの選手同士を組ませるか、相手のペアに自軍の誰をぶつけるか、といった戦略的な要素が出てくるとチームキャプテンの存在感も増し、個人戦と違った面白さを演出できるのではないでしょうか。優勝賞金も個人戦の400万ドル(約5億4000万円)に対し、団体戦は300万ドルで一人当たり75万ドル(約1億130万円)と開きがありすぎるのも、リーグ自ら価値を下げている気がします。

各組が一斉にスタートするショットガン(最終日のみ首位の選手がいる最終組が11分遅れでティオフ)も目まぐるしくスコアが動く楽しさはあります。しかし、ゴルフコースは本来1番から18番にかけてドラマを紡ぐために設計者が考え抜いて作ったもの。2つのコースからいくつかのホールをピックアップしてトーナメントを行う場合も同様。例えば、いきなり13番から出た選手の優勝争いが手に汗握る展開となるのかというのは実際に見てみたいところです。

プレーの内容ではなく、誰がビッグマネーを手にしたのかという“結果”のみにフォーカスされているのが現状です。同週開催のPGAツアー「ジョンディアクラシック」は出場選手のネームバリューこそLIV招待に及びませんでしたが、優勝したJ.T.ポストンの涙は最終日のみならず、初優勝した2019年「ウィンダム選手権」からの歩みを物語るものでした。

高額賞金だけでなく予選カットのない54ホール競技、ゆとりある試合日程と選手にとって魅力たっぷりの新リーグが立ち上がったこと自体はマイナス面ばかりではないと思います。一方でPGAツアーのコミッショナー、ジェイ・モナハン氏の「エキシビションマッチ」という言葉を現時点で全否定できないのも確か。そこから脱却するためには、ファンを惹きつける熱い戦いを提供するほかありません。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

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