松山英樹はマキロイ、シャウフェレと同組/全米オープン予選ラウンド組み合わせ
2022年 全米オープン
期間:06/16〜06/19 場所:ザ・カントリークラブ(マサチューセッツ州)
【進藤大典キャディ解説】“本物”だったマキロイ 新リーグのカギは?
今週はメジャー第3戦「全米オープン」が開催。本来ならゴルファー世界一を決めるトーナメント一色に染まりそうなものですが、ことしはそういうワケにもいかない事情があります。前週初戦が行われたばかりの「リブゴルフ・インビテーショナルシリーズ」を巡ってPGAツアーと新リーグ側の対立が深まっているのですから。
話題先行の感があった新リーグ。映像で見る限り、スタンドや看板といった会場の雰囲気は“お金がかかっているな”という印象。ギャラリーも数多く入って盛り上がっていました。そして、なんといっても巨額の賞金。個人戦と団体戦で優勝したシャール・シュワルツェル(南アフリカ)は475万ドル(約6億4560万円)ものビッグマネーを獲得しました。
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PGAツアーの“”縄張り”ともいうべき北米での開催となる第2戦にはブライソン・デシャンボーやパトリック・リードも出場予定。実際にシュワルツェルが大金をつかんだことで、新リーグ最大の魅力は選手たちに現実味を帯びて伝わったはず。PGAツアーから選手が流出する状況はしばらく続くのではないか、というのが個人的な見立てです。
来年以降は試合数が増えていくといっても、年間8試合しかないのは気になるところ。実戦で腕を磨く機会が減れば、それだけ技術的な向上を望むのも難しくなりますし、そもそも予選落ちなしの3日間54ホール競技。選手にとって必ず賞金が手に入る安心感と引き換えに、予選カットラインのプレッシャーと向き合いながらプレーする機会を失うことになります。
現時点で「全米オープン」や来月「全英オープン」といったメジャー出場は可能。しかし、世界ランキングポイントの加算がない状況が続けば、過去に優勝したメジャー以外の出場資格を満たすことも難しくなってしまう。新リーグとつながりが深いアジアンツアーが受け皿として名乗りを上げていますが、ダスティン・ジョンソンらは欧州ツアー(DPワールドツアー)の対応に期待を寄せているとの報道もあります。
ファン目線でいえば、話題性、フォーマットの目新しさ以上にレベルの高い戦いが見られるかどうかに尽きると思います。30人だけが出られるシーズン最終戦「ツアー選手権」に13年連続で進出しているジョンソンは、前週時点でフェデックスカップポイントランキング96位。8年連続のリードも同61位と今ひとつで、新リーグ初戦を制したシュワルツェルに至っては155位とシード確保も危ぶまれる位置にいました。フィル・ミケルソン、セルヒオ・ガルシア(スペイン)といったビッグネーム、これから加わる選手たちがしのぎを削ることで、どれだけしびれる勝負を披露できるかが大きなポイントになるでしょう。
「RBCカナディアンオープン」でロリー・マキロイ(北アイルランド)が見せてくれたプレーは“本物”でした。ジャスティン・トーマス、トニー・フィナウといった目の前のライバルを最後の最後で突き放していく、手に汗握る展開。最終18番でギャラリーがフェアウェイまでなだれ込む光景は圧倒的な熱量を感じさせてくれました。数々の名選手、そしてタイガー・ウッズが築き上げたものはレガシーとして受け継がれています。
PGAツアーとの対立の行方は心配ですが、新リーグの出現によって転換期を迎えているゴルフ界の変化は加速していくことになるかもしれません。まずはPGAツアーメンバーも、新リーグ入りを決めた選手も一堂に会する全米オープン。“本物”の戦いを見守りましょう。(解説・進藤大典)
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。