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2022年 ザ・プレーヤーズ選手権
期間:03/10〜03/13 場所:TPCソーグラス(フロリダ州)
強気の裏に緻密な計算? キャメロン・スミスが18番で1Wを握ったワケは
キャメロン・スミス(オーストラリア)が乗りに乗っています。2022年の初戦だった1月「セントリートーナメントofチャンピオンズ」で1950年以降のPGAツアーで最多アンダーパー記録となる通算34アンダーで優勝。そして、第5のメジャー「ザ・プレーヤーズ選手権」の頂点に立ちました。
もともと正確なアイアンショットとショートゲームに定評のあった選手。今季トップ10フィニッシュ4回は、スコッティ・シェフラーの5回に次ぐ2番目で松山英樹選手らと並ぶ数字です。自分のゴルフに対する自信も、どんどん深まってきているはず。強気でアグレッシブなプレーに磨きがかかってきた感があります。
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それが顕著に出ていたのが優勝争いの最終盤。単独首位で迎えたアイランドグリーンの名物17番(パー3)は、お決まりともいえる右の池のすぐそばというホールロケーション。風のジャッジもあり、わずか3ydしかない右側の狭いエリアを攻める形となったのはさすがに想定外だったようですが、ピンを狙う意思は明確でした。ヒヤリとする軌道でも冷静にボールを見送っていたのは、手に残る感触が良かった証しでしょう。
やはり自分のスタイルを貫いた18番が真骨頂。今大会もこれまで3ラウンドで2回池に入れている、間違いなくイメージが悪いホール。リードを3打に広げ、ティショットは手堅くアイアン、もしくはフェアウェイウッドかと思いきや、1Wをしっかり振り切ってきました。
「フェアウェイに刻んで逃げ切りたいという欲が出てしまうと、むしろ池に入れる可能性が高まってしまう」「それなら絶対に左にだけは曲がらない打ち方をして、右の林に入ってもボギーなら負けない」。強気の裏で、そんな計算を働かせていたように思います。結果的に右の林へ行き、さらにフェアウェイへ出そうとしたセカンドを池に入れてしまうわけですが、その後ナイスボギーにつなげた切り替えも見事でした。
パー4とパー5のティショットのスコア貢献度は「-5.189」でフィールド68位と予選通過71選手(ビリー・ホーシェルが棄権)の中ではほとんど最下位に近いスタッツ。それが逆に神がかり的なアイアンとパッティングを際立たせていましたね。
優勝会見では、やはり左ドッグレッグとなるオーガスタナショナルGCの13番(パー5)への苦手意識なども口にしていましたが、11月開催だった2020年に2位に入るなど、過去4大会で3度のトップ10入り。子どものころは父親からグレッグ・ノーマンが大逆転負けを喫した悲劇について聞かされて育ったという“ストーリー”も、なんだか「マスターズ」との相性を想起させるポイントかもしれません。ビッグタイトルをつかみ、堂々の優勝候補に挙がってくるはずです。(解説・進藤大典)
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。