ニュース

米国男子全米オープンの最新ゴルフニュースをお届け

2021年 全米オープン
期間:06/17〜06/20 場所:トーリーパインズGC(カリフォルニア州)

進藤大典 PGAツアー・ヤーデージブック読解

出来過ぎたドラマ ジョン・ラームを導いたスライスライン

まるで漫画のようなジョン・ラーム(スペイン)の優勝でした。4年前にPGAツアー初優勝を飾ったカリフォルニア州トーリーパインズGCが舞台となる「全米オープン」。妻のケリーさんにプロポーズした思い入れのあるサンディエゴ。最終日は4月に息子のケパ君が生まれて初めて迎える「父の日」。名実ともに“メジャー初優勝に一番近い男”が壁を越えるタイミングとして、これでもかと材料がそろっていました。

14日(月)にコースチェックで会場を歩いていると、ラームはブルックス・ケプカと練習ラウンド中。2週前の「ザ・メモリアルトーナメント」で後続に6打差をつけて最終日を迎えるはずが、新型コロナウイルス感染の陽性判定で棄権を余儀なくされた悲劇からの復帰戦です。最初はどんな言葉をかけたらいいか迷いました。しかし、本人はもちろん、キャディのアダム・ヘイズさんも「今週出られて良かった。開幕が待ちきれない!」。どこまでもポジティブでした。

<< 下に続く >>

昨年、パンデミックで母方の祖母が亡くなったことを明かしていました。今年2月には、スペインの地元紙で働き、ラームの才能に着目した会社のバックアップで一緒に世界を飛び回るようになったスポーツジャーナリストの方が新型コロナの影響で亡くなったそうです。大会連覇のビッグチャンスをふいにしながら前を向くことができたのは、コロナ禍で命の重さと向き合ってきたからこそかもしれません。

世界トッププレーヤーたちの力をもってしても、簡単にダブルボギーが出てしまうコース。「全米オープン」ならではの深いラフに加え、ただでさえ厄介なポアナ芝のグリーンが日に日に硬くなる超ハードセッティングでした。ケプカ、ブライソン・デシャンボーロリー・マキロイ(北アイルランド)…メジャータイトルホルダーが次々と脱落していく中でプレーは研ぎ澄まされていきました。

短気なイメージが先行しがちですが、それはほんの一部分。派手なアクションの裏でもっともマネジメントを重視し、緻密な戦略に基づいて戦う選手でもあります。

それを支えるのがヘイズさん。ルイ・ウーストハイゼン(南アフリカ)を振り切る決め手となった上がり2連続バーディ。17番、18番(パー5)とも「(セーフティな)広いエリアに打ってくれ」という相棒の注文通りのショットから、自分たちの戦い方への自信と余裕に近いものを感じました。

4年前、ラームのエージェントだったティムさんが兄であるフィル・ミケルソンのキャディを務めることになったとき、ミケルソンとの関係を解消したジム・マッケイさんが今度はラームのバッグを担ぐのでは、という憶測が広がったことがありました。このときはSNSに「これからもアダムが僕のキャディだ」と宣言する動画をアップして事態は沈静化。深い信頼で結ばれた2人です。

17番も18番も、フェードヒッターのラームにとってイメージが出やすいスライスライン。ヘイズさんはセカンドで狙う場所をリクエストする時点から、そこまでイメージが湧いていたのではないでしょうか。

プレーオフでダスティン・ジョンソンを撃破した昨年の「BMW選手権」。最後に沈めた20mの超ロングパットも強烈なスライスラインでした。極限の勝負の記憶は、正念場にふと蘇ってくることもあるのです。(解説・進藤大典)

進藤大典(しんどう・だいすけ)
1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。

関連リンク

2021年 全米オープン



あなたにおすすめ


特集

宮本卓×GDO 旅する写心
ゴルフフォトグラファー宮本卓×GDOのスペシャルコラボコンテンツ。国内外のゴルフ写真を随時更新中!!
やってみよう! フットゴルフナビ
サッカーとゴルフが融合した新スポーツ「フットゴルフ」の総合情報サイトです。広いゴルフ場でサッカーボールを蹴る爽快感を、ぜひ一度体感してみよう!

ブラインドホールで、まさかの打ち込み・打ち込まれ!!ゴルファー保険でいつのプレーも安心補償!