史上最年少の記録が2つ キム・シウーのバイオグラフィー
2021年 ザ・アメリカンエキスプレス
期間:01/21〜01/24 場所:スタジアムコース(カリフォルニア州)
“韓国版”松山英樹!? キム・シウーは練習の鬼
現在はイム・ソンジェの活躍が目覚ましい韓国勢。僕が松山英樹選手のキャディとしてPGAツアーを戦っていたときに次世代のエースと目されていた選手がいました。それが「ザ・アメリカンエキスプレス」で優勝したキム・シウーです。
2017年に「ザ・プレーヤーズ選手権」を勝ったときは、まだ21歳。史上最年少で“第5のメジャー”とも呼ばれる大舞台の頂点に立ちました。その5年前にはPGAツアーの最終予選会を史上最年少の17歳5カ月6日で通過。4年ぶりのタイトルは、どれだけすごいスピードで階段を駆け上っていたのかを実感させます。
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とにかく練習をする選手です。韓国版の松山選手と言ってもいいほどのすさまじい練習量。本人も同じアジア人として世界のトップで戦い続ける松山選手のことをリスペクトしていて、タイプも似ているように思います。
試合中の口数は少なめで喜怒哀楽を表に出さず、自分のプレーに集中する職人気質。しかし、内に秘める闘志は人一倍。後半17番でバーディを奪って優勝を引き寄せたときにも力強く拳を握っていましたね。
若くしてビッグタイトルをつかんだ爆発力の反面、もろさを感じさせる部分もありました。2019年には4月中旬から7月にかけて10試合で9度の予選落ち。翌シーズンも11月から年をまたぎ、コロナ禍でツアーが中断するまでの8試合で予選通過がわずか1試合でした。
昨年8月に初優勝した大会でもある「ウィンダム選手権」で1年ぶりのトップ10に入ってからは上り調子。持ち前の練習量に加え、コーチの指導もハマったのでしょう。スイングに安定感が出てきました。ダスティン・ジョンソンのスイングコーチでもあるクロード・ハーモンIII氏とバックスイングの軌道を中心にスイング改良に取り組み、年明けにもチェックを受けて手応えをつかんだと話しています。
今大会4日間のパーオン率81.94%はフィールド1位タイ。ボギーもわずかに2個。特に決勝ラウンドを含めてトータル54ホールをプレーしたスタジアムコースではボギーなしと抜群の安定感をみせました。
PGAウエストのスタジアムコースは、彼が17歳で突破したPGAツアー最終予選会の会場でもあります。このスタジアムコース、そして「プレーヤーズ」が行われるTPCソーグラスは、ともに昨年1月に亡くなったピート・ダイさんが手掛けたコース。伝説の設計家との相性の良さも、選手としてのポテンシャルの高さを物語っているかもしれません。
パトリック・カントレーがコースレコード「61」をたたき出して先にホールアウトし、重圧がかかる展開でも追いつき、追い越した冷静さは25歳とは思えないほど。
PGAツアーのアジア勢最多勝はK.J.チョイ(チェ・キョンジュ)さんの8勝です。松山選手のほかにも記録を超えていく可能性を秘めたプレーヤーがいる――。それを改めて証明した1勝ではないでしょうか。(解説・進藤大典)
- 進藤大典(しんどう・だいすけ)
- 1980年、京都府生まれ。高知・明徳義塾を卒業後、東北福祉大ゴルフ部時代に同級生の宮里優作のキャディを務めたことから、ツアーの世界に飛び込む。谷原秀人、片山晋呉ら男子プロと長くコンビを組んだ。2012年秋から18年まで松山英樹と専属契約を結び、PGAツアー5勝をアシストした。