2013年 マスターズ

【WORLD】R.マキロイにあふれる魅力/マスターズプレビュー

2013/04/09 11:17

Golf World(2013年4月8日号)texted by Curt Sampson

日暮れが近づき、気温も下がった為、マキロイは練習を止めた。フォロースルーの後でアイアンをくるくると回して遊ぶマキロイ。そう、ウッズのように。かと思えば自分のショットの弾道を見ながら脇道で身体を前後に曲げていた。そう、ウッズのように。

ウッズとマキロイは良き友人でもある。スキャンダル発覚後、ウッズは自分と同年代のライバル達の誰よりもマキロイと近しい関係を築いている。共に練習し、メールでも頻繁にやり取りしているようだ。世界ランキング1位にウッズが返り咲いたことを祝福するメールを送ると、ウッズも気さくな言葉でマキロイを激励。これは特別な選手同士にしか出来ないことだ。彼らは事あるごとに比較される。マキロイがウッズと大きく異なるところは、ウッズにあって自分には無い才能があると認める心の広さを持っていること。そしてウッズの後継者となるには、その“自分に無い何か”が必要となるのだろう。

「いつも言っているように、彼はゴルフコース上で最も偉大なファイターの1人」とマキロイは謙虚にコメントする。更に「どんな状況でも粘って、耐えられるんだ。それが彼の最大の長所の1つ。1日が始まって、終わる時も同じ心境のままでいられる。ひたむきな姿勢、自分自身を追い込む気持ち、モチベーションの維持。呼び名は何であれ、それが彼の素晴らしいところだと思う」と話している。

だが、マキロイにあってウッズに無いものがあるのも確かだ。それは、人だ。

果たしてマキロイが周囲の人々を離さずにいられるかどうか?ツーソンでプレーを終えると、マキロイはロープで括られていたキッドゾーンに向かい、子供達との写真撮影、サインなど何にでも応じた。視界の向こう側にある山々の色はダークグリーンからブラウン、そしてダークブルーへと変わり、不吉な雲が大型帆船のように流れていた。乾燥した土地に流れる風がマキロイの髪の毛を乱そうとしたが、失敗に終わった。

マキロイは近年、大きな決断を2つ下した。1つはタイトリストとのスポンサー契約解消。そしてイングランドを拠点としている代理人アンドリュー(チャビー)・チャンドラーとの契約解消だ。チャンドラーのインターナショナル・スポーツマネージメントとは、マキロイがイーストテネシー州立大への奨学金を断りプロに転向した時からのつき合いだった。

チャンドラーの姿はゴルフファンなら一度は姿を見かけたことがあるだろう。ダレン・クラークリー・ウェストウッド、その他クライアント(メジャー優勝のチャール・シュワルツェル、ルイ・ウーストハイゼンを含む)が優勝したシーンを見たことがあるのなら、そこにいたはずだ。身体が大きく髭面で、頭はすり鉢状ドームの骨組のような形をしている。そんな彼に以前のクライアントについて話を聞こうとしたが、「ダメだ!」と一蹴されてしまった。マキロイとチャンドラーは2011年10月に契約を解消したのだ。

ドーブマウンテンのクラブハウスでマキロイと話をしていた際、奇遇にも他に唯一席の埋まっていたテーブルにチャンドラーが座っていた。チャンドラーはマキロイが身に着けていたスイス製の腕時計、高価なオーデマピゲに触れると「やぁ、元気でやっているか?新しいクラブには慣れたかい?」と話しかけてきた。「昨日の夜、(オーデマピゲのスタッフと)一緒に夕食を食べたよ」とジョークを交え単調な口調でマキロイは返答。

お互い余所余所しい笑顔を交わすだけだった。マキロイがチャビーと袂を別った理由は、マキロイがダブリンを拠点に構える北アイルランド出身のグレーム・マクドウェルが運営しているHorizonの連中を気にいったからだという。また、チャンドラーが、マキロイをクラーク、ウェストウッドの次に位置付けていた感じがしたからとも告白している。マキロイの我の強さも決別の要因だったのだろう。

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