2012年 全米プロゴルフ選手権

【WORLD】A.スコット 再起への期待

2012/08/10 11:33

Golf World(2012年8月6日号) GW bunker

全米プロ初日、A.スコットは4アンダーの6位タイと好発進。無念を晴らす旅が始まった

「全英オープン」優勝を逃した悔しさをスイスのクランスモンタナリゾートで癒し、アダム・スコット(オーストラリア)は、キアワアイランドリゾートで始動していた。オープン覇者に手渡される黄金のメダルを掴みかけていたオージーだったが、彼の名はメジャー大会で劇的な大崩れを見せたリストに永久に残ることだろう。大会終了から数日、不名誉な理由からスコットの名前はツイッターのトレンドになってしまっていたのだ。

それでもスコットは周囲の反響の中で上手く対応していた。親しい友人は、「(スコットは)少し自分だけの時間が欲しかったようです。ただ、次に進む準備は出来ているようでした」と語っている。

7月29日にオーシャンコースに到着すると、翌月曜日から義兄弟であるコーチのブラッド・マローンと共に練習ラウンドを開始した。その後、昨年優勝した「WGCブリヂストンインビテーショナル」に出場するため、オハイオ州アクロンに移動。全英直後に全米プロが開催される為、スコットは挽回の大きなチャンスがあると、やる気を出しているようだ。以前スコットのコーチだったブッチ・ハーモンは、「2通り考えられる」とし、「アダムの場合は良い方に転がるだろう。次はプレッシャーのかかる場面でも前回より楽にプレー出来るはず。中には敗戦から立ち直るのに時間がかかる選手もいるが、彼は良いプレーヤーだし、問題ないと思う」と、復調を期待していた。

スコットは人々から感心されるほどに、アーニー・エルス(南アフリカ)に敗れた悔しさと向き合い続けている。大会直後の日曜の夜、リザムの借家での家族ディナー、冷え冷えするアルプスでの休暇中、そして今大会に向けた準備をサウスカロライナで行っている間も、師匠であるグレッグ・ノーマンの言葉を教訓としていた。「敗戦を勝利の薬にしろ。どんなことがあっても新たな敗北の誘発剤にするな。それこそが、敗戦から唯一学ぶべきことなんだ」。

今回のような経験は、32歳のスコットにとっては初めのことだった。全英までに46のメジャー大会に出場してきたが、最終日を首位で迎えたのは初めての経験だった。メジャーでの過去最高成績は、2011年マスターズでの2位タイ。同大会では最終日のバックナインで2度リードし、リザムで感じたようなプレッシャーを受けることはなかった。チャール・シュワルツェルがラスト4ホールで連続バーディを決め、オーガスタナショナルでの戦いを制したからだ。

結局リザムでスコットは最終4ホールでボギーを続け失速。優勝を逃した後ロッカーに戻ると、「僕は人よりも学ぶのが遅いのかもしれないけれど、必ずいつか優勝してみせる」とだけ語った。

昨年のマスターズまでは、メジャー大会で実力を発揮できず、メジャー初出場から13回目までで8度も予選落ちを経験していた。最上位は彼自身メジャー23戦目となったメダイナCCで開催された2006年の全米プロゴルフ選手権で記録した3位タイだった。同年の全米オープン後には、近しいジェフ・オギルビーの優勝パーティーに参加し、勝利で得られる喜びとは何かを感じることが出来た。ロンドン行きの飛行機があったにも関わらず、スコットはエルスのプライベートジェットを降り、ウィングドフットに戻り、母国の仲間のお祝いに駆けつけたのだった。

それから6年後、オギルビーは全英オープンでスコットが敗退した後にツイッターにメッセージを投稿。そこにはゴルフ界のコミュニティ内でも複雑な感情が入り混じっていることがわかる言葉があった。「アーニーの勝利を嬉しく思うと同時に、非常に残念な気持ちでいっぱいだ」。

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