飛躍を経て「努力」の年へ/蝉川泰果 2023年新春インタビュー(1)
クラブのこだわりを語りまくる/蝉川泰果 2023年新春インタビュー(2)
95年ぶりの「日本オープン」アマチュア制覇、史上初となるアマチュアでのツアー2勝を達成した蝉川泰果。プロに転向してまだ2カ月余りの21歳は、2023年の国内男子ゴルフ界をけん引する期待を背負う。単独インタビュー後編では、愛用ギアへのこだわりを明かした。
“ハード”なドライバーでかっ飛ばす
“魅せるゴルフ”を標榜(ひょうぼう)する蝉川のストロングポイントの一つは1Wショットだ。2022年シーズンにプロとして出場した4試合のドライビングディスタンスは、平均303.50ydを記録した。狭いホールでも果敢に振り抜いてビッグドライブを見せるプレースタイルを誇る。
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使用するのは2022年11月に発売されたピンの「G430 LST」。10月「日本オープン」の週から使い始めたというヘッドは、3タイプあるG430の中で最も球が上がりにくく、つかまりづらいハードなLSTをチョイスしている。
「つかまりが悪くて(ライ角が)フラットなものを使うようにしている。バランスもD3と重め。フェース近くにジェルを入れて、(ヘッドの)重心を前にしてもらって球が上がりすぎないように」とヘッドに施している工夫を話す。クラブを替えることに総じて抵抗はないというが「『アカン、ダメや…』というクラブは1、2球打てば分かる」と好みははっきりしている。
速くて強いスイングから生み出されるパワーを余すことなくボールに伝えられるように、シャフトは硬くてクセのないものを求める。「今はアイアンのシャフトが一番ハマっていて、アイアンからのつながりとして同じような球筋が出るシャフトを求めている」。最もしっくりきているのが三菱ケミカル TENSEI プロ オレンジ 1K。「これも標準の長さより半インチ短く(44.75インチに)して使っている。短めの方が振りやすい」。1W単体で考えるのではなく、14本全てのシャフトの流れを考慮して、最良の一本を選定している。
マッスルバックアイアンとレアなシャフト
アイアンはマッスルバックタイプの「ピン ブループリント」を愛用。硬く仕上げられた「日本オープン」のグリーンを攻略した高い弾道は、この小さなヘッドから繰り出される。「6、7セットくらい替えて使っているくらい大好きなヘッド。打感も良くて、マッスルバックでこれだけ芯が広いのも初めてだったので、すごくいい」と絶賛する。
「ジュニアの頃はマッスルを使ったり、ハーフキャビティを使ったりを繰り返していたけど、やっぱりマッスルバックの方が縦距離のブレが少なくて安定している。『もうちょっとやさしく』もしたくて(他のクラブを)1、2回打ったけど『ナシやな…』ってなった」
このアイアンには、レアなスチールシャフトが挿さっている。ツアーでよく見られる赤いロゴでおなじみの「日本シャフト NSプロ モーダス」シリーズには違いないが、市販されているモーダスシリーズには存在しているステップ(節)が、蝉川のシャフトにはない。「(ステップの)あるシャフトとないシャフトの違いはよく分からないけど、ない方がクセはないのかな。同じフレックスでも、ない方が硬く感じやすいと思う」
「(メーカーから)中調子と聞いている。中調子の方がクセのあるシャフトが少ない。元々は元調子のシャフトがすごく大好きだったけど、中調子の方が合った。クセがなくて、かつ思い切って左に打っていける。それこそ、このシャフトに替えてから縦距離のブレが減ったのですごく気に入っている。つかまりすぎず、逃げすぎずというシャフト」とプロトタイプシャフトの特性を説明した。
14本の中で一番お気に入りのブレード型パター
14本の中で一番お気に入りのクラブを聞くと、「パターです」と即答した。 「操作性が良いのと、ブレード型はどんな動きのストロークをしてもいいと一般的に言われているので、そこに惹かれた。自分は感性でゴルフをするので、その感性を生かせるブレード型が良いな、と」 。使い始めたのは半年前と月日は浅いながら、レギュラーツアー2勝を手繰り寄せたエースパターに絶大な信頼を置いている。
オーダーしてロゴを好きな色のピンクにペイントしてもらったというお気に入りの一本。「以前使っていたパターの打感に合わせたフェースのミーリングにして、プラスでやさしさも求めて(ヘッドの)両サイドにタングステンを入れてもらうことで当たり負けしないようにした。しっかり目、硬めの打感が好きなので、一番硬いステンレスを使って、ミーリングにもこだわった」と明かした。
また、パターでは珍しく、カーボンシャフトを使用している。「普通のカーボンよりも全然硬い。硬い方が(ヘッドが)ブレない。スチールシャフトだと“ドロン”として遅れて当たる感じがする」
豪快でアグレッシブなプレーは、繊細な感性によって選び抜かれた14本によって支えられている。
(聞き手・構成/内山孝志朗)
取材協力/樫山ゴルフランド
<蝉川泰果の最新クラブセッティング>
ドライバー:ピン G430 LST(ロフト9度)
シャフト:三菱ケミカル TENSEI プロ オレンジ 1K(硬さX、重さ60g台、長さ44.75インチ)
フェアウェイウッド:テーラーメイド ステルス(3番15度)
ユーティリティ:ピン i クロスオーバー (3番20度)
アイアン:ピン ブループリント(4~9番、W)
シャフト:日本シャフト NSプロ モーダス3 プロトタイプ
ウェッジ:ピン GLIDE 4.0(50、56、60度)
パター:ピン PLD ミルド アンサー プロトタイプ
ボール:タイトリスト プロ V1x
※2022年12月取材