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<番外編・選手名鑑182>米国大統領とゴルフ(前編)

2016/01/20 07:15

95年、元大統領のジェラルド・フォード、 95年、元大統領のジェラルド・フォード、ジョージ・ブッシュ、当時現職のビル・クリントンらがプロアマで一緒にプレーした(J.D. Cuban/Getty Images)

■ 大統領がサポートするPGAツアー唯一の大会

今大会は1965年からコメディアンのボブ・ホープがホストとなり、歌手だったフランク・シナトラら、多くのハリウッドスターが参加した。77年には、ホープと親交のあったジェラルド・フォード元大統領や、スポーツ界のセレブも次々に参加する華やかなイベントとして続き、その後、ビル・クリントン元大統領がホストを継承した。これまでPGAツアーの大会名に著名人の名を冠することがあったが、大統領名は初めてのことだった。クリントン氏は在任中からゴルフ好きとして知られ、大好きなゴルフを通じて、自身が運営する慈善団体への寄付と、大会を盛り上げる熱血サポーターとして成功に尽力している。今回は歴代大統領とゴルフのエピソードを振り返ろうと思う。

■ フォード、ブッシュ、クリントン3大統領が一緒にプレー

今大会名がまだ、「ボブ・ホープクラシック」だった95年。元大統領のジェラルド・フォード、ジョージ・ブッシュ、当時現職のビル・クリントン大統領がプロアマで一緒にプレーすることになった。政府要人3人がプレーするとあって、インディアン・ウェルズCCは厳しい警備体制が敷かれ、シークレットサービスや制服私服のSP、大取材陣でごった返していた。

3人は大ギャラリーが見守る中、1番からスタート。「ゴルフは性格を暴露するスポーツ」と言われるが、3人のプレーは個性を際立たせた。当時、フォード氏は最年長の81歳。心臓にペースメーカーを入れる手術をしたため、歩くのもスイングもゆったりとしたペースだったが、ゴルフが大好きで、PGAツアーのプロアマ戦には年に数回程度、出場していた。70歳のブッシュ氏は対照的で、素振りもせず、あっという間にショットを終了。クリントン氏は“ゆっくり系”でアドレスに入るまでも時間がかかるので、ブッシュ氏は少しイライラしているように見えた。

ブッシュ氏はクイックプレーが信条で、18ホールを2時間以内でプレーすると聞いていたが、実はもっと早いかも?と感じるほど、無駄な動きがなかった。のんびり系のクリントン氏はティアップしたボールの後方からじっくり目標を定め、何度も入念に素振りをして、ようやくアドレスに入る。スイングは少々変則で、トップで左かかとが急に(無意味に?)ヒュイっと上がる癖があった。3人は、大勢の前での演説なら“おてのもの”だろうが、お祭り状態の大ギャラリーに囲まれてゴルフをするのは初体験。一見、笑顔で楽しそうな雰囲気だが、微妙に緊張感のあるグルーピングだった。このまま和やかに終わるかな?と思いながら眺めていた。

混雑を避けようと、僕は3人が2打目を打つ前にグリーン奥へと先回りした。だが、あっと言う間に大ギャラリー(ほとんど年配の女性)の人垣に囲まれた。と、思った次の瞬間、ブッシュ氏の打球がワンバウンドで僕の左太ももを直撃し、打球は近くの浅いラフに止まった。グリーン奥まで来たブッシュ氏が「僕の打球を助けてくれたのは誰?」と聞くと、近くの年配女性全員が「私よ!」「わたし!」、「ワタシ!!!」と手を挙げて叫び、思わず、その光景に吹き出してしまった。建物内ならまだしも、広大なゴルフ場で現職大統領を含むVIP3人を警護するなど、今では考えられないことだが、20年前の米国はこのような時代だった。

■ クリントン元大統領、嬉しすぎて?ノーマン宅で転倒骨折

歴代大統領の多くはゴルフが大好きで選手たちと交流がある。さまざまなエピソードの中で大ニュースになったのはクリントン氏が現職だった97年3月の出来事だ。

クリントン氏は、フロリダ州のグレッグ・ノーマン邸に1泊2日で訪問した。パーティーを開き、翌日は一緒にプレーする予定だったが、深夜にクリントン氏が階段で足を踏み外し、右膝を骨折。すぐに近くの病院に救急搬送されると、知らせを受けたホワイトハウスが動き、クリントン氏を担架に乗せ、ヘリコプターで別の病院へ移送した。長女とアフリカへ出発予定だったヒラリー夫人は予定を変更して駆けつけ、翌日午後に2時間の手術を受けた。現職大統領が私邸に泊まるのは異例なことだが、ノーマンと思う存分プレーしたいという願いは、思わぬケガで実現には至らなかった。

この一件の後、欧米の友人記者たちと酒を酌み交わす席でこの話題に触れ、「階段で転倒するなんて、嬉しすぎて少し飲みすぎたのかも!」とジョークを言っていたが、翌日には、報道官がその場に居合わせていたかのように、「大統領は酒を飲んでいなかった」と言及していた。クリントン氏は退任後、2000年のプレジデンツカップの名誉チェアマンに就任。04年には心臓のバイパス手術を受け、体調が案じられたが、PGAツアーの大会でホストを続けるまでに回復し、いろいろな立場でゴルフとつながってきた。昨年はバラク・オバマ大統領ともプレーし「ゴルフは激務から解放される最高のセラピー」と助言したという。

※次回はゴルフの名門ブッシュ家、レーガン大統領の現職時代見せなかったゴルフの顔、オバマ大統領のゴルフを予定

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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