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2014年 バルスパー選手権
期間:03/13〜03/16 場所:イニスブルックリゾート(フロリダ州)

<佐渡充高の選手名鑑 111>ジミー・ウォーカー

2014/03/12 10:00

■ 変身!「地味なウォーカー」からツアーをリードする「J Walk」へ

“トランスフォーム”とは今季のジミー・ウォーカー(35)のことを言うのだろう。2005年にルーキーとして登場し今年で10年。過去9年間のうちの自己ベストは昨年の2位タイフィニッシュだった。優勝を狙える位置で最終日を迎えても、いつの間にか消えてしまうことが多く、勝負弱さ、地味な印象の残る選手だった。しかし、今季の開幕戦「フライズドットコムオープン」で遂に初優勝を挙げ、188試合目での勝利に嬉し涙がこぼれた。

ウォーカーの快進撃は、待ちに待ったその初優勝から始まった。年が明け今年2戦目、自身今季6戦目の「ソニーオープンinハワイ」ではクリス・カーク(28)に逆転勝ち。舞台はハワイからカリフォルニアに移し、自身8試合目の「AT&Tペブルビーチナショナルプロアマ」でも優勝。今季8試合で3勝と驚異の活躍をみせた。賞金ランク、フェデックスカップのポイントランクでも独走の1位。愛称“J Walk”はプライムタイムのタイガー・ウッズのごとく、ツアーを牽引する存在に変身した。

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■ 負傷、身内の闘病 数々の困難を乗り越えて・・・

ウォーカーは1979年1月16日、オクラホマ州オクラホマ市で生まれた。ゴルフはスクラッチハンディの父から手ほどきを受けた。テキサス州のミッション系私立のベイラー大学を卒業し、2001年にプロ転向。2004年にはウェブドットコムツアーで2勝、賞金王、プレーヤー・オブ・ザ・イヤーに輝き、翌2005年にはPGAツアーのルーキーとなった。前年の好実績から大型新人として期待されたが、いきなり出鼻をくじかれるアクシデントに見舞われてしまったのだ。

ルーキーで迎えた2005年は、腰痛により最初の9試合しかプレーできず、5月中旬以降は治療に専念せざるをえなかった。2006年には公傷制度が認められ、再起を懸けて挑んだものの、エリン夫人の母親が乳ガンで闘病生活を強いられてしまう。公私ともに、同時期に予期せぬ事態が身に降りかかったウォーカーだったが、夫人によると「彼は辛い時期も一切の愚痴をこぼさず、すべてを受け入れ前進しようと努力していた」そうだ。

それでも彼の成績は一向に上向く気配なくシード権を失い、2007年は下部ツアーからスタートした。ランクは25位のギリギリで、翌2008年のPGAツアー出場権を得た。しかし同年は賞金シードに届かず、QT受験で2009年の出場権を確保した。その年は何とか賞金シード枠ギリギリの125位でシーズンを終え、自身初のシード選手になった。晴れてシード選手として挑んだ2010年は、終盤、再びケガで苦しんだ。シーズンの追い込みがかかる8月に、右膝に異変を感じて即手術。その後、リハビリの効果で早めに回復したが、バックスイングに影響が残った。

約5年間、彼は様々なことを乗り越え、ようやく2011年頃からゴルフに集中できるようなった。その年は4度のトップ10、翌2012年は6度のトップ10と上位入賞も増え、胃がキリキリ痛むようなシード権の不安からは解放された。しかし、相変わらず勝利とは縁のないシーズンが続いた。

■ ブッチ・ハーモンが授けた「自信」

届きそうで届かない優勝…。断腸の思いで長年のコーチに別れを告げ、昨年8月にブッチ・ハーモンに指導を仰いだ。「タイガー・ウッズアダム・スコットらを育て、フィル・ミケルソンらトッププロの活躍を支える名コーチはどのような指導をするのだろう」と。それはウォーカー初優勝から、わずか2か月前のことだった。

意外にもハーモンはスイングをあまり変えようとしなかった。ひたすらウォーカーに自信を持たせようと「おまえの実力は凄いんだ!」、「男の中の男だ!」、「自信を持て!」と繰り返し言葉をかけ続けた。180試合以上もプレーしながら勝てないのに、自信を持てと言われてもとウォーカーは半信半疑だったが、実績ある名コーチが高評価するなら、これまでのすべてを白紙にし、自分を信じ賭けてみよう!と次第に気持ちは変化していったのだ。ハーモンはこの時すでにウォーカーのポテンシャルを見抜いており、その事実に気づいていないのはウォーカー自身、彼だけだった。

自らの実力を信じ、手にした優勝-。その優勝がさらに自信と余裕を与え、次の勝利へと導いた。ウォーカー夫妻は困難な時も率先して、世話役としてツアーや選手会、夫人会のために尽力してきた。夫妻の献身的な貢献は誰もが認めている。そのためか、彼の躍進は異例なほど多くの温かい拍手に包まれている。

佐渡充高(さどみつたか)
ゴルフジャーナリスト。1957年生まれ。上智大学卒。大学時代はゴルフ部に所属しキャプテンを務める。3、4年生の時に太平洋クラブマスターズで当時4年連続賞金王に輝いたトム・ワトソンのキャディーを務める。東京中日スポーツ新聞社を経て85年に渡米、ニューヨークを拠点に世界のゴルフを取材。米国ゴルフ記者協会会員、ゴルフマガジン「世界トップ100コース」選考委員会国際評議委員。元世界ゴルフ殿堂選考委員。91年からNHK米ゴルフツアー放送ゴルフ解説者。現在は日本を拠点に世界のゴルフを取材、講演などに飛び回る。

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