2モデルの“いいとこ取り” ウィンダム・クラークの新・カスタムアイアン詳細
ウィンダム・クラークはPGAツアーにおいて2023年「トゥルーイスト選手権」と「全米オープン」、24年「AT&Tペブルビーチプロアマ」と3勝を挙げており、その全てのバッグにタイトリスト「620 CBアイアン」が収まっていた。
クラークはそのアイアンで長きにわたり成功を収めていたにもかかわらず、1年ほど前に、よりスピン量が少なく、飛距離の出るタイトリスト「T100 アイアン」に乗り換えた。
しかし、25年「RBCヘリテージ」を前に、クラークはこの2つのセットの中間点を模索するようになった。アドレス時の620 CBの形状と、T100の持つロフトと低スピン量を組み合わせようとしたのである。なお、この願望が「テキサスチルドレンズ ヒューストンオープン」にて、使用ボールをタイトリスト「プロV1x」から、よりスピン量の少ない「プロ V1」に変更したことに起因していることは注目すべき点だろう。
このボール変更は、メジャー王者によるスイング変更を補完し、結果としてツアーを席巻した2023-24年シーズン当時に得意としていたカットショットへの回帰を促した(カットショットは通常、スピン量が多くなるため、低スピンのゴルフボールを使用することで、クラークはボールの弾道をフラットにすることができた)。
このため、620 CBとT100を組み合わせたいというクラークの願望に応えるべく、タイトリストのツアーレップであるJJ・ヴァンウェゼンベックとツアーチームは、620 CBのロフトを減らす作業に着手した。
タイトリストは手始めにストロングロフトに曲げてみたところ、クラークの好みとするバウンス特性がソールから失われる事態となった。これに応じて、代わりにヴァンウェゼンベックがいうところの「ロフトシフト」を行なった。
ロフトシフトとは、好ましいロフトとプレー特性を実現するため、クラブビルダーが効果的にアイアンセットの番手の数字を変更する手法のことである。クラークの場合、620 CBの6番は7番、7番は8番という具合に変更された。その上で、通常、6番のヘッドはセット内の7番のヘッドよりも軽く、7番は8番よりも軽いことから、各ヘッドの失われた重量を補うためバックキャビティに鉛テープを追加し、適切な重量配分を確保。ソールに刻印されていたそれまでの数字を削り取り、新しい番号を刻印した。
この結果、クラークは自分の好む620 CBのヘッド形状ながら、T100の持つストロングロフトとスピン特性を併せ持ち、それでいて自身の必要とするバウンスを得るに至った。
タイトリストは過去に、完全カスタムメイドの「632.DUB」アイアンヘッドを製造したこともあった。ヴァンウェゼンベックによると、今回の新しいアイアンの調整は、全てタイトリストのツアートラック内で行われたため、より迅速かつ現場でのカスタマイズが実現したとのこと。そして仕上げに、クラークの母親の遺志に対する支援の意味合いを込め、アイアンにピンクで塗装のフィリングを施した。
これで過去の大会王者であるクラークは、タイトリスト「T200」のロングイアン(3~5番)に“新”620 CB(6番~9番)を組み合わせて、フィラデルフィアCCで開催される「トゥルーイスト選手権」に臨むこととなった。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)