マキロイは59度→61度へ ペブルビーチで目撃されたギア変更を一気見
最高の選手たちがしのぎを削った「AT&Tペブルビーチプロアマ」ではロリー・マキロイ(北アイルランド)がPGAツアー27勝目を挙げたわけだが、今大会は様々な選手が踏み切ったギア変更を振り返るのに最適のタイミングと言えるだろう。以下は、ペブルビーチからの完全レポートである。
ボール変更だけじゃなかったマキロイの勝因
マキロイ優勝の背景には、運の要素もあった。彼は、マイケル・ジョーダンのグローブXXIII GCで、テーラーメイドTP5ボールで「なんとなく遊んでいた」際、偶然その性能に気づいてボール変更を敢行したのである。
マキロイは第1ラウンド後、「(これまで使っていた)TP5xではなく、TP5でチップショットを打ち始めたんだけど、その感触がとても気に入った。グリーン周りでの反応が気に入ったんだよ。その後、60~70ydのショットを打ち始めたら、こっちの方が打ち出しが断然低くて、スピン量が多かったんだ」と語った。
勝利に貢献したのはそれでけではない。グリーン周りのより良いパフォーマンスを求めて、これまでと別のロブウェッジを手にしていた。
優勝後に「59度から61度に替えたんだ。ショートサイドのチップショットと、ラフからの脱出を重視して、ロブウェッジのロフトを2度増やした。僕の得意クラブだけど、2度増えたことで、少しばかりの違いを作り出せるようになったね」と明かした。テーラーメイドMG4へ回帰するまで、59度のタイトリスト ボーケイ ウェッジワークスを使っていたが、今回は一貫性の向上を最優先し、ロフトを増やした。
「昨年の僕のショートゲームは少し波があった。良い週もあれば悪い週もあって、一貫性があったわけではなかった。今日もそうだったけれど、大きな寄せワンを決めると波に乗れる。4番の寄せワンも、そんな感じだったね」
61度のウェッジは昨年苦戦した分野にもプラスになった。彼は2024年のツアーにおける50~75ydのアプローチのランキングが134位だった。ロフトの増加と異なるリーディングエッジにより、スイングに自信を持てるようになった。
テーラーメイドでツアーオペレーションの副部長を務めるキース・スバーバロ氏は、「61度の場合、40~70ydも断然簡単に打てるようになります。彼は59度より強く打ち込んで、より低い弾道でスピンの効いたショットを打てるのです」と述べている。
マッキンタイアの「盗んだ」スコッティ
昨季ストロークゲインド:パッティングで35位になるなど、ロバート・マッキンタイア(スコットランド)はパットを得意とする。しかし、2025年のスタートはグリーン上で苦戦していた。そこで多くのプロと同じように、新しい物を模索した。ただ、世界17位の選手でも左利き用のクラブを見つけるのは難しいのだ。
マッキンタイアは大会前、冗談めかして「これはヨーロッパのツアーレップの持っていた(新品の)パターなんだ。彼は中東で唯一左利きでパットする人だったから、まあ、その、盗んできたんだ」と話した。
彼が発見した唯一のパターが、小さいスラントネックがツアー仕様に溶接されたブラックメタル仕上げのスコッティキャメロンT5.5プロトタイプだった。加えて、そのレップが使っていた蛍光ピンクのグリップという秀でたポイントがあった。
「イカしたピンクのグリップで、コースで使うと思わず笑ってしまうんだ。僕に向かって叫ぶ人が出てくるのは確かだよね」とうれしそうだ。
グローバーは“後継”見つけて復調
ルーカス・グローバーにとって、ペブルビーチの3位タイは、2週連続優勝を遂げた2023年以来の復調となった。新しいスリクソンZXi LSドライバーへの乗り換えの賜物だった。グラバーは前述の2勝時に使っていた古いスリクソンZ785ドライバーが不運にも割れて以降、その後継を探し続けていたのだ。
スリクソンでツアーオペレーションを統括するマイケル・ジョリー氏は「彼は割れたドライバーの代替を探すのに苦労していましたが、今回の新しいドライバーでボール初速は以前の物より速くなりました。彼はドローの打てるクラブを必要としていたんですが、簡単にそれができるんです」と話した。
かつてのZ785が、2018年のリリース当時、他のドライバーよりスピン量が少なかったことを考えれば、グラバーが新しいZXi LSヘッドで良いプレーをしたのは、驚きにはあたらない。グラバーのツアーにおける2024年のトータルドライビングは92位だったが、今季は25位につけている。
選手たちのギア変更を一気にチェック
予選落ちがなく4ラウンドが約束され、ペブルビーチGLとスパイグラスヒルズGCの2コースをローテションするため異なるグリーンが混在する「AT&Tペブルビーチ」は、新しいパターをテストする格好の場として知られている。
最も注目を集めたのはトム・キム。新リーグ「TGL」のデビュー戦で、ジュピターリンクスのチームメートとしてタイガー・ウッズと一緒にプレーした際、新しいスコッティキャメロン スタジオスタイル ニューポート2を使い、ペブルビーチでもそのブレードパターを使用して7位タイでフィニッシュした。マレット型からブレード型へは大きな変更だが、最大の話題となったのは興味深いトップラインのデザインだ。
2本の白い線があり、1本はヘッドと並行に、もう1本はそれに対して直角に引かれている。この新しいデザインは、彼の親友であるスコッティ・シェフラーもそうであったように、ボールに引かれたラインを使わなくなったキムには助けになった。
ジャスティン・ローズ(イングランド)も、「ファーマーズインシュランスオープン」でパターを共同設計した新しいアクシス1プロトタイプに変更していたが、ペブルビーチではスコッティキャメロンT-5マレットパターに戻し、3位タイに入った。
アダム・スコット(オーストラリア)は、最終日のラウンド前にパターをカスタムブルーに彩られた新しいL.A.B.Oz.1に換えて「64」をたたき出してリーダーボードを駆け上がった。グリーン上で3ストローク以上を稼いでいる。
トミー・フリートウッド(イングランド)は、新たな塗装の施されたカスタムのテーラーメイドTPソト トラスTFプロトタイプパターを使用した。このパターには、テーラーメイドのトラスネックテクノロジーが採用され、トップライン上に複数のコンタクトポイントを作り出すことで、ストローク中に支えのないトルクとねじれを軽減させる作りになっている。ペブルビーチでは、パターはブラックに塗装し直され、ソールにはフリートウッドのサインが刻印されていた。
松山英樹は、開幕戦「ザ・セントリー」で新たにセンターシャフトのスコッティキャメロン009Mツアー プロトタイプパターを投入し、ツアー最多アンダーパー記録を塗り替えて優勝したにもかかわらず、ペブルビーチで別のモデルに乗り換えた。松山の最新モデルは新旧の要素が混在しており、同じセンターシャフトでブラックメタルのヘッドながら、クラフツマンスクエアバックモデルで、2024年「フェデックスセントジュード選手権」を制覇した際のパターと同じドットのサイトラインが入った物だった。松山はこの週のストロークゲインド:パッテイングが44位だったため、フェニックスで別のパターが出てくるかもしれない。
また、GolfWRX.comは大会前にアクシェイ・バティアが新しいパターをテストしている姿を目撃している。ブルームスティックパターの熱烈ユーザーであり、過去に使用したことのあるオデッセイ テンのヘッドを試していたが、センターシャフトのモデルだった。オデッセイは最近、フェースバランスのスクエア2スクエアシリーズをリリースしたばかりだが、写真を見る限り、オデッセイは同じテクノロジーを長尺パターでもテストしているようで、シャフトはヘッドのさらに後方中央側へと傾けられていた。
ペブルビーチにおけるAT&Tのスポンサーシップ40周年を記念して、ジョーダン・スピースとマーベリック・マクネリはカスタムバッグをお披露目した。各バッグには風光明媚な17マイルドライブの景色が描かれており、映画「キャディシャック」(邦題ボールズ・ボールズ)に出てくる有名なネズミや、名物ホールであるパー3の17番でバーディが出た際に寄付を募るAT&Tの「バーディズ・フォー・ストゥーデンツ」キャンペーンにちなんだ刺繍が施されていた。スピースのバッグには、2017年大会優勝を記念したワッペンも確認できた。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)