PGAツアー2021-2022シーズン ギア10大ストーリー(前編)
PGAツアーの2021-22年シーズンを通じ、米GolfWRX.comは最新ギアのリリース、選手の契約、ワッツ・イン・ザ・バッグ(WITB)の更新やカスタムデザインといった情報を公開してきた。今回は2021-22年シーズンのギアの10大ストーリーをピックアップ。まずは前編としてタイガー・ウッズのアイアンなど5選を紹介する。
ジョン・デーリーのワイルドなギアセットアップ詳細
ジョン・デーリーほど、人々を刺激する人物もいないわけだが、この永遠にエキセントリックな56歳は、2022年「全米プロゴルフ選手権」における自身のカスタムギアセットアップでも期待を裏切らなかった。
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USGAの適合クラブリストに掲載されたばかりだった、発表前のPXG「“TD”プロトタイプドライバー」をバッグに入れたのに加え、鉛テープだらけのテーラーメイドP770アイアンセットとともにサザンヒルズCCへ姿を現した。鉛テープは一般的に、打感やパフォーマンスの向上を求め重量を調節するために使われるが、デーリーの使用量は尋常ではなかった。
彼はオーバーサイズのスーパーストロークSテッククラブコードグリップを使用していたのだが、これが82グラムと、標準的なグリップよりも約30グラム重かったため、彼はクラブヘッドに約30グラムの鉛テープを加え、グリップの重量を調整する必要があったのである。これによりクラブのバランスは保たれ、さらにクラブヘッドを見分け不可能な状態にしたのだったが、できる限りクールなやり方だったのは幸いだった。
タイガー・ウッズが“タイガースラム”で使用した?アイアンがオークションに
タイガー・ウッズが“タイガースラム”(2000年「全米オープン」、「全英オープン」、「全米プロゴルフ選手権」、2001年「マスターズ」を連続で制覇)を達成した際、彼はタイトリスト 681-Tアイアン(2番~PW)とタイトリスト ボーケイウェッジ(56度に調整した58度ウェッジと60度ウェッジ)のカスタムセットを使用した。バックフェースに施されたTIGERの刻印、そして8番アイアンのフェース中央に残る10セント硬貨大の磨耗痕により、クラブは簡単に識別でき、息をのむほどクールだった。
伝えられているところによると、このアイアンとウェッジは2010年にヒューストンの実業家トッド・ブロックがオークションで5万7242ドルで購入し、入手後は同氏が額縁に入れ、自身のオフィスに飾っていた。
しかしながら、2022年3月、ブロックがゴールデンエイジオークションを介してこのクラブをオークションに出品したことから、クラブは大衆の目に触れることとなった。4月9日の最終落札額は、なんと驚がくの515万ドルだったことが、オークションのソーシャルメディアで正式に発表された。結果的に、これは2010年当時のブロックによる、かなり目の利いた投資となった。
とは言え、問題のアイテムには真偽を巡り、ちょっとした議論が巻き起こった。ウッズのエージェントであるマーク・スタインバーグは、ウッズがタイガースラムで実際に使用したクラブを自宅に保管しているとゴルフダイジェストに述べたのだが、ゴールデンエイジオークションのオーナーであるライアン・キャレイは「このクラブに精通している数多くの関係者」と会話し、「我々は100パーセントの自信を持って、これらのクラブはタイガー・ウッズによって伝説となった2000、01年シーズンに使用されたものであると言い切れます」と述べている。
このストーリーには全てが詰まっている。タイガー・ウッズ、クールなカスタムギア、何百万ドルという競売、そしてちょっとした議論。PGAツアー公式サイトのギア関連のストーリーで、今季これが最も読まれた記事だったのもうなずける話である。
トニー・フィナウの心温まる陽気なボールマーキング
トニー・フィナウによる7月の2週連続PGAツアー制覇(3Mオープンとロケットモーゲージクラシック)の真っ只中、我々は彼がゴルフボールのマーキングに用いている、心温まる陽気なストーリーを知ることになった。
5人の我が子を力の源とするフィナウは、自身の使用するタイトリスト プロV1レフトドットゴルフボールに、子どものイニシャルを書いている。5人が関与できるよう、特定のイニシャルのパフォーマンスが低調になると、彼は別の子のイニシャルの入った球に入れ替える。
「僕は誰か(の名前を入れたボール)からスタートして、そのパフォーマンスを見定めるんだ。パフォーマンスがイマイチだと交換する。結構、寛大に何度かチャンスは与えるのだけど、2ホール続けてカップに嫌われたりすると、次の(イニシャルの)出番になる。子供が5人もいるからね。少なくともどれかひとつは“ちゃんとしている”んだよ」
イニシャルはどの子かに関係なく、ボールの正面に記入する。また、アライメントの補助として、ボールの横側に4本の短い線と1本の長い線を引く。彼は単純に長い方の線をグリーン上で定めたターゲットへ向け、その線に沿ってパットをする。もし、ボールの線が真っ直ぐに転がれば、彼は自分がソリッドなパットを打ったことが確認でき、線がゆがんで転がるようであれば、ストロークかインパクト時のフェースの向きに異変があったことになる。
2022年「AT&Tペブルビーチプロアマ」でのセレブのクラブ
「AT&Tペブルビーチプロアマ」は、ファンに推しのPGAツアー選手と推しのセレブの両方が、世界で最も風光明媚なゴルフコースで競うところを目にする特別な機会を提供する。今年は、多くのセレブゴルファーが、人目を引くカスタムギアのセットアップを携え、歴史的なペブルビーチGLに姿を現した。
大会初出場を果たした、NFLバッファロー・ビルズのクォーターバック、ジョシュ・アレンは“QB1”と刻印されたカスタムのテーラーメイド ハイトウウェッジを使っていた。QB1とは、フットボールチームの先発クォーターバックの通称である。
MLBの右翼手、ムーキー・ベッツもまた、カスタムで刻印されたウェッジを愛用しており、彼のタイトリスト ボーケイSM8ウェッジには踊る50番が刻印されていた。ベッツは自分が仕事をする時は、背番号50のロサンゼルス・ドジャースのユニフォームを着てプレーするのである。
これらに引きを取らないギアを披露したのは、PGAツアー選手であるリッキー・ファウラーの親友でカントリー歌手のジェイク・オーウェン。カッパー仕上げのコブラRFレブ33ブレードアイアンと、自身のヒットソングのタイトルである“Beachin”の文字がソールに刻印されたスコッティキャメロンのパターを使用していた。
信じられいな来歴を持ったトム・ホジーのカスタムパター
今年のペブルビーチでは優勝したトム・ホジーのカスタムパターと、これがどのようにして彼のバッグに収まったかに関するストーリーが大きな話題となった。
あらましは次の通り。ホジーのキャディ、ヘンリー・ダイアナJr.はかつて90年代中頃にプロゴルファーとして活動していた。当時、ダイアナJr.はデイビッド・ペレツ3ボールパターを使っていたのだが、工具や金型を作る職人だった彼の父親は、彼がグリーン上で抱えていたアライメントの問題を直すため、彼に2ボールパターを組み上げた。これは、かの有名なマレット型のオデッセイ2ボールパターが世に出る前の話である。
ホジーもまた、2022年序盤にダイアナJr.と似たようなアライメントの問題を抱えており、パターを探していた。ホジーのキャディであるダイアナJr.は、密かにオデッセイのツアーレップ、ジョー・トゥーロンに近づき、ホジーを助けるためのオデッセイ2ボールカスタムパターに関するアイデアを打ち明けた。
最終的にトゥーロンとチームは、ホジーの好みに完璧に合わせたこの世に2つとないオデッセイホワイトホット2ボールパターを製作し、木曜に競技がスタートする数日前にペブルビーチでお披露目した。
ホジーはこの新しいカスタムパターを実戦投入する決断をすると、71ホール目に6メートルのパットをねじ込み、PGAツアー初優勝に結びつけたのである。
大会後、GolfWRX.comはこのパターに関する詳しい話をダイアナJr.から聞いた。「僕の父は色々といじるのが好きだったし、常に色々な意味で先見性があり、素晴らしいアイデアを持っていた」と、ダイアナJr.は語った。「もちろん、ペルツはこの分野のパイオニアであり、(父は)それをいじって微調整したんだ。そして、知っての通り、オデッセイがそれを形にした。でも、これが本当にうまくいったんだ。こうして、(このパターが)また一周して戻ってきたのは、とにかく信じられないよ」
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)