テーラーメイドの未発表1Wも投入? タイガー・ウッズ“復帰戦”ギア
2022年は寅年 46歳になったウッズはもう一度、復活するのか
2021年2月23日、タイガー・ウッズはカリフォルニア州ロサンゼルス郊外で自動車の単独事故を起こし、右足に大けがを負った。思わぬ形でキャリアに終止符が打たれたかに見えたが、ゴルフの“生ける伝説”は12月のエキシビションマッチで復帰。PGAツアーがお届けするコラムシリーズは今回、Chuah Choo Chiang氏が46歳になったウッズのプロセスと未来の展望について記した。
ウッズに訪れた平穏
46歳になったタイガー・ウッズは平穏の中にいるという。確かに彼はすでにかつてのアスリートでないことを静かに受け入れている。だが、ジャック・ニクラスのメジャー最多勝記録(18勝)や、PGAツアーで歴史的な偉業になる83勝目への到達を、彼自身があきらめたという考えはきっと誤解だろう。
<< 下に続く >>
ウッズが内心で平穏を得たのは、2月のあの恐ろしい自動車事故を経験し、回復への道のりを経て、今も長女のサムと長男のチャーリーの父であるという事実に満足しているが故だ。
1997年に史上最年少のマスターズチャンピオンに輝いてから、ウッズはあらゆるシーンを征服し、前人未到の道を歩んできた。身体能力に優れ、奇跡的な形でゴルフボールを次々とカップに沈め、唯一無二のオーラをまとった。さらに特筆すべきことは、ウッズは複数の文化を持つ家族のバックグラウンドを通してゴルフの側面を変えたことだ。アフリカ系アメリカ人とアジアのタイ出身の両親を持ち、自身を「カブリネイジアン」と表現した彼は世界中のスポーツに生きる子どもたちにとってのゴルフをクールなものにした。
ビジェイ・シンとともに、彼はフィットネスに熱心なアスリートとして新世代のゴルファーに対し“準備の方法”を変化させた。鍛え上げた筋肉と類まれな運動神経を持って熱狂的なファンの心をつかみ、故障から何度も復活を遂げてきた。キャリアを脅かすほどのけがも含め、左ひざに5回、腰に5回メスを入れて。“ビッグ・キャット”はカムバックを繰り返す世界のスポーツアイコンとして、まさに九死に一生を得てきたことを証明しているのである。
2017年に腰のフュージョン手術を経て痛みを軽減させた後、彼を批判する人たちはウッズのキャリアは終わったと言った。だが、ウッズは数カ月の療養と激しい準備を経て、もう一度ツアーに戻ってきただけでなく、フェデックスカップの締めくくりである18年の「ツアー選手権」で勝った。
物語はそれで終わらない。
6か月後の19年「マスターズ」。ウッズはついに11年越しにメジャーで15勝目を挙げた。「タイガー! タイガー! タイガー!」と声援を浴びてオーガスタナショナルを闊歩し、18番グリーンで家族と誇らしげな表情を浮かべた。さらに日本での「ZOZOチャンピオンシップ」でサム・スニードに並ぶ、長きにわたる大記録であるPGAツアー82勝目を飾った。冬にはロイヤルメルボルンでの「プレジデンツカップ」で米国選抜を率いて魔法のような一年の主役になった。
事故からの復活はベン・ホーガンと同じ道
頂点にいた彼は自動車事故によって姿を消した。しかしその9カ月後、3秒の動画をツイッターに投稿した。「メイキング プログレス」とキャプションを添えた映像は、ネットの海を駆け巡った。
この12月、自身が主催するチャリティ競技「ヒーローワールドチャレンジ」の記者会見で、公に姿を見せたウッズは「生きていることだけでなく、手足があることが幸運だ」と言った。「確かに大変で、真っ暗な時間もあった。しかし前に進んでいる限り、光を見ることができた。それが僕に希望を与えてくれた。子どもたちとの時間が増え、彼らの活動に寄り添うこともできて、普通の生活を送ることもできる。いまは前向きにいられるんだ」
複雑骨折に見舞われた右足の腓骨にはボルトが入り、足首にはネジとピンが装着されている。事故後はカリフォルニアの病院に3週のあいだ入院し、フロリダ・ジュピターの自宅で3カ月にわたって寝たきりの生活を強いられた。ギブスやブーツ、スリーブで足を保護して。「人生で一番痛かった」ケガだったと言う。普通の人間であれば、復帰をあきらめるのに十分な理由になったはずだ。
しかし、ファンや彼の仲間たちはウッズがPGAツアーで最後の活躍をする姿を見たいと切望しており、これまで数々のカムバックを果たしてきたゴルファーにとって、史上最高のゴルファーに「絶対」と言うことはないだろう。
2022年に向けて、ウッズはベン・ホーガンの歩みを模倣することを望んでいる。ホーガンもまた36歳のときに生命を脅かす自動車事故で大けがを負い、その後は出場試合の制限を余儀なくされた。それでも彼はその後11回、PGAツアーで優勝、うち6回はメジャーで勝った。「足が元通りになるとは思わない。腰だって昔のようにはならない。時間は立ち止まってはくれない」とウッズは言う。だが「ホーガンさんは1年に数回しか出なかった試合で素晴らしいプレーをした。僕にそれができないという理由はないはずだ。以前も手術からカムバックして長いブランクを経て、勝ったし、勝ちに近いところまでいった。そのレシピを僕は知っている」
ウッズは12月、親子でのエキシビションマッチ「PNCチャンピオンシップ」で、長男のチャーリーと2年続けて36ホールをプレーした。「長い挑戦になった一年を締めくくるべく、チャーリーと一緒に出場できることがうれしい。父として戦えることがなにより誇らしい」
「この足の状態では練習時間も十分に持てない。これまでとはやり方が違うが、それでもかまわない。僕は何度も山を登ってきた。違う登り方も知っている。もちろんこれは現在の大変なコンディションから、いずれ世界のベストプレーヤーたちと、最難関のコースを舞台に戦うということに向けた話をしている。今はかなり遠いところにいるけれど」
12月30日の誕生日を経て、ウッズは新しい年に静かに次の1ページをめくろうとしている。2022年が寅年なのは偶然かもしれない。虎は縞模様を失うことはなく、明暗がいつまでも続く。ゴルフ界はウッズの最後になるかもしれない咆哮と、時代を超えたカムバックを目撃する準備を整えなくてはならない。