ロリー・マキロイはなぜスパイダーパターに回帰したのか
2021年 ヒーローワールドチャレンジ
期間:12/02〜12/05 場所:アルバニーGC(バハマ)
ロリー・マキロイが試打セッションを経てウェッジを変更
昨シーズン、グリーン周りのストロークゲインドが71位に沈んだロリー・マキロイは、11月のヨーロピアンツアー最終戦「DPワールドツアー選手権」を前に、ウェッジ全体のアップデートを敢行した。すでに46度のウェッジに関しては、テーラーメイドのMG3モデルを使用していたのだが、最もロフトのある2本のクラブについても、同モデルへ変更したのである。
マキロイはドバイでの最終戦を迎えるまで、54度と58度はMG2モデルのウェッジを使用していた。12月のツアー外競技「ヒーローワールドチャレンジ」でも最新のセットアップでプレーした。
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選手の用具変更は、常に興味深いものだが、今回のマキロイのケースでは、特に決断の裏にある真意が目を引いた。2度のフェデックスカップ王者は、ハイバウンスのウェッジを選択したのである。
テーラーメイドのMG3シリーズのウェッジには、LB(ローバウンス)、SB(スタンダードバウンス)、そしてHB(ハイバウンス)の3種類のバウンスがある。例えば、MG3の56度ウェッジのバウンスは、8度、12度、そして14度という3種類の構成になっている。
念のためおさらいしておくと、“バウンス”とは、アイアンまたはウェッジのリーディングエッジとソール最下部の角度を意味する。この名称は、クラブのソールがターフを“バウンス(弾む)”することに由来する。リーディングエッジの位置が地面から高くなるほど、バウンスは大きくなる。一般的に、バウンスが大きいほど寛容性が増し、全ての条件が同じであれば、ラフ、深い芝、そして柔らかいターフでより良いパフォーマンスが望める。
マキロイはこれまで最もロフトの高いウェッジ(58度)には、バウンス角8度のウェッジを使っていた。しかし、今は同じロフトのウェッジで14度のバウンスのクラブを使用している(編注:「ヒーローワールドチャレンジ」では12度)。テーラーメイドのアドリアン・リートベルドは、選手たちができる限り使用しやすいバウンスのクラブを使うことを好んでいると述べた。「大体において、バウンスはできるだけあった方が良い。というのも、バウンスは地面の抜けを良くしますから」とリートベルド。「バウンスは友達ですよ」
マキロイは、グリーン周りがフェアウェイ並みに短く刈られたエリアの多い「ヒーローワールドチャレンジ」の会場、アルバニーGCではバウンスを大きくすることがタメになると示唆した。
「確かにバウンスは友達だね」とマキロイ。「特に、アルバニーのような芝目のきついコースではそうだよね。グリーン周りでは、大きな助けになる。とにかくウェッジが信頼できるようになる。突き刺さるのではなく、より簡単に地面から抜けてくれる」
中間距離からフルショットに関して、この新しいクラブの方が弾道のコントロールがしやすくなったという。
「ボールが上がり過ぎなくなったので、弾道がコントロールしやすくなったし、新しいウェッジでは飛距離のコントロールが向上した」とマキロイ。
テーラーメイドのツアーオペレーション副部長のキース・スバーバロは最近、マキロイがテーラーメイドのチームとのフィッティングに臨んだことを明らかにした。
「我々は彼に全てのバウンスオプション、ロー、スタンダード、そしてハイを提示しました。50~70ydのショットから始めましたが、彼は即座にハイバウンスの方が、弾道が低くコントロールしやすいことに気づきました」とスバーバロ。「彼はクラブがターフを滑る方が断然良いことに気がついたのです。クラブは一度も突っかかることがありませんでした。これがローバウンスだと時として突っかかりを感じるものです」
「ヒーローワールドチャレンジ」での会見の場で、マキロイはグリーン周りでもパフォーマンスが向上したことについて触れた。
「アプローチ練習用のグリーンへ行くと、彼は今一度、クラブが簡単にターフを抜けることを実感した」とスバーバロ。「多めにバウンスがあることで、クラブが手前でダフることなく、アグレッシブにプレーすることができたのです。彼はクラブをボールの後ろにたたきつける、あるいは、ボールの少し後ろを打っても、クラブが刺さって詰まるようには感じませんでした。これは、上り傾斜(左足上がり)で逆目のチップショットで顕著で、そのパフォーマンスを確認するなり、彼の気持ちは固まった。今では、前進する上で、ハイバウンスがロリーにとって第一の選択肢になったのです」
(協力/GolfWRX、PGATOUR.com)