全米オープン リーダーボード
2023年 全米オープン
期間:06/15〜06/18 場所:ロサンゼルスCC(カリフォルニア州)
松山英樹パット復調へ 試行錯誤を垣間見る
◇メジャー第3戦◇全米オープン 3日目(17日)◇ロサンゼルスCC(カリフォルニア州)◇7423yd(パー70)
パットがもっと入っていれば…。松山英樹の試合を見ていると、そんな声を多く聞く。パットでスコアを落としている印象が強いからだろうが、とはいえ今季のストローク・ゲインド・パッティング(パットのスコア貢献度)は「0.072」(85位)と、昨シーズンの「-.028」(114位)、一昨年シーズンの「-.433」(175位)より改善されつつある。今週の全米オープンは3日目を終えた時点で「+1.04」と全体の18位。皆が思うほど悪くない数字なのだ。
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もちろん松山だって手をこまねいているだけではなく、パット向上に向けて試行錯誤を繰り返している。例えば試合前のパター練習も常に進化し、いいものは取り入れ、トライして合わなくなったものは切り捨てる。ここ数年は試合前にシャフトにレーザーを取り付けてストロークの動きを確認していたが、その練習は見られなくなった。
入れ替わるようにして、新しい器具がいくつか導入された。目を見張るのは鉄の棒2本をグリップと一緒に右手で握るもの。鉄棒1本ずつをグリップの両サイドで握り、左手も添えてその状態で球を打つ。腕の付け根まである長い棒だから、おそらく「手首の角度が安定しやすい」とか、「右手のパンチが入りにくい」とか、そのような代物だろう。鉄棒にひもをつけた簡易的な作りなので、これは我々も真似できそうな気がする。
さらに今週のパッティング練習で目についたのは、空中に浮かせた棒をストローク中にシャフトでなぞる練習。これはおそらく、ライの変化を起こさないようにするためで、パターのシャフトが棒をなぞるように打てれば、ライの変化が起きず、安定したストロークができていることになる。
また、ティを差しての練習はお馴染みのもの。これはスタート前の定番で、ヘッドの周りに5本のティを差す。それぞれ役割が違い、ヘッド幅のティ2本はヘッド軌道の管理、出球の所も2本差し、これは出球の管理、さらにボールの手前にティを深く差して、ヘッドの入射の管理。この5本のティがささった状態を真っすぐのラインでやるのが日課だ(早藤将太キャディが事前に真っすぐのラインをチェックして、真っすぐの線を引いている)。
と、このように練習法もいろいろと変化しているが、パット向上に向けてはパターヘッドそのものにも「もっと良くならないか」と試行錯誤が入る。全米オープンの初日では、今使用しているスコッティキャメロンの黒ヘッドの上部にグレーの線を入れていた。元々入っているターゲットラインの赤い線と直角になるように描いたもので、見る限りアライメントを取りやすそう。
3日目には、キャメロンのグリップを、それまでのコード入りからコードなしのノーマルタイプに変えていた。よく見ていないと気づけない変化。だが、松山本人にとっては「少しでもスコアを良くするため」の必要なことなのだ。実際、3日目は3アンダーとスコアを伸ばしたが、4番や6番など勝負どころのバーディパットがしっかり入っていた。
松山のことだから、またあした新しいことをやっているかもしれないが、常にトライ&エラーでより良いものを探す。この姿勢が、米国でトップを走り続けられる秘訣なのだろう(カリフォルニア州ロサンゼルス/服部謙二郎)