カイル・ウィルシャー(Jennifer Perez/PGA TOUR via Getty Images)

◇米国男子◇AT＆Tバイロン・ネルソン 初日（12日）◇TPCクレイグランチ (テキサス州)◇7468yd（パー72）

世界最高峰のツアーは、まさに夢の舞台だ。マンデー予選を突破して自身3度目のPGAツアー出場を果たしたカイル・ウィルシャーは目をキラキラさせて語る。「今週、僕は新車のキャデラックを運転しているんだ。最高の食事、最高の施設、クラブメーカーのサポートも手厚い。こんな経験は初めてだよ」。トーナメント期間中、選手に貸し出される移動用の車（コーテシーカー）のハンドルを握るだけでテンションが上がるという。

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2014年のプロ転向後、最初はPGAツアー・カナダに戦いの場を求めた。下部コーンフェリーツアーに参戦した17年は14連戦を組んだこともある。若く元気な体にムチを打って必死にはい上がろうとしたが、そのひずみからか故障がちになって18年にはひざの手術を受けた。

下部ツアー出場もままならない身分にとって、新型コロナウイルス感染拡大の影響は深刻だった。「試合に出ようにも、フロリダのミニツアーくらいしかなかった。世界の終わりみたいな感じだった」。日銭を稼ぐため、ごみ収集のアルバイトに精を出した。練習と並行できるように午後6時から11時まで4カ月間働いた。「華やかな仕事ではなかったけど、謙虚な気持ちでゲームに取り組めるようになった。少しタフになれたし、今この場にいられることを当たり前だと思わないようになった」

昨年10月「バミューダ選手権」（62位）、同11月「ザ・RSMクラシック」（予選落ち）に続くPGAツアーで、初日「65」をマーク。世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーらを上回る首位と5打差6位の好スタートを切った。

現在も主要ツアーの出場資格を有しておらず、前週もオクラホマ州でミニツアーに出場したばかり。「2位（タイ）に入って、8000ドル稼いだよ」と笑う世界から、優勝賞金163万8000ドル（約2億1050万円）の大舞台へ。「僕は常にこのレベルに到達することを目指してきたし、できると信じていた。ほかの人とは違う道のりかもしれないけど、ここにいられることを幸せに思う」。人生を変えるチャンスが、目の前にある。（テキサス州マッキニー／亀山泰宏）