<スコア>ファーマーズインシュランス
2022年 ファーマーズインシュランスオープン
期間:01/26〜01/29 場所:トリーパインズGC サウスコース(カリフォルニア州)
37歳でつかんだ初白星 リストは愛する家族とオーガスタに帰る
◇米国男子◇ファーマーズインシュランスオープン 最終日(29日)◇トリーパインズGC サウスコース (カリフォルニア州)◇7765yd(パー72)
クラブハウスリーダーになったその時、最終組はまだバックナインの前半をプレーしていた。混戦のなか、追いかけてくるのは世界ランク1位のジョン・ラーム(スペイン)をはじめ、ジェイソン・デイ(オーストラリア)やジャスティン・ローズ(イングランド)らビッグネーム。たとえ逆転されたとしても、ルーク・リストは首位と5打差、19位からのスタートで「66」をマークしたことに満足し、自信を大きく膨らませていた。
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キャリアで2度目となったプレーオフの相手は、昨季の新人王ウィル・ザラトリス。成長著しい25歳は昨年の「マスターズ」で2位に入り、初勝利が待たれる新鋭だ。37歳のリストも若かりし頃、アマチュア時代の2005年にマスターズに出場するなど期待されたが、プロ入り後のタイトルは下部ツアーでの2勝だけ。3歳になった長女ライアンちゃんには試合に出向くたびに「パパ。わたし、トロフィが欲しいな」と言われるようになった。
最終組を待つ2時間近いあいだは、おやつのクッキーを食べるライアンちゃんと7カ月の長男ハリソンくん、そしてクロエ夫人と過ごしていた。緊張感からいったん解放され、プレーオフが近づいたころに練習を再開。日没間際に放ったプレーオフ(18番パー5)の1Wショットは、右サイドのバンカーに入り、しかも“目玉”になったが揺るがない。12月には新たにパッティングコーチも迎え練習に励んでいる。「気にするな。今週はずっとこうだったじゃないか。ここからバーディを取るんだ」
フェアウェイに刻んだ後、残り135ydのPWでの第3打はグリーンの奥の段から手前に戻してピンそばにピタリと付けた。タップインバーディを先に決め、相手のパットが外れると、待ち望んだ瞬間がついに。屈指のロングヒッターとして注目を集めた2003年のツアー初出場から実に206試合目。両腕のあいだに家族が飛び込んできた。
ワシントン州出身のリストはテネシー州のヴァンダービルト大の出身。4年前にジョージア州オーガスタに移り住んだ。当地でのマスターズにはアマ時代にしか出場していない。憧れのオーガスタナショナルGCはいつも「車で近くを通りすぎてばかり」だったが、この4月にプロとして、ツアー優勝者として、白い壁の向こうに踏み入ることができる。
「それが僕にとってどれほど大きな意味を持つことか。あそこは特別な場所。感情的になるかもしれない」。17年ぶりに見る景色。思い描くだけで胸が高鳴る。(カリフォルニア州ラ・ホヤ/桂川洋一)