「桑木さんは勝っておかしくなかった。時代が変わったんです」/全英女子3勝のカメラマンが思うこと
◇女子メジャー最終戦◇AIG女子オープン(全英女子) 最終日(2日)◇ロイヤルリザム&セントアンズGC (イングランド)◇6601yd(パー71)
メジャー最終戦は桑木志帆の優勝で幕を閉じた。米ツアーメンバーではなく、日本ツアーからスポット参戦した23歳のパフォーマンスは世界に新鮮な衝撃を与えたが、現場で彼女を見つめた者の感じ方は少し違う。2019年の渋野日向子、昨年の山下美夢有、桑木と日本勢の大会3勝を写真に収めた村上航カメラマンに思いを語ってもらった。
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驚かなかった
今年の最終日、桑木さんがプレーする時間帯は天気があまり良くなかったんです。昨年は午前中が悪くて、山下さんがいた最終組がスタートする頃には雨が止んでいたから、まるで逆というか。朝は“ドピーカン(快晴)”だったのに、午後に風が出てきた。そんな状況で桑木さんはすごくリラックスして見えた。むしろ3日目の方が緊張していた気がします。
前半は彼女も「優勝は厳しい」と思ってたんじゃないかな。ショットはすごくキレてたけど、パットが入んなかったし。ただ周りが伸びなくて、12番ぐらいだったかな、「これは…」と思ったのは。そこは渋野さんの時と少しかぶる感じでした。
優勝にはそんな驚かなかったかな。勝っておかしくなかった。日本からのスポット参戦だけど、メジャーは8試合目。昨年大会は予選落ちしたけど、1打差でしょ? 初日は(4位で)良かったしね。今年はKPMG(6月の全米女子プロ選手権)で見たけど、普通に結果(24位)を出していた。彼女はちゃんと“爪痕”を残していた。きっと経験をゆっくり重ねて、着実に成長していくタイプじゃないかな。だから「やれるな」「海外向いているんじゃね?」と思っていた。実際、週始めに彼女を見た時から「落ち着いている」と思ったし、普通の感じでしたからね。
渋野の時は焦った。めっちゃうれしかった
7年前の渋野さんの時は驚きましたよ。プロ2年目でレギュラーツアーに出始めた年。(同年の)「サロンパスカップ」で初優勝していたりして確かに勢いはあったけど、メジャー初出場。何より日本人のメジャー優勝って樋口久子さん(1977年の全米女子プロ)だけ。僕は米シニアツアーで青木功さん、PGAツアーで丸山茂樹さん、LPGAツアーで宮里藍さんの優勝を撮ったことはあったけど、海外で日本人が勝つことがまだ特別でメジャー優勝なんて撮った経験がなかったし。
初日2位で、最終日は単独首位から出ていたけど、失礼ながら「いつ崩れるの?」って思っていた。訳わかんなかった。で、最終18番であの優勝パットでしょ、壁ドンの? 彼女、めちゃくちゃ早く打ったんです。こっちは正面に回ってポジション取らなきゃいけないからグリーン周りを小走りして、カメラを構えたら1秒後に打って。めっちゃ焦った。でもめっちゃ感動した。(メジャー優勝という)扉をこじ開けてくれたのが、うれしくて。あんなに興奮したこと、なかったです。
盤石な感じがした山下美夢有
昨年の山下さんは「勝つ」と思ってました。すごく安定していて盤石な感じがあった。普通、不調って来るじゃないですか? 彼女はそれが極めて少ない。
2024年の調子は悪くないのに長く勝てない時期(国内で開幕から7度の2位を経て第19戦の富士通レディースで優勝)にそれを感じていて。その年に「全米女子プロ」(2位)も「パリ五輪」(4位)もあった。3日目にショットがちょっと曲がっていて、そこだけ少し心配だったけど、こっちは初日(3位)からずっと勝つつもりで撮ってました。
時代が変わった。ハマれば勝てる
振り返ってみると山下さんの時には僕ももう感じていたんだと思います、誰でもハマれば勝てるって。渋野さんの時、7年前とは違う。空気が違う。ショットの調子が良くてマネジメントをしっかりやって、後はパットが入るか入らないかだけと言うか。今年、米女子ツアーには日本人が15人いますけど、桑木さんの優勝を見て、きっと全員がそう思ってる。日本ツアーの選手もそう思っているんじゃないかなあ。
最終日の桑木さん、バンカーに入れたんです。ポットバンカーって入り方でとんでもなく大変な状況になる。運不運がすごくあるのに、ライが良くて。その時に「あー、もうそのレベルに来てるんだ」とあらためて思いました。
渋野さん、山下さん、桑木さん。驚きがあってもなくても、やっぱり全部うれしいんです。その瞬間に居合わせた醍醐味を、カメラマンとして感じます。本当に全体のレベルが上がった。技術もそうだけど、メジャーとかに挑む気持ちも雰囲気も、どの選手も以前の選手とは違う。時代が変わったんでしょうね。(村上航カメラマン)