古江彩佳 プロフィール
2024年 アムンディ エビアン選手権
期間:07/11〜07/14 場所:エビアンリゾートGC(フランス)
古江彩佳が明かす勝負の一打の舞台裏/メジャーV凱旋インタビュー
「アムンディ エビアン選手権」で日本勢4人目となる女子メジャー制覇。ビッグタイトルをつかんで日本へ凱旋帰国した古江彩佳が17日、GDOのインタビューに応じた。最終18番(パー5)、劇的なイーグルフィニッシュにつなげた勝負の一打の舞台裏を明かす。(取材・構成/亀山泰宏)
サンデーバックナインの終盤で見せた神がかり的なプレー。古江は「“ゾーン”に入っていけたのは、14番くらいかなと思います」と、あっさり言ってのける。10mのバーディパットを流し込んだパー3から、集中力が高まってフィーリングが研ぎ澄まされていく感覚があったという。
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同じ最終組のステファニー・キリアコウ(オーストラリア)と通算17アンダーで並んで迎えた18番、極限ともいえるショットが出た。右のファーストカットから池越えのグリーンを狙うセカンド。残り180yd近い状況下、キャディのマイク・スコット氏は最初に7Iを勧めてきた。普段なら短い番手だが、標高が高く、気候も温暖なエビアンでは「飛ばしに行くと、7番でも165ydくらい飛ぶ時もあった」からだ。
試合中はアグレッシブな古江に対し、どちらかといえば堅実な策を提案して絶妙なバランスを保つ“慎重派”の相棒。しかし、この時は首を振った。「『ムリじゃない?』って。“見かけ”が遠かったんです。『この見かけじゃ、7番は自信がない。6番で段を使って(ピンを狙って)いきたい』って言いました」。標高が高く、ボールが飛ぶ傾向にあるコースでも、セミラフからではかなり距離が落ちるケースがあったことをインプットしていた。
やり取りによって晴れた、わずかな迷い。少し“薄かった”当たりはグリーン手前ギリギリにキャリーして傾斜を伝い、ピンそば3mについた。ほんの数ヤード短ければ水しぶきを上げたショットも、周到に“保険”をかけていたから会心と胸を張れる。
キリアコウもバーディチャンスにつけた中でのイーグルトライは、フックしてスライスするスネークライン。「最悪はバーディを獲れるタッチで狙いたいと思いながら。やっぱり両方のブレーク(曲がる)するのを読み切るのは難しかったかなと思うんですけど。しっかり入れることに集中してできたかな」。仕上げまで完ぺきな締めくくりには、今でも「(普通に考えれば)あり得ないですよね」と白い歯がこぼれる。
8月の「パリ五輪」代表争いで山下美夢有に敗れてから3週後の歓喜。「東京五輪」をかけたレースで稲見萌寧に及ばず涙を流した3年前に比べて冷静に受け止め、切り替えられていたことも大きい。
「東京の前は自分が思うようなプレーが本当にできなくて、悔しくて泣いた。もちろん、(パリに)出られなくて悔しかったんですけど、自分にプレッシャーをかけながら、いいゴルフはできていたと思う。(代表争いが決着した)KPMG(全米女子プロ)で泣かなかったのは、それまで勝っておくべきところで勝てなかった自分が悪いって思えた」
惜敗を繰り返し、目標だった大舞台を逃しても、前を向き続けてつかんだ歴史的な1勝。「優勝することが大事。それをするために目の前のことに集中できれば」。
充実感をにじませながら、着実に歩むスタンスに変わりはない。
次戦は2年前に初優勝を飾ったダンドナルドリンクスで8月15日から始まる「スコットランド女子オープン」。翌週はセントアンドリュースでのメジャー最終戦「AIG女子オープン(全英女子)」と続く。
実はコロナ禍でエビアン、全英女子とスポット参戦した2021年にもゴルフの聖地でプレーした経験がある。「歴史ある名門コースに行けるのは幸せなこと。キャディのマイクの地元スコットランドで、また頑張れたら」。メジャーチャンピオンになっても、謙虚にほほ笑んだ。