渋野日向子「日本を引っ張る存在に」シンデレラストーリーは続く
2019年 AIG全英女子オープン
期間:08/01〜08/04 場所:ウォーバーンGC(イングランド)
岡山が生んだ「しぶこ」 渋野日向子は“桃太郎の街”から世界へ
◇海外女子メジャー◇AIG全英女子オープン 最終日(4日)◇ウォーバーンGC(イングランド)◇6585yd(パー72)
岡山市の自宅を出ると、ほどなくして田園風景が広がる。街からは少し遠く、ゆっくりと時間が流れる場所だという。渋野日向子は、地元に支えられてきた。
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所属先は地元テレビ局のRSK山陽放送。プロテスト合格後に何度か同局のゴルフ番組に出演し、今季開幕前に契約に至った。同局関係者は「弊社は純粋に岡山県出身のプロを応援したいという気持ちで契約した。まさか、これほどの活躍をするなんて…」と驚きを隠せない。
「人混みがすごく苦手」という素朴な両親に似たのだろう。人気プロになっても、渋野の人柄はまるで変わらないという。転戦の合間をぬい、地元で開催するイベントにも参加。お世話になった練習場のテレビCMにも出演する。今では岡山市のPR大使を務め「多分、負担なはず。でも彼女は昔と変わらずにいてくれる」。休日はかつて在籍したソフトボールチームの練習で小学生に混ざり、お年寄りも一緒に「ひなちゃん、ひなちゃん」。老若男女に愛されているという。
渋野を支える岡山県の複数企業が応援ツアーを組み、20人以上が「全英女子」会場に駆け付けた。渋野がラウンド中に食す『よっちゃんイカ』(カットよっちゃん)やスルメを買ってきた。「誰にでも愛される、彼女の人間性ですね。海外の試合でこれほど日本人の応援が来るってあるんですかね」。地元では知り合いらがかつてのコーチの家に集まり、真夜中の最終日をテレビ観戦したという。
マネジメント事務所には属しておらず、同局の局員が臨時でマネジャーを務める。今大会会場でマネジャーは富士山の被り物、袴風の衣装と奇抜な格好をした。同局のキャラクターをアピールしつつ「ラウンド中に彼女が少しでも笑ってくれれば良い」。渋野は海外の記者から「彼はいつもあんな格好なのか」と質問を受け「見ないようにしています」と笑わせたが、「笑顔になれますか」との問いには「はい」とほほ笑んだ。
同局が密着撮影した番組では、ディレクターとプロデューサーが苦笑いで頭を抱えた返答がある。番組の締め用で“情熱大陸風”に聞いた「渋野選手にとってゴルフとは?」の質問。間髪入れずに「仕事です(笑)」と返ってきたのは想定外。「だってソフトボールの方が好きだもん」とも…
3秒ルールとし、カメラの前で落ちたモノでも口にいれてしまう。そんな飾らない素顔が、故郷の人たちの心をつかんでいる。
「あるとき、岡山県のお年寄りたちに渋野選手についてのインタビューをしたんです。でも、方言が強すぎて(番組では)あまり使えなかった。ただ、みんながひなちゃんの笑顔で元気になる、ひなちゃんとイギリスに行きたかった、ということも言っていた。彼女は僕らの誇りなんです」
岡山が生んだ「しぶこ」の旅は、まだ始まったばかりだ。(イングランド・ウォーバーン/林洋平)