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佐藤信人の視点 勝者と敗者

驚異的なカムバック ”ウッズのまま”の復活

タイガー・ウッズの持ち味は、ドライバーで果敢に攻め、窮地に立たされながらも臆することなく攻めていくゴルフにある、と言う人は多いと思います。そしてもうひとつ、彼の強さを象徴しているのが、ディフェンシブに守りきる時のうまさです。

3日目の終了時点で首位に立った時の勝率は、驚異的な高さを誇っているウッズ。特に、今大会のように2位に3打差をつけた時の勝率は100%。この過去の成績から見ても、今回の逃げ切り劇は、彼のもつ強さの真骨頂であったように思うのです。

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ボギーをたたかない、優勝するためのゴルフ。守りに入ったときの彼の強さこそ、ここまで勝利を積み重ねてきた一端を担っていると言えます。

ウッズは試合後のインタビューから相当不安を持ちながらプレーしていたことがうかがえました。最終ホール(パー5)でのバンカーショットを打つ際、「(週末ゴルファーのように)ホームランを打たないように心がけた」。79勝を誇る名プレーヤーでもそのような心境に陥るほど、この1勝にかけていたと思われます。だからこそ、彼の勝ちパターンである逃げきるスタイルを、この大事な舞台で貫いたように思うのです。

振り返れば、昨年12月に自身のホームゲームである「ヒーローワールドチャレンジ」に出場し、9カ月ぶりの試合復帰と周囲が沸いた際、今季中に彼が優勝することを誰が予想していたでしょうか。戦える状態であることは確認できましたが、彼がもう一度世界の舞台で優勝を果たす姿は、夢のような状態であったことは事実です。

「バルスパー選手権」「アーノルドパーマー招待」と春先にトップ10入りを果たし、復調の兆しを見せていましたが、私はまだまだ彼の本来のスイングには、ほど遠い印象を持っていました。それはレンジと試合で見せるスイングで大きな差があるように見えていたからです。レンジでは微動だにしない頭の位置も、試合中、特に重要なシーンになればなるほど、上下動が発生し、ミスショットにつながっていました。レンジで見せていた安定感は、プレッシャーのかかったシーンでは見ることができなかったのです。

彼の復活へのストーリーが、加速度的なスピードを帯びていったのは夏を迎えたあたりでした。「全英オープン」「全米プロ」で見せた優勝争いは、もう一度メジャーで勝てる可能性を感じさせてくれるほどで、この時期には完全復活を懐疑的に見るメディアも皆無となっていました。スイングも一気に改善され、レンジで見るものと変わらなくなっていきました。

ショットが良い日はパットが悪く、パットが良い日はショットがいまひとつ…。この1ピース足りないパズルを埋めていく作業を、こつこつと繰り返していったウッズ。徐々にスタッツも上位を占めるようになり、ショットの安定感がティショットの正確性を生み、パットやアプローチにも良い影響を生んでいきました。

そして今大会では、初日からその最後のピースがうまくハマった印象を受けました。3日目に首位に立った時点で、彼の目標は狙うべきゴールへと変わりました。そして最終日に見せたステディなゴルフこそ、彼の最大の武器となって勝利につながったのだと思います。

米メディアでは『スポーツ界で最高のカムバック』と大々的に賞賛されていますが、その影には彼の並々ならぬ努力と特別なことはしない、これまで通りの変わらないウッズの姿があったからだと思います。

来季は故サム・スニードがもつ82勝という大記録を超えるかどうかが、見どころになってくると思われます。メジャーも15勝目を目指し、ニクラスの記録(18勝)に迫っていくでしょう。ただ、彼のスタイルは「NEWタイガー」でも「新たな進化」でもなく、これからも変わらず、一歩ずつ挑戦を続けていく日々の連続のように感じられます。(解説・佐藤信人

佐藤信人(さとう のぶひと)
1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。

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