松山英樹は16位 ウッズは50位で変わらず/男子世界ランク
2018年 RBCカナディアンオープン
期間:07/26〜07/29 場所:グレンアビーGC(カナダ)
格の違いを見せたD.ジョンソン“無”の領域
「RBCカナディアンオープン」は、最終日、首位からスタートしたダスティン・ジョンソンが2位と3打差の通算23アンダーで、今季3勝目を挙げました。
3日目を終えた時点で、初優勝を狙うアン・ビョンフン、キム・ミンフィ(ともに韓国)、ケビン・ツエーの3選手と並んで首位タイにつけていたジョンソン。最終日は他の3選手と格の違いを見せつけ、終始トラブルもなく危なげないゴルフを展開しました。その姿は全力疾走している3人を横目に、一人だけ軽めのジョギングをしているような試合運びに見受けられました。
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もともと彼の強さは、400ydを超えたこともあるドライバーの飛距離ばかりに目が行きがちですが、実はここ数年で磨きをかけたショートゲームのうまさを含む総合力にあると思っています。そして、世界ランク1位に君臨し続ける間に、落ち着きのある判断力とマネジメント能力を加え、よりその強さにすごみが増した印象を受けるのです。
それを象徴しているのが、今大会のような圧倒的な勝ち方です。優勝者はおおむね、勝利をたぐり寄せる印象的なショットやパットが1つ2つあるものですが、今回のジョンソンのプレーにはそれが見つかりません。唯一、3日目まで取りこぼしていた13番(パー5/初日パー、2日目パー、3日目ボギー)でバーディを獲り、前のホール12番(パー3)のボギーで傾きかけた流れを、取り戻した場面のみ。あとは、いつものようにプレーをして、当たり前のように優勝をさらっていく展開を演じました。
その唯一印象的だったホールも、強引に飛距離で奪い取ったというものではなく、しっかり2打目をレイアップさせ、3打目を寄せてのバーディ。彼が近年すごみを見せているのは、この落ち着きだと思うのです。もともとアグレッシブにプレーするタイプではありませんが、近年見る彼のスタイルは、冷静さの中に他を圧倒する心理的な強靭さを感じさせます。
ジャスティン・ローズやジェイソン・デイらも、試合中に感情を表に出さないタイプと言えますが、彼らは高ぶる感情を抑えてうまく自分をコントロールしている感じです。ジョンソンの場合、その高ぶる感情さえも存在しない。コントロールするまでもない、“無”の精神状態を感じるのです。それは感情の一部をどこかに置いてきてしまったかのような人間離れした領域と言えます。
ジョンソンと同じタイプで、代表的な日本人選手と言えば谷原秀人選手です。彼も同じように感情を表に出さず、淡々と18ホールを消化していくスタイル。表情を変えないというレベルではなく、感情の浮き沈みが微塵も感じられない、決められたことを決められたようにやってのけるゴルフ。常に冷静な判断を要するプロの世界では、この“無”の精神状態が無敵であり、最強のプロフェッショナルの境地と言えると思うのです。
今大会で通算19勝目。賞金レースでも2位を突き放し(2位 J.トーマスと856,772ドル差)、プレーオフに向けて波にのっていける展開としました。ジョンソンが見せるこの“無”の強さがある限り、賞金王も手中に収める可能性は高いと言えそうです。(解説・佐藤信人)
- 佐藤信人(さとう のぶひと)
- 1970年生まれ。ツアー通算9勝。千葉・薬園台高校卒業後、米国に渡り、陸軍士官学校を経てネバダ州立大学へ。93年に帰国してプロテストに一発合格。97年の「JCBクラシック仙台」で初優勝した。勝負強いパッティングを武器に2000年、02年と賞金王を争い、04年には欧州ツアーにも挑戦したが、その後はパッティングイップスに苦しんだ。11年の「日本オープン」では見事なカムバックで単独3位。近年はゴルフネットワークをはじめ、ゴルフ中継の解説者として活躍し、リオ五輪でも解説を務めた。16年から日本ゴルフツアー機構理事としてトーナメントセッティングにも携わる。