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同じ道を選んだ息子に “シニアプロ日本一”増田伸洋は何を教えるのか

◇国内シニアメジャー◇TSUBURAYA FIELDS HOLDINGS ULTRAMAN CUP 最終日(6日)◇イーグルポイントGC(茨城)◇7102yd(パー72)◇曇り(1124人)

父のレギュラーツアー時代の、最高の瞬間は「記憶にない」という。増田伸洋が2006年「マンダムルシードよみうり」で初優勝を飾った時、長男の康輔はまだ3歳だった。シニア入りした昨年、「すまいーだカップ」を制したときは勤務中。ついに立ち会えた表彰式には、満面の笑みで日本タイトルを受け取る肉親の姿があった。

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兵庫県開催の「ACNチャンピオンシップ」でレギュラーツアーに初出場した今週、予選落ちして前日5日(土)にコースを去った。千葉県の平川CCに所属し、ツアープレーヤーを目指して腕を磨く身。この日は一般ゴルファーのキャディの仕事を務めた後、茨城県まで駆け付けた。「(優勝して)良かったなというのと、一段と背中が遠くなったな…という感じです」。家族での記念撮影。父に持たされた優勝カップは、想像以上に重かった。

21歳のゴルフ歴はまだ4年そこそこだ。小さい頃から打ち込んだ野球を17歳でやめ、父と同じ道を志した。クラブを握るよう強要されたことは人生で一度もない。自主性を重んじながら「ずっと一番近くで見てくれて、教えてくれる」存在がありがたい。

ツアープロとしての成功を目指す彼が、父から指導されていることは何だろう。「アドレスやグリップなんかから教わったと思うんですけど…」と記憶をたどり、言った。「基本的にはまずは『振れ』でした。今でも言われます。『形から入るのもいいけれど、振っていかないとやっていけない』って」

持てる力を目いっぱいクラブに伝えて、振る。そんな当たり前のように思えることの重要性を、父の増田は熱っぽく語る。「最初は振って、振って、スイングを作る。やさしく打つのはそのうちできるようになる。ゴルフを続けていると、コースで振れなくなる場面が来る。練習ではそういうのを身に付けないといけない」。若かりし頃、自分だって尾崎将司にそう教わった。小手先の技術を磨く前に、全力を出し切る感覚を養ってほしい。スケールが小さいままではトップレベルでは戦えないと考える。

息子の気持ちは痛いほど分かる。「(康輔は)ジュニアゴルフを経験していないから、どうしても(小手先で)“合わせて”良いスコアを作ろうとする。僕らの時代はまだジュニア上がりのゴルファーってそこまで多くなかった。高校まで違うスポーツをやってから、ゴルフをやる人がまだいた。でも今はもう数少ない。同世代が活躍しているから、本人は焦っている」。ゴルフ歴の差が、スコアの差に直結する現実を見せつけられていても不思議ではない。

「でも『焦るな、焦る必要なんかない、慌てるな』と伝えている」と増田は話した。「だって自分は50(歳)を過ぎて、日本タイトルを初めて獲ったんだから」。実家がゴルフ練習場という環境にして、本格的にクラブを握ったのは高校を卒業してから。流経大柏高時代はラグビー部。この最終日、応援に来てくれた体育科の同級生たちは他に野球部、剣道部のメンバーだった。

息子に大きな背中を見せられたことがうれしい。「本人もまたやる気になってくれるかな」と照れ笑いした。「シニアでも深堀(圭一郎)さん、室田(淳)さん、兼本(貴司)さん…。みんな息が長い。長く稼げるようなゴルフを目指してほしい」。18歳でゴルフをはじめ、プロテストには25歳で受かった。ツアーに定着し始めたのは30歳になった頃、そして51歳で初めて日本一に輝いた。ゴルフには遅咲きの価値があることを証明できた。(茨城県阿見町/桂川洋一)

桂川洋一(かつらがわよういち) プロフィール

1980年生まれ。生まれは岐阜。育ちは兵庫、東京、千葉。2011年にスポーツ新聞社を経てGDO入社。ふくらはぎが太いのは自慢でもなんでもないコンプレックス。出張の毎日ながら旅行用の歯磨き粉を最後まで使った試しがない。ツイッター: @yktrgw

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