担ぐ〈先週の一枚〉フォトグラファー今井暖
20kg近いバッグを、気温30度近い炎天下、高低差数十メートルの丘陵を、1日5時間以上担ぐ仕事がある。ただ担ぐだけではない。時に戦略を練り、時に精神的支えになり、時に傘を差し続ける。1日と書いたがこれを週に5日から6日、およそ9カ月間続ける。僕には無理だ。
プロゴルフトーナメントに出場するプレーヤーには帯同するキャディを1人つけることが許されている。親や兄妹、家族を起用する選手。学生時代共に汗を流し、ゴルフの時間を一緒に過ごしてきた仲間を起用する選手。師事するコーチを起用する選手。ゴルフ場以外でも時間を共にする恋人やパートナーを起用する選手と実に様々だ。その中でもこの仕事のプロフェッショナル、「ツアープロキャディ」を起用する選手は多い。彼らは選手をより大きくそして美しく魅せてくれる頼もしい存在だ。
ゴルフの歴史を紐解いてみてもトッププレーヤーのそばにはいつも名キャディが寄り添っている。ある時には選手の3歩前を、またある時には選手の5歩後ろを黙々と歩く。キャディバッグに刺さっているアイアン同士がカチャカチャとぶつかる音と共にひたすら歩き続ける。ことさら女子トーナメントにおいて、小柄な女子選手のすぐそばの真っ黒に日焼けした屈強なプロキャディとのツーショットはトッププレーヤーの証しとも言える。それくらい彼らの存在は大きい。
1週間、20km近く歩いた先の18番グリーンで笑顔になれるのはこちらもただ一人。献身的なサポートが優勝という実りになる確率はわずか数パーセントだ。極限の疲労と悔しさを抱え、すり減らした肩をさすりながら自ら予約したチケットで我が家ではなく次の開催地へ向かう。ツアープロキャディとして、あの日「担ぐ」と言った以上無理なんて言っていられない。(フォトグラファー・今井暖)