“推しと会える世界線”で思い出した原点 阿部未悠「好きを仕事にできるなんて幸せ」
2024年 富士フイルム・スタジオアリス女子オープン
期間:04/05〜04/07 場所:石坂GC(埼玉)
小祝さくらに憧れて向かったのは福岡 阿部未悠の覚悟と感謝
◇国内女子◇富士フイルム・スタジオアリス女子オープン 最終日(7日)◇石坂ゴルフ倶楽部(埼玉県)◇6535yd(パー72)◇晴れ(観衆4933人)
阿部未悠が北海道のゴルフスクールでゴルフを習い始めたころ、憧れの存在がいた。「もともと私がもっとうまくなりたい、プロになりたいと思ったきっかけが小祝さくらちゃんだったんです」。初心者コースで学ぶ阿部にとって、アスリートコースで腕を磨く2学年上の小祝のスイング、打球、ジュニアでの戦績がとにかくまぶしかったそうだ。
<< 下に続く >>
背中を追うように自分もアスリートコースに移った。「プロを目指します」と力強く宣言して。「語弊があるかもしれないですけど、もともと“根拠のない自信”ってすごく好きなんです」と苦笑する。今季も「1勝もしてないのに、複数回優勝が目標でした」。ただ、覚悟はいつも本物だった。故郷を飛び出し、福岡の中高一貫校に入ることを決めた。
「雪で冬にラウンドできないことがもどかしくて。家族旅行を兼ねて沖縄でラウンドに行った時も、芝に慣れてきた頃には帰らなきゃいけなかった。それもあって、両親に道外の中学に行きたいと相談しました」
まだゴルフを始めて1年半ほどしか経っていないタイミング。ゴルフ好きで、阿部が始めるきっかけにもなった父・敏春さんが理解を示す一方、母・早苗さんは当初「ホントに行くの?」と心配でしょうがなかったという。阿部は「私より不安だったかもしれないけど、協力してついてきてくれた」と感謝する。ゴルフ人生のターニングポイントになった。
ルーキーだった時、予選落ちを喫した試合で週末のコースに足を運んだことがある。ギャラリーに混じってロープの外から眺めたのは小祝のプレー。「前半でエンジンを温めて、10番でバーディを獲って、アクセルを踏み込む瞬間を間近に見ました」。その試合で小祝は優勝した。
10番でバーディを決めた時によぎった。あの日の小祝のように――。アクセルを踏み込もうとした直後、11番でショットとアプローチのミスが重なって“ナイスボギー”でしのぐのが精いっぱい。「もう一度、エンジンをかけ直そう」と心を乱さず、14番からの4連続バーディで勝ち切った。思い描いた形とは少し違っても、冷静にゲームを立て直す戦いぶりは先輩とダブった。
感情があふれたのは、18番のグリーンサイドに両親を見つけた時だ。「喜んでくれている顔を見たら、涙が出てきてしまった。育ててくれてありがとう、ゴルフをさせてくれてありがとうって」。最高の恩返しになった。(埼玉県鳩山町/亀山泰宏)